いばら姫(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

野ばら グリム童話

グリム童話から、茨姫(いばらひめ)のあらすじを紹介します。シャルル・ペローの、『眠れる森の美女』とほとんど同じです。

ただ、ペロー版にある、王子と姫が結婚したあと、王子の母親(人食い鬼)が、孫や、義理の娘を食べようとする部分はありません。

原題は、Dornröschen Googleで翻訳してみたら、『眠れる森の美女』と出ました。英語のタイトルは、Little Brier-Rose(ちいさなイバラのローズ、発音はリトル・ブライア・ローズ)。

brier は briar ともつづり、イバラ、野ばら、イバラの枝、イバラの茂み、という意味です。

訳した人によって、タイトルが微妙に違い、ただ単に、Brier Rose (Briar Rose)と呼ぶこともあります。

超簡単な要約

忙しい人向け1行サマリー:100年間、眠り続ける呪いをかけられたおひめさまが、100年後、王子にキスされた後、めざめ、2人で幸せになる話。

おひめさまの誕生祝いの計画

昔、子供を欲しがっていた王さまと女王さまがいました。ある日、女王さまがお風呂に入っているとき、カエルがお湯から出てきて、「あなたの願いは叶えられます。1年もしないうちにお子様が生まれます」と言いました。

カエルの予言(?)は命中し、ほどなく女王はとてもきれいな女の子を生みました。王さまはとても喜んで盛大な祝いの席をもうけることにし、親族や友達だけでなく、 魔法使いの女性たち (wise women、仙女)も招くことにしました。

この国には13人の女魔法使いがいましたが、王さまは12枚しか金の皿を持っていなかったので、1人だけ呼ばれませんでした。

13番目の魔法使いの呪い

パーティで、魔法使いたちは、ひめに魔法で贈りものをしました。一人は、徳、次は美、3番目は富、というように。11人目の魔法使いが贈り終えたとき、呼ばれなかった13番目の魔法使いがやってきました。

この魔法使いは、呼ばれなかった腹いせに、挨拶も何もせず、いきなり大声で、「15歳の誕生日に、ひめはつむ(spindle、スピンドル、糸をつむぐ針条の棒)に刺さって死ぬ!」とのろいをかけ、帰っていきました。

呪いの効力を弱める12番めの魔法使い

その場にいた人全員が恐れおののきました。12番めの魔法使いは、呪いをキャンセルすることはできないものの、弱めることはできたので、「おひめさまは死ぬのではなく、100年の眠りに落ちます」という贈り物をしました。

王さまは、娘を助けたかったので、国中のスピンドルを焼くおふれをだしました。魔法使いの贈り物(願い)はみな、叶えられ、おひめさまは美しく、行儀がよく、フレンドリーで賢い、誰もが好きにならずにはいられない人間に育っていきました。

15歳の誕生日

おひめさまの15歳の誕生日がやってきました。この日、王さまと女王は家にいませんでした。おひめさまは、お城のあちこちを歩き回り、最後に、古い塔までやってきました。

狭くて曲がりくねった階段をのぼっていくと、小さなドアがあり、中に入ると、1人の老女が糸をつむいでいました。

眠ってしまったおひめさま

「こんにちは。何をしてるの?」

おひめさまは、スピンドルが楽しそうに動いているのに興味を持ち、自分も使いたくなって近寄って、うっかりさわってしまい、その場でばたっと倒れ、眠ってしまいました(その部屋にあったベッドに倒れ込みました)。

この眠りは城中に伝染し、帰宅した王さまも女王も、家来も、家畜も、窓の鳩も、壁のハエも何もかも皆寝てしまいました。

とげのある植物が、城を取り囲み、その高さは、年々、高くなっていき、とうとう、何も見えなくなりました。

いばら姫のうわさ

伝説によると、とげの囲いの中にある城に、美しい、いばら姫のローズと呼ばれる姫が眠っていて、王子たちが、城に行こうとしたものの、とげのあるツタに巻き付かれ、死んでしまったそうです。

それから、長い年月がたち、ある勇敢な王子が、自分もこの城に行こうとしました。

100年たち、おひめさまが目覚める日がきました。王子がとげの植物でできた囲いに向かうと、大きくてきれいな花々が、両側に分かれて、王子のために、どんどん道を作ってくれました。

