白い国の3人のおひめさま(ノルウエーの民話)のあらすじ

漁師 その他の物語

ノルウエーの民話から、”The Three Princesses of Whiteland” (De tre prinsesser i Hvittenland) という伝承話を紹介します。ノルウエーの民話は長いのが多いのですが、これも童話にしては長めです。

簡単なあらすじ

女王である妻との約束を破ったので、妻に去られてしまった王が、苦労の果てに、妻のもとに戻る話

漁師の約束

昔、お城のそばに住み、王様に出す魚をとっている漁師がいました。

あるとき、全然魚が取れず、困っていると、海の上から顔が出てきて、「おまえの妻の腰帯の下にあるものを、私にくれるなら、いくらでも魚をとれるようにしてやろう」と言いました。

漁師は、「いいですよ」と言って、たっぷり魚を取ることができましたが、妻に事情を話すと妻は泣き出しました。

実は、腰帯の下には赤ん坊がいたのです(つまり妻は妊娠していた)。

この話はすぐに周囲に伝わり、王様の耳にも入りました。王様は、自分が赤ん坊の身柄を引き受けて、助けよう、と漁師に言いました。

流されてしまった青年

数ヶ月たち、漁師の妻が男の子を生むと、王様はその子を城に連れ帰り、自分の子として育てました。

男の子が青年になると、「本当の父親と漁に行きたい」と言いました。王様は、いやがりましたが、結局、青年が我を通し、父親と1日中、漁をしました。

夜になって、陸にあがったとき、青年はハンカチがないことに気づき、また船に乗り、探しに海に戻りました。

青年がボートに乗るやいやな、海が荒れ出し、遠くに流されてしまいました。

流れ着いた陸地にあがった青年がどんどん歩いていくと、白いひげをはやした年老いた男に会いました。

白い国のおひめさま

「ここはどこですか?」

「白い国じゃ」

男は、青年がどこから来たのか聞いたあと、もう少し先に歩いて行くと3人のおひめさまに出会う、と言いました。

「3人とも、砂に体が埋まっていて、頭しか出ておらん。最初に長女がおまえに助けを求めるが聞いてはいかん。次女も同じことをするが助けてはならん。

しかし3人目のひめに助けをこわれたら、言われたとおりにしなさい。そうすれば、いいことがある」

青年が歩いていくと、老人の言ったように3人のひめが砂に埋まっていました。

青年は長女と次女はスルーして、まっすぐ三女のところに行きました。

「お願いを聞いてくだされば、あなたは、わたしたちの中の誰かを自分のものにできますわ」

青年が、「いいですよ」と言ったので、三女は、自分たちが砂に埋まっているのは3匹のトロールの仕業であるから、城に行ってトロールを退治するよう頼みました。

トロール退治

トロールが一晩ずつ、青年をむちで打つので、むちうちに三晩耐えることができればいいののです。

おひめさま1人につき、一晩です。

おひめさまは、青年に、お城に入る手順を教え、むちで打たれたあとは、部屋にある軟膏を塗れば痛みがとれる、そのあと、やはり部屋にある剣でトロールを刺し殺せ、と伝えました。

青年は言われたとおりにしました。トロールは、一晩ごとに頭の数とむちの数が増えて行き、3日目の晩はとてもきつかったのですが、青年はなんとか退治し、ひめのところに戻ると、ひめはすっかり砂から出ていました。

青年は、一番下のひめを妻にめとり、しばらくお城で幸せに暮らしました。

魔法の指輪

ある時、青年は、両親に会いに家に帰りたくなりました。妻(女王)は、この案に反対でしたが、青年が何度も頼むので根負けしました。

「では、家に帰ってもかまいません。でも1つ約束してください。お父さまの言うことは聞いても、お母さまの願いは決して聞きいれないでくださいまし」。

彼が、「わかった、約束する」と言うと、妻は、彼に指輪を渡しました。

2つの願いを叶えてくれる指輪です。青年は、家に帰ることを願い、無事、実家に戻りました。

青年の母親は、お城(育ての父のお城、砂に埋まっていたひめの城ではない)に行って、王様に、立派になった姿を見ていただきなさい、と言いました。

父親は「そんなことはさせるな。せっかく帰ってきたのに、お城に行ってしまっては、息子と楽しい時間を過ごせなくなる」と反対しましたが、母親があまりにしつこく頼むので、青年は城に行って、育ての父である王様に、立派になった自分の姿を見せました。

