三枚の蛇の葉(グリム兄弟、1857)のあらすじ

浜辺にある葉っぱ グリム童話

グリム童話から、『3枚の蛇の葉』を紹介します。

ドイツ語のタイトルは、Die drei Schlangenblätter、英語は The Three Snake-Leaves です。

超簡単なあらすじ

蛇が持ってきた3枚の葉で、命が助かったおひめさまが、夫を殺そうとするが失敗し、海に沈められる話

王様に見込まれた男

あるところに、貧しい男とその息子がいました。息子は、これ以上父親の重荷になるのがつらく、「自分で食べものを見つける」、といって家を出ます。

このとき、この国は戦争中で、息子は、戦争で手柄をたて、王様に気に入られ、娘の嫁にと見込まれます。

王様の娘、つまりおひめさまは、絶世の美女でしたが、相当な変わり者でした。

おひめさまの結婚の条件

自分が死んだとき、いっしょに、生きながら埋葬されてもいい、という人でなければ、結婚しないというのです。

自分を心底愛しているのなら、ともに埋葬されることなどいとうはずがない、と。

逆に相手が先に死んだら、自分も一緒に埋葬されてもいい、とおひめさまは言います。

おひめさまに熱をあげる人はたくさんいましたが、みな、この言葉に尻込みをしました。

結婚する2人

男は、おひめさまの美貌にすっかりまいっていたので、おひめさまと結婚することにします。

王様は、「娘が先に死ぬと、いっしょに埋められるんだぞ、それでもいいのか?」と念押ししましたが、男は、「自分の愛情はとても深いから、どんな危険もいとわない」と言うのでした。

おひめさまが死ぬ

結婚した2人は、しばらく幸せに暮らしていましたが、おひめさまは、重い病気にかかって死んでしまいます。

棺桶の中で横たわるおひめさまを見て、若き新郎は、自分がした約束を思い出し、墓に一緒に入るのが怖くなりました。

しかし、王様が、入り口すべてに見張りをおいていたので、彼は逃げることができません。

お墓に入る日が来ました。

お墓といっても、王族なので、小さな部屋(地下の納体堂)です。

おひめさまの棺桶をおいたその部屋には、ろうそくが4本、パンが4斤、ワインが4本ありました。

この食料がなくなったら、若き王は餓え死にします。

蛇の登場

彼は、嘆き悲しみながら、毎日、少しずつパンとワインを消費していました。

あるとき、壁のすきまから、蛇が出てきて、棺桶のほうに近づきました。

「私が生きているあいだは、ひめにはさわらせぬ」と、夫は剣を抜き、へびを3つにたたき切りました。

しばらくしてべつの蛇が、壁から出てきました。

仲間が3つに切られているのをみた蛇は、いったん戻って、今度は、3枚の葉をもって現れました(へびだから、口にくわえていたんでしょう)。

蛇は、切られた蛇の体それぞれに、葉を置きました。すると、すぐに、切断された蛇の体がくっついて、もとどおりになり、2匹のへびは、そそくさと、逃げていきました。

3枚の葉を残して。

おひめさま、生き返る

この様子を見ていた若き王は、「この葉は、人間にも使えるかも?」と思い、葉を拾って、死んだおひめさまの両目と口にそれぞれ置いてみました。

すると、ひめの青ざめた顔が赤みをおび、息を吹き返しました。

「まあ、ここはどこ?」 

驚くおひめさまに、夫はこれまでのことを話してきかせ、残っていたワインを飲ませ、パンをあげました。

おひめさまはちょっと元気になり、からだを起こしました。

2人は、お堂の扉をがんがんたたいて、生きていることを知らせ、無事にお堂から出ることができました。

若き王は、蛇の3枚の葉を家臣に渡し、「使いみちがあるかもしれないから、いつも持ち歩け」と命じました。

心変わりするおひめさま

不思議なことに、生き返ってから、おひめさまの夫への愛は消えました。

若き王は、年老いた父親に会いに行くことにし、妻といっしょに船に乗りました。

自分への深い愛を示し、生き返らせてくれた人である夫に対して、おひめさまは、愛も忠誠心もなくしており、船長を好きになります。

若き王が眠っているとき、おひめさまは船長を呼び、自分は夫の寝台(トランポリンみたいな感じ?)の頭を持ち、船長は足の方を持って、2人で、寝台ごと、若き王を海に放り投げました。

