グリム童話から『黄金のがちょう』のあらすじを紹介します。原題は、Die goldene Gans、英語のタイトルは、The Golden Goose です。
超簡単な要約
忙しい人向け1行サマリー:家族から馬鹿者とあざけられていた三男が、ある男に親切にしてやったら、お礼に黄金のがちょうをもらい、それがきっかけでおひめさまと結婚し幸せになる話。
森に木を切りに行く長男と次男
あるところに3兄弟がいました。三男は、みなに、「バカモノ」と馬鹿にされ、いつも無視されていました。
ある日、長男が森に木を切りに行くことになり、母親はパンケーキとワインというおいしい弁当をもたせました。
長男が森に行くと、年をとった小さくて灰色の男(たぶん小人)が出てきて、「ちょっとワインとパンケーキを分けてください」と頼みました。長男は、「あんたにあげると僕の分がなくなる」と言って、立ち去りました。
彼が木を切ろうとしたら、あやまって腕を切ってしまいました。
翌日、次男もまったく同じ展開の日を送ります。ただし、彼は足を切りました。
親切な三男
三男は、自分も兄さんたちみたいに森に行って木を切りたい、と親に言いましたが、「賢い兄たちがあんな目にあったのだから、おまえはどうなるかわからない」と許してもらえません。
しかし、あまりに三男がしつこく頼むので、結局、親は承諾しました。母親は小麦粉と水でできた粗末なケーキと、すっぱいビールを弁当に持たせました。
彼のところにも、兄たちの前にあらわれた小人が出てきて、弁当をわけてくれるように言いました。
三男は、「僕は粗末なケーキと酸っぱいビールしかないけど、それでよかったら、一緒に食べましょう」と言って、小人にわけてあげました。
すると、ケーキはおいしいパンケーキに、ビールはよいワインに変わりました。
食事が終わると、小人は、「あなたはとても親切で、私に弁当を分けてくれたから、幸運を授けてあげましょう。あそこの木を切ってごらんなさい」と三男に言いました。
黄金のがちょう
三男が、言われたとおりに、木を切ったら、あらびっくり! 黄金のがちょうがいるではないですか(まるでかぐや姫です)。彼はそのがちょうを抱きかかえ、そばにある旅館に行って泊まることにしました。
この旅館のオーナーには3人の娘がいました。娘たちは、黄金のがちょうに魅せられ、羽(も黄金でできている)を1本もらおうと、思いました。
三男が席をはずしたすきに、長女が、黄金のがちょうの羽をつかんだら、なんと、手がくっついてしまい、離れません。
次女がやってきて、長女をさわったら、次女もくっついて離れません。三女がやってきたとき、「そばにきちゃだめ!」と長女と次女が叫びましたが、何も気づいていなかった三女は、やはり次女にさわって、くっついてしまいました。
がちょう+アルファ
翌朝、三男は、がちょうを持って旅館を出ました。彼は、がちょうにくっついている三姉妹については、全く意に介していませんでした。三姉妹は、がちょう(つまり三男)が、行くところは、どこへでも、くっついて行きました。
三男がたったったったと走れば、娘たちも走ります。
この様子を見た司祭が、「なんということだ。若い娘が若い男のあとを追っかけ回すなんて、なげかわしい」と言って、三女の手をとり、引き離そうとしたら、自分もくっついてしまいました。
その様子を見ていた寺男が、「司祭さま、そんなに急いでどこに行きなさる?」と言って、司祭の手をつかんだら、彼もくっついてしまい、前の人について歩くことになりました。
笑わないおひめさま
がちょうと6人の行列は、王さまのいる街に来ました。王様には、深刻な性格すぎて、全く笑わない娘がいました。王さまは、娘を笑わせることができたら、娘と結婚させる、というおふれを出していました。
おひめさまは、ガチョウと人間の変な行列を見たとたん、けたけたと笑いはじめました。つまり、三男は、おひめさまと結婚する権利を得たのです。
ところが、王さまは、三男が気に入らず、ワインセラーにあるワインを飲み尽くすことができる男を連れてこなければ、結婚させない、と言います。
三男を助ける小人
三男は、小人が助けてくれるかもしれないと思い、森に行くと、ある悲しそうな男性に会いました。彼は、「のどが渇いて仕方ないが、水を飲んでも乾きはいやされない、ワインならいくらでも飲めてしまう」と言います。
三男がこの男を王様のワインセラーに連れていくと、男はそこにあるワインを飲み尽くしました。
「これで結婚できますね」と三男が王さまに言ったら、王さまは新しい条件をだしました。山のようにあるパンを食べることができる者を連れてこい、と言うのです。
三男が森に行ったら、「おなかがすいてしかたがない」と訴える太った男がいました。三男が彼を王様のところに連れていくと、彼は城中のパンを食べつくしました。
しかし、王さまはもうひとつ条件を出しました。皆に「バカモノ」と言われている男と、娘を結婚させたくなかったからです。次の条件は、海の上も陸の上も行くことができる船をもってこい、です。
もちろん、三男はまた森に行きました。そこには例の小人がいました。「あなたのために、私は、飲んだし、食べました。親切にしてくれたのですから、もちろん船もあげますよ」と言って、海の上も陸の上も進むことができる船を三男にくれました。
この船に乗って、三男があらわれたのを見た王さまは、ようやく結婚を承諾し、すぐに婚礼が行われました。王さまが死んだあとは、三男が王国をおさめることになり、妻といつまでも幸せに暮らしました。
ほどこしをしなさい
童話の中において、森や井戸のそばで、見た目が貧乏そうだったり、年寄りだったりして、あまり友だちになりたくない感じの人が、「食べ物をわけてください」「飲み物をわけてください」と言いながら近寄ってきたら、その人たちは、たいてい、仙女か小人、よい魔法使いです。
この人たちは、あなたの親切心をチェックしたいのです。
たとえ、自分の持ち分が減ると思っても、喜んでわけてあげなければなりません。
与える気持ち、つまりチャリティー精神をもつことは、いつの世の中でも求められています。
「与える者は、幸せになれる」。この普遍的なメッセージを、ユーモラスに伝えているのがこの童話です。
それにしても、おひめさまと結婚したあと、がちょうとそれにくっついていた人々はどうなったのでしょうか? 彼らについて、まったく言及がないのが気になるところです。
黄金のがちょうも、それに人がくっつくように仕向けたのも、きっと小人の仕業でしょう。だから、自分に親切にしてくれた三男が、無事おひめさまと結婚したあとは、魔法がとけて、がちょうも、娘たちも、司祭と寺男も、無事に家に帰れたとは思います。
それにしても、親切にしてくれた人間に対して、この小人は、かなり手のこんだお礼をしました。それだけ、深く感謝していたのでしょう。
泉のそばで水を所望する老婆にあった娘の話:
笑わないおひめさま:
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