グリム童話から、茨姫(いばらひめ)のあらすじを紹介します。シャルル・ペローの、『眠れる森の美女』とほとんど同じです。
ただ、ペロー版にある、王子と姫が結婚したあと、王子の母親(人食い鬼)が、孫や、義理の娘を食べようとする部分はありません。
原題は、Dornröschen Googleで翻訳してみたら、『眠れる森の美女』と出ました。英語のタイトルは、Little Brier-Rose(ちいさなイバラのローズ、発音はリトル・ブライア・ローズ)。
brier は briar ともつづり、イバラ、野ばら、イバラの枝、イバラの茂み、という意味です。
訳した人によって、タイトルが微妙に違い、ただ単に、Brier Rose (Briar Rose)と呼ぶこともあります。
超簡単な要約
忙しい人向け1行サマリー:100年間、眠り続ける呪いをかけられたおひめさまが、100年後、王子にキスされた後、めざめ、2人で幸せになる話。
おひめさまの誕生祝いの計画
昔、子供を欲しがっていた王さまと女王さまがいました。ある日、女王さまがお風呂に入っているとき、カエルがお湯から出てきて、「あなたの願いは叶えられます。1年もしないうちにお子様が生まれます」と言いました。
カエルの予言(?)は命中し、ほどなく女王はとてもきれいな女の子を生みました。王さまはとても喜んで盛大な祝いの席をもうけることにし、親族や友達だけでなく、 魔法使いの女性たち (wise women、仙女)も招くことにしました。
この国には13人の女魔法使いがいましたが、王さまは12枚しか金の皿を持っていなかったので、1人だけ呼ばれませんでした。
13番目の魔法使いの呪い
パーティで、魔法使いたちは、ひめに魔法で贈りものをしました。一人は、徳、次は美、3番目は富、というように。11人目の魔法使いが贈り終えたとき、呼ばれなかった13番目の魔法使いがやってきました。
この魔法使いは、呼ばれなかった腹いせに、挨拶も何もせず、いきなり大声で、「15歳の誕生日に、ひめはつむ(spindle、スピンドル、糸をつむぐ針条の棒)に刺さって死ぬ!」とのろいをかけ、帰っていきました。
呪いの効力を弱める12番めの魔法使い
その場にいた人全員が恐れおののきました。12番めの魔法使いは、呪いをキャンセルすることはできないものの、弱めることはできたので、「おひめさまは死ぬのではなく、100年の眠りに落ちます」という贈り物をしました。
王さまは、娘を助けたかったので、国中のスピンドルを焼くおふれをだしました。魔法使いの贈り物(願い)はみな、叶えられ、おひめさまは美しく、行儀がよく、フレンドリーで賢い、誰もが好きにならずにはいられない人間に育っていきました。
15歳の誕生日
おひめさまの15歳の誕生日がやってきました。この日、王さまと女王は家にいませんでした。おひめさまは、お城のあちこちを歩き回り、最後に、古い塔までやってきました。
狭くて曲がりくねった階段をのぼっていくと、小さなドアがあり、中に入ると、1人の老女が糸をつむいでいました。
眠ってしまったおひめさま
「こんにちは。何をしてるの?」
おひめさまは、スピンドルが楽しそうに動いているのに興味を持ち、自分も使いたくなって近寄って、うっかりさわってしまい、その場でばたっと倒れ、眠ってしまいました(その部屋にあったベッドに倒れ込みました)。
この眠りは城中に伝染し、帰宅した王さまも女王も、家来も、家畜も、窓の鳩も、壁のハエも何もかも皆寝てしまいました。
とげのある植物が、城を取り囲み、その高さは、年々、高くなっていき、とうとう、何も見えなくなりました。
いばら姫のうわさ
伝説によると、とげの囲いの中にある城に、美しい、いばら姫のローズと呼ばれる姫が眠っていて、王子たちが、城に行こうとしたものの、とげのあるツタに巻き付かれ、死んでしまったそうです。
それから、長い年月がたち、ある勇敢な王子が、自分もこの城に行こうとしました。
100年たち、おひめさまが目覚める日がきました。王子がとげの植物でできた囲いに向かうと、大きくてきれいな花々が、両側に分かれて、王子のために、どんどん道を作ってくれました。
おひめさま、目覚める
庭でも、城の中でも動物や人間たちが眠っていました。王子は静寂の中をどんどん進み、おひめさまの寝ている古い塔の部屋にやってきました。