おひめさま、目覚める

庭でも、城の中でも動物や人間たちが眠っていました。王子は静寂の中をどんどん進み、おひめさまの寝ている古い塔の部屋にやってきました。

眠っている美しいおひめさまに心を奪われた王子は、おひめさまにキスをしました。すると、おひめさまは目を開けて、王子さまをやさしく見つめました。

この瞬間、城中が目覚め、その後、おひめさまと王子の結婚式が盛大に行われ、2人は、死ぬまで幸せに暮らしました。

原文はこちら⇒ Grimm 050: Little Brier-Rose

ペロー版との違い

100年眠るおひめさまの話は、世界中に50はあるそうです。

ディズニーのアニメでは、王子がキスをしたからおひめさまがめざめますが、ペロー版も、グリム版も、目覚める日が来たから目が覚めたというニュアンスです。

グリム版では、その日は目覚める人だったので、ドゲのある植物も花に変わって、王子に加勢したのでしょう。

尚、ペロー版では、王子はキスをしていません。

グリム版も、ペロー版も、後半の人食い鬼のエピソードのあるなしをのぞいてはそこまで大きな違いはありません。後半のエピソードをのぞいても、グリム童話のほうは短く、ペロー版のほうは小説ふうにもっといろいろ書き込んであります。

宮廷の雰囲気があるペロー版

ペロー版では、7人の仙女が呼ばれ、金の箱に入った、ダイヤモンドとルビーのついたカトラリーを供されます。

呼ばれなかった仙女が、おひめさまに呪いをかけているとき、7番目の仙女はタピスリー(タペストリー)の裏に隠れています。

宝石つきのカトラリーやタペストリーが出てくるのは、いかにもルイ14世の宮廷の関係者という気がします。

ルイ王朝の財務総監だったコルベールはタペストリーなど、家具調度品を作る手工業を発展させた人で、ペローも、タペストリーのデザインをしています。

呼ばれなかった理由がある

グリム版では、呼ぶべき人間(じゃないけど)は13人いたが、金の皿が12枚しかなかったから、1人は家にいなければならなかった、と書いてあります。

しかし、ペロー版では、一人の魔女は50年前から、塔にこもりきりで、生きているのかよくわからなかったから、呼ばなかった、と書いてあります。

理由を提示しておくと、呼ばなかった王さまの気持ちもわかる、とある程度思えます。

誕生日とは限定していない

ペロー版では、いつかわからないけど、いずれ、おひめさまはつむを手でさわって死ぬ、というのろいがかけられます。

いかし、グリム版では、15歳の誕生日と、死ぬ日(眠る日)を限定しています。

それなのに、なぜ、この日、王さまと女王は出かけたのでしょうか? 国中のスピンドルを焼いて油断してしまったのでしょうか?

実際には、全部、焼いていませんでしたが。

いばらひめの教訓

ペロー版では、「真実の相手があらわれるまでには時間がかかるから、あせって恋人を見つけようとしたり、結婚しようとしたりしないほうがいいですよ、お嬢さんたち」というペローの教訓がついています。

では、いばら姫の教訓はなんでしょうか?

私が受け取ったメッセージは、「1人だけ仲間はずれにしてはいけない」です。

こどもの誕生日パーティでも、友達はみな呼ばれたのに、私は呼ばれなかったわ、などともめることがよくあります。とはいえ、クラス全員を呼ぶのは、財力が求められるので(全員呼ぶ親もいますが)どこかで、線引きをする必要があります。

そのとき、人を傷つけないように招待することが重要です。

いばら姫の王さまのように、単に皿が足りなかったから、誰かを呼ばないのは、賢いやり方ではありません。金の皿がなかったら、全員ふつうの白い皿にしておけばよかったのです。

この点から、お客様用に特別な食器は用意せず、ふだんから、汎用性の高い白い食器を用意しておいたほうがいい、という教訓も得られます。

そのほうが物も増えません。昔の王様たちは、豪華な物をたくさん持つことで、差をつけていたから、こんな発想はしないと思いますが。

また、先にも書きましたが、油断禁物というメッセージもあります。王さまは15歳の誕生日に、娘のそばから離れるべきではなかったですね。

というより、この日は、誕生日パーティは計画していなかったのでしょうか?

まあ、王さまが、浅薄で、詰めの甘い人間だったからこそ、100年後に、おひめさまは、王子と結婚できたとも考えられます。

おひめさまと一緒に眠っていたおかげで、城の人、全員、100年後の世界を見ることができたのはラッキーなことと言えましょう。

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