張り合う王様

青年の見かけも、服装も、王様よりずっと立派なので、不愉快になった王様はこんなことを言いました。

「おお、おまえは本当に立派になったな。でも、私の后を見てくれ、どうだ、きれいだろう。お前の妻よりずっときれいなのではないかな」。

対抗心を燃やした若い王様(青年)が、「とんでもない。では私の妻を見ていただこう」と言ったら、指輪のパワーで、青年の妻である女王(元、砂に埋まっていたおひめさま)が2人の前に現れました。

女王は、とても悲しそうな顔で、青年に言いました。

「なぜ、私との約束を守ってくださらなかったのです? なぜ、お父様の言うことをお聞きにならなかったのです? 私は家を離れざるを得なくなり、あなたは指輪の魔法を使い果たしてしまいました」。

女王は自分の髪で指輪を編むと自分で、家に帰ることを願い、行ってしまいました。

白い国を探す王様

若い王は、胸が引き裂かれ、妻のもとに戻りたいと願いましたが、戻れません。

「白い国がどこにあるのかわかれば、戻れるかもしれない」。

そう思った王は、あちこちたずね歩き、白い国の場所を聞いてまわりました。

ずいぶんたってから、王は、森中の動物を管理している領主や、動物たちにも聞きましたが、誰も白い国を知りません。

青年は、その後、遠くにいる、領主の兄弟2人と、その2人が管理している鳥や魚にも聞きます。

魚も全員、知らなかったのですが、なんとカマスが知っていました。

「奇遇だね。僕は、10年前に、白い国で調理されたことがあるんだ。で、明日、またそこに行くことになている。白い国の女王の伴侶の王様が、どこかに行ってしまったので、女王は新しい夫を迎えるそうだよ」

白い国にたどりつく

これを聞いた領主(魚を管理している人)が、白い国への行き方を王に教え、その後王は、北風に乗ったりなど、いろいろと複雑なプロセスと多大なる苦労を経て、ようやく白い国たどりつきました。

王はすっかりやせ衰えていたので、女王は、彼が誰かわかりませんでしたが、王が女王にもらった指輪を見せると、すべてを理解し、幸せいっぱいで王を迎え入れました。

その後、2人はちゃんとした結婚式をあげ、その評判は、遠くまでひびき渡ったのです。

☆原文(英語)はこちら⇒The three princesses of Whiteland – Norwegian folktale

約束は守らなければならない

この童話はけっこう長くて、トロール退治や、白い国へ行くことは簡単ではなく、あらすじには書いていませんが、かなり面倒で複雑な手続きを踏まねばなりません。

苦労して白い国にたどりつくのは、やはり、ノルウエーの民話である、『太陽の東、月の西』によく似ています。

青年(若い王)は、妻との約束を破ったので、こんな苦労をするはめになったのです。

よって、この不思議な話の一番の教訓は、「約束は守りましょう」となるでしょう。

約束を守ること、誠実であることが美徳なのです。まあ、当たり前ですよね。

当たり前ですが、なかなか守れないことも多いので、民話で繰り返し伝えたのでしょう。

青年の父親である漁師は、一番最初に、海で、得体のしれない何者かに、「妻の腰帯の下にあるものを渡す」と約束したのに、その約束は果たされていません。

その後の青年の苦労は父親が約束を破ったから、起きたのかもしれませんね。

☆べつのノルウエーのおひめさまの話⇒ガラス山のおひめさま(ノルウエーの民話)のあらすじ。

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