しらゆきとべにばら(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

白バラと紅バラ グリム童話

グリム童話から、『しらゆきとべにばら』という物語のあらすじを紹介します。原題は、Schneeweißchen und Rosenrot 英語のタイトルは、Snow-White and Rose-Red。つまりスノーホワイトとレッドローズです。

邦題はいくつかあり、『しらゆき べにばら』『 雪白と薔薇紅 』『白薔薇と赤薔薇』と呼ばれることもあります。

しらゆき、べにばらなんて、お酒の名前、または幼稚園のクラスの名前みたいですが、姉妹それぞれの名前です。

超簡単な要約

忙しい人向け1行サマリー:しろばら、べにばらという仲のよい、お母さんのお手伝いをよくするよい娘たちが、家にやってきたクマ(実は王子)と仲良くなり、結局、それぞれが王子とその弟と結婚する話。

仲のよい姉妹

貧しい未亡人の庭に、小さな白バラの木と紅バラの木がありました。未亡人には、このバラの木に似た娘が2人いて、1人はしろばら、もう1人はべにばらという名前でした。

しろばらは静かでおとなしくインドア派、べにばらは活発でアウトドア派です。

しかし、性格は違ってもこの2人は大変仲がよく、深く愛し合っていて、いつも手をつなぎ、なんでも分け合い、「死にまで一緒よね」と誓い合っていました。

2人はお母さんのお手伝いをするよい娘たちでした。

天使に守られている2人

2人はよく森に遊びに行きましたが、森にいる動物たちとも仲がよく、決して危険な目にはあいません。森で寝ることもありましたが、母親は心配しませんでした。

ある晩、森で寝て、朝になったとき、白い光るドレスを着たきれいな子供が、2人が寝ていたそばに座っているのが見えました。その子は2人をやさしい目で見ると、だまって森の奥へ立ち去りました。

母親にその話をしたら、母親は、「それはきっと天使よ」、と言いました。天使は、よい子供たちを守ってくださるのです。

平和で幸せな毎日

しろばらとべにばらは、家をきれいに整えていました。

夏場、べにばらは、バラの木からバラをつんで、母親のベッドのもとに置きました。冬は、しろばらが、火をたいて、やかんをぶらさげました。やかんはしっかり磨いてあったので、銅製なのに、黄金に見えました。

雪の降る夕方は、2人は暖炉の前に座って、母親が読んでくれる物語を、糸を紡ぎながら楽しく聞きました。2人のそばには、子羊が座り、部屋の奥には、白い鳩がいました。

突然、クマがやってくる

ある晩、誰かが扉をノックします。べにばらが扉をあけると、そこには黒いクマが立っています。べにばらは悲鳴をあげました。

しかし、クマは思いのほかやさしい声で、「怖がらないで。危険な目にはあわせません。私はひどく寒いので、ちょっと暖をとらせてくれませんか?」と言いました。

「まあ、かわいそうに」。母親はそういうと、クマを家にあげました。この一家は全員が、やさしい人たちなのです。

クマが、「おじょうさんがた、私のからだの雪をはらってくれませんか」というと、娘たちはそのとおりにし、その後、クマはくつろいで、暖炉の前でのんびりしました。

すぐに、みんなうちとけて、娘たちは、クマの毛をひっぱったり、背中に足をのせたりと、いたずらをはじめました。

クマと仲良くなる娘たち

夜になると、母親はクマを家に泊めました。その日から、クマは毎晩、同じ時間に遊びに来るようになり、娘たちととても仲良くなりました。

春になると、クマは、「春夏は、ここには来ません」、と言います。

しろばら:「どこに行くの、クマさん?」

クマ:「森に行って、悪い小人たちから宝を守らなければなりません。やつらは冬は出てきませんが、気候がよくなると出てくるのです」。

クマが走って行くとき、扉のフックがくまにひっかかって、金色のものが落ちたように、しろばらには見えました。

小人を助ける姉妹

ある日、姉妹はおつかいで森にでかけました。そのとき、長いひげが、倒れた木の下敷きになって動けない小人に出会いました。

姉妹は木をどけようとしましたが、重くて動かせません。そこで、しろばらは、ポケットから小さなはさみを出すと、小人のひげの先を切って、小人を自由にしました。

この小人ははじめから、とても態度が悪く、悪態ばかりついていましたが、助けてもらったのにお礼も言わず、文句を言いながら、木の根本にあった袋を肩にかつぐと、行ってしまいました。