眠っている美しいおひめさまに心を奪われた王子は、おひめさまにキスをしました。すると、おひめさまは目を開けて、王子さまをやさしく見つめました。
この瞬間、城中が目覚め、その後、おひめさまと王子の結婚式が盛大に行われ、2人は、死ぬまで幸せに暮らしました。
原文はこちら⇒ Grimm 050: Little Brier-Rose
ペロー版との違い
100年眠るおひめさまの話は、世界中に50はあるそうです。
ディズニーのアニメでは、王子がキスをしたからおひめさまがめざめますが、ペロー版も、グリム版も、目覚める日が来たから目が覚めたというニュアンスです。
グリム版では、その日は目覚める人だったので、ドゲのある植物も花に変わって、王子に加勢したのでしょう。
尚、ペロー版では、王子はキスをしていません。
グリム版も、ペロー版も、後半の人食い鬼のエピソードのあるなしをのぞいてはそこまで大きな違いはありません。後半のエピソードをのぞいても、グリム童話のほうは短く、ペロー版のほうは小説ふうにもっといろいろ書き込んであります。
宮廷の雰囲気があるペロー版
ペロー版では、7人の仙女が呼ばれ、金の箱に入った、ダイヤモンドとルビーのついたカトラリーを供されます。
呼ばれなかった仙女が、おひめさまに呪いをかけているとき、7番目の仙女はタピスリー(タペストリー)の裏に隠れています。
宝石つきのカトラリーやタペストリーが出てくるのは、いかにもルイ14世の宮廷の関係者という気がします。
ルイ王朝の財務総監だったコルベールはタペストリーなど、家具調度品を作る手工業を発展させた人で、ペローも、タペストリーのデザインをしています。
呼ばれなかった理由がある
グリム版では、呼ぶべき人間(じゃないけど)は13人いたが、金の皿が12枚しかなかったから、1人は家にいなければならなかった、と書いてあります。
しかし、ペロー版では、一人の魔女は50年前から、塔にこもりきりで、生きているのかよくわからなかったから、呼ばなかった、と書いてあります。
理由を提示しておくと、呼ばなかった王さまの気持ちもわかる、とある程度思えます。
誕生日とは限定していない
ペロー版では、いつかわからないけど、いずれ、おひめさまはつむを手でさわって死ぬ、というのろいがかけられます。
いかし、グリム版では、15歳の誕生日と、死ぬ日(眠る日)を限定しています。
それなのに、なぜ、この日、王さまと女王は出かけたのでしょうか? 国中のスピンドルを焼いて油断してしまったのでしょうか?
実際には、全部、焼いていませんでしたが。
いばらひめの教訓
ペロー版では、「真実の相手があらわれるまでには時間がかかるから、あせって恋人を見つけようとしたり、結婚しようとしたりしないほうがいいですよ、お嬢さんたち」というペローの教訓がついています。
では、いばら姫の教訓はなんでしょうか?
私が受け取ったメッセージは、「1人だけ仲間はずれにしてはいけない」です。
こどもの誕生日パーティでも、友達はみな呼ばれたのに、私は呼ばれなかったわ、などともめることがよくあります。とはいえ、クラス全員を呼ぶのは、財力が求められるので(全員呼ぶ親もいますが)どこかで、線引きをする必要があります。
そのとき、人を傷つけないように招待することが重要です。
いばら姫の王さまのように、単に皿が足りなかったから、誰かを呼ばないのは、賢いやり方ではありません。金の皿がなかったら、全員ふつうの白い皿にしておけばよかったのです。
この点から、お客様用に特別な食器は用意せず、ふだんから、汎用性の高い白い食器を用意しておいたほうがいい、という教訓も得られます。
そのほうが物も増えません。昔の王様たちは、豪華な物をたくさん持つことで、差をつけていたから、こんな発想はしないと思いますが。
また、先にも書きましたが、油断禁物というメッセージもあります。王さまは15歳の誕生日に、娘のそばから離れるべきではなかったですね。
というより、この日は、誕生日パーティは計画していなかったのでしょうか?
まあ、王さまが、浅薄で、詰めの甘い人間だったからこそ、100年後に、おひめさまは、王子と結婚できたとも考えられます。
おひめさまと一緒に眠っていたおかげで、城の人、全員、100年後の世界を見ることができたのはラッキーなことと言えましょう。
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