一仕事終わると、おひめさまは、船長にこう言いました。

「さあ、家に帰りましょう。王は途中で死んだことにすればいいわ。お父様には、おまえのことを、すごくよく伝えます。そうすれば、2人の結婚を許してくれるわ。おまえは、父の後継者になれます」。

家臣、若き王を助ける

しかし、若き王の家臣が、すべてを見ていました。

家臣は小さなボートにのって、若き王の遺体を探し出し、陸にあげると、例の3枚の葉を、両目と口に乗せ、王を生き返らせました。

若き王と家臣は、全力でボートをこいで、おひめさまたちより先に、国に戻り、王様に起きたことを伝えました。

王様は、娘がそんなことをするとはにわかには信じられませんでしたが、娘が帰ってこれば、真実がわかるだろうと、若き王と家臣を秘密の部屋に隠しました。

ほどなくして、おひめさまが戻ってきました。

おひめさまの運命

王(父親):「なぜ、おまえ1人で戻ってきたのだ? おまえの夫はどこにいる?」

おひめさま:(悲しそうな顔で)「お父様、とても悲しいできごとがありましたの。旅行中、突然夫は病気になり、死んでしまいました。

親切な船長が助けてくれなければ、とてもここには戻ってこれなかったでしょう。

船長は、夫の死に立ち会ったので、お父様にすべてを申し上げることができますわ」。

王様が、「私は死者をよみがえらせることができる」と言って、秘密の部屋を開けると、若き王と家臣が出てきました。

夫の姿を見たおひめさまは大きなショックをうけ、ひざまづいて許しをこいましたが、王様は冷たく言い放ちました。

「許すことはできない。おまえの夫は、お前と共に死んでもいいと言い、おまえを生き返らせもした。なのに、おまえは、夫が寝ているあいだに、殺したのだ。

自分のしたことの報いを受けるがいい」。

おひめさまは、船長といっしょに、穴がたくさんあいたボートで海に出され、ほどなくしてボートは波のあいだを沈んでいきました。

もとの童話(英語)⇒https://www.cs.cmu.edu/~spok/grimmtmp/013.txt

なぜおひめさまは心変わりしたのか?

前半、へびがおひめさまを生き返らせるところまでは、まさしくマジカルな童話です。

ところが、生き返ったあとのおひめさまの行動は、みょうにリアルな話ですね。

実際、愛人と共謀して夫を殺す人や、殺そうとする人は、現実にいます。

その前に、夫に生命保険をかけていたりしますが。

その場合は、「お金がほしい」というのが殺害の動機ですが、なぜ、このおひめさまは、夫を殺そうとしたのでしょうか?

どうして、夫のことを嫌いになってしまったのでしょうか?

葉っぱのおかげで生き返った蛇は、生き返らせてくれた蛇と、仲良く帰っていったというのに。

たぶん、おひめさまは、もともと、この夫が好きではなかったのでしょう。嫌いではなかったでしょうが、結婚するほど好きではなかったのです。

おひめさまは、そもそも誰とも、結婚したくなかったので、「自分が死んだら一緒にお墓に入ってくれる人と結婚する」などという、むずかしい条件を出していたんじゃないでしょうか?。

結婚したくなくて、難しい条件を出すのは、なぞなぞで結婚をのがれようとしていたおひめさまに似ています。

なぞなぞ(グリム兄弟、1857)のあらすじ

昔のおひめさまは、自分で結婚相手を決められず、父親が相手を決めていたから、こうでもしないと、抵抗できなかったのです。

しかし、「一緒にお墓に入ってもいい」という男があらわれ、「そこまで愛されているのなら」と思って結婚しました。

そうです。愛されてはいたけど、自分は愛していなかったのです。

蛇の葉っぱのせいで、1度なくした命をもう1度拾うことができたおひめさまは、今度こそ、自分の好きなように生きたい、と思ったのではないでしょうか?

その結果、夫を殺そうとしたのは、方向が大きく間違っていますが、このおひめさまなりの、自己主張だったのだと思います。

しかし、殺害計画がばれ、おひめさまは、最後に父親に殺されてしまいます。

結局、当時のおひめさまは、最初から最後まで、父親に運命を決められてしまうのです。

そんなメッセージを私は読み取りました。

抵抗しても無駄なんだよ、というメッセージを。

コメント

タイトルとURLをコピーしました