また小人を助ける2人

別の機会に、2人はまたこの小人を助けました。2度めは小人のひげが、釣り糸にからまって、魚がしっかりくわえこんでいた時です。このときも、はさみでひげを切ってやりました。

小人はやはり、文句を言いながら、そばに置いていた真珠の入った袋をもって、行ってしまいました。

3度目は、ワシに連れ去られそうになった小人を、助けました。2人が、小人のからだにがしっとしがみついたので、ワシは小人を連れていくことをあきらめたのです。

このときも、小人はやり方が乱暴だとかなんとか文句を言い、宝石の入った袋を持って、岩のうしろにあるほら穴に入っていきました。

小人をやっつけるクマ

姉妹が用事をすませて、帰るとき、小人のほら穴のそばを通りました。小人は袋から、宝石を出してきれいに並べていました。

夕日が宝石にあたってキラキラしています。2人が見とれていると、小人は、すごい形相で、「そこに突っ立って何を見てるんだ?」と怒鳴りました。

すると、遠くのほうで何かが吠える声が聞こえます。一匹の黒いクマがやってきて、小人のほうにのしのしとやってきました。

小人:「クマさん、お願いです。お助けを! お宝は全部あなたにあげますから。殺さないでください。食べるなら、あっしより、あっちにいる少女たちのほうがやわらかくておいしいですよ」。

クマは返事をせず、小人を手で強くはたきます。小人は死にました。

実は王子だったクマ

急いで逃げようとする姉妹を、クマがうしろから呼びました。

「しろばら、べにばら、怖がらなくてもいい。私も君たちと一緒に行こう」。

この声を聞いて、2人はこのクマが友達のクマだとわかりました。2人が、立ち止まってクマを待っていると、やってきたクマの毛が突然、落ちはじめます。

クマは金色の服を着た、若いハンサムな男性に変身しました。

元クマ:「私は王さまの息子です。邪悪な小人に、クマの姿にされていました。小人は私の財宝を盗んで逃げ回っていました。小人が死んだので、私は元の姿に戻れたのです」。

3人は一緒に、姉妹の家に戻りました。その後、しろばらは、この王子と、べにばらは、王子の弟と結婚しました。

二組のカップルは、王子の財宝をわけあいました。姉妹の母も、庭にあった小さなバラの木、2本を持って、王子の城にやってきました。

母親は、自分の部屋の窓の外にバラの木を植えました。この木には毎年、美しい赤いバラと白いバラが咲きました。

原文はこちら⇒ Bedtime Stories, Fairy Tales and Children Books – Tonight’s Bedtime Story – Snow-White And Rose-Red

仲良きことは美しきかな

この姉妹は、庭のバラに似ているとはあっても、顔がきれいだとか、絶世の美女といった記述はありません。まあ、バラに似ているのだからきれいなのでしょう。

強調されているのは、とにかく、仲がいいこと、お母さんをよく助けて働くこと、毎日、ほがらかに暮らしていること、クマや小人に親切なことです。

家族を愛し仲良く暮らし、仕事をしっかりして助け合い、誰にでも親切にする人々は、天使が守ってくださる、というメッセージを感じます。

童話では、森は危険な場所です。とくに少女たちにとっては。しかし、この2人は、森で全く危険な目にあいません。

しかも、家には子羊と白い鳩がいます。子羊も、白い鳩も、神さまの象徴だと思います。

神さまに守られているので、怖いものは何もありません。最後に王子さまと結婚してしまうのも、当然の成り行きでしょう。

あまりにもできすぎた姉妹の話のせいか、この童話単体で、映画になったりはしていませんね。

以前、紹介した、 Snow White: The Fairest of Them All (邦題: スノーホワイト/白雪姫 )で、邪悪な女王が、王子をクマに変えるのは、この話から取ったアイデアだそうです。

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