なぞなぞ(グリム兄弟、1857)のあらすじ

気の強そうなプリンセス グリム童話

グリム童話から、なぞなぞ( Das Rätsel )というお話を紹介します。英語のタイトルは、The Riddle です。

あまり有名ではありませんが、なかなかおもしろい童話(pen的には)です。

超簡単な要約

相手が出したなぞなぞに答えられなかったらその人と結婚すると公言していたおひめさまが、王子さまの出したなぞなぞに答えるため、不正を働くが、不正がばれて、2人は結婚する。

旅好きの王子さま

ある国の王子さま(王さまの息子)が、世界を見て回りたいと思い、家臣を1人だけ連れて出発しました。

ある晩、森で宿を探していると、若くてきれいな娘が小さな家に入っていくのが見えます。

王子さま:「おじょうさん、私と家臣をそちらで泊めてもらえませんか?」

娘:「もちろん、かまいません。でも、そうしないほうがいいですわ。私の継母は妖術を使うし、知らない人を入れたがりませんから」。

王子さまは、その家が魔女の家だとわかりましたが、夜もふけ、行く所がなかったので、結局、その家に入っていきました。彼はどんなことも怖くない王子さまだったのです。

赤い目をした魔女が、愛想よく、王子さまと家臣に食べ物ををすすめましたが、娘が、「継母の作ったものを食べたり飲んだりしてはいけない」と忠告しました。

魔女の毒で死ぬ馬

王子さまと家来はふつうに朝まで眠り、翌朝、まず、王子さまが馬に乗って発ちました。ちょっと出遅れた家臣が、馬具をかまっていると、魔女が追いかけてきて、「お別れの飲み物をさしあげましょう。これをご主人さまにお渡しして」と、グラスを差し出します。

その瞬間グラスが割れ、毒が馬にかかり、馬は即座に倒れて死にました。

家来は、王子さまを追いかけ、何が起きたか伝えましたが、馬具を置いていくのはもったいないと思い、取りに戻ったところ、すでにカラスが、死んだ馬の肉を食べているところでした。

家臣は、「今晩、食べものがなかったときのために」と、カラスを殺し、持っていきました。

カラスの肉のスープ

2人は、1日森をさまよい、出られませんでしたが、夜になると、宿屋が見つかり、入っていきました。

家臣はもっていたカラスを宿の主人に渡し、それで夕食を作るよう頼みました。

実はこの宿は盗賊たちの根城で、その晩も、12人の盗賊が、人を殺して盗みを働こうと、やってきました。

盗賊たちは、仕事に入るまえに、夕食をとることにし、宿の主人と魔女と一緒にテーブルに向かいました。

メニューは宿の主人が作ったカラスの肉入りのスープです。食事をしていた人たちは、ろくに食べないうちに、全員倒れて死にました。死んだ馬の肉を食べたので、カラスの肉にも、毒が入っていたのです。

皆死んでしまい、その宿には、宿の主人の娘しかいません。娘はよい人で、王子さまに、人殺したちが残していった宝を見せたところ、王子さまは、「それはみんなおまえが持っていなさい、私は何もいらないから」と言って、家臣と旅立ちました。

なぞなぞ好きのおひめさま

それからずいぶん旅をし、王子さまと家臣はある街にやってきました。そこには、美しいけれど、とてもプライドの高いおひめさまがいました。

おひめさまは、「自分が解けないなぞなぞを出した人と結婚する」、と言っていました。もし、おひめさまが、なぞなぞに正解したら、なぞなぞを出した人は、首を切られます。

おひめさまは、なぞなぞの答えを考える時間として3日を設定していましたが、とても頭がよかったので、締め切り前に答えがわかりました。

王子さまがやってきたとき、すでに9人の男が、おひめさまになぞなぞで挑み、命を落としていました。

ひめの美しさにひかれた王子さまは、自分の命をかけてみることにしました。

王子さま、なぞなぞを出す

王子さまは、ひめになぞなぞを言いました。「誰も殺していないのに、12人殺したものはな~んだ?」

おひめさまは必死で考えましたが答えがわかりません。持っていたなぞなぞの本を調べましたが、書いてありません。

困ったお姫さまは、メイドを呼び、王子さまの寝室に忍び込むよう命じました。夢を見ているあいだに、王子さまが、なぞなぞの答えを言うだろうから、それを聞いてこい、という命令です。

しかし、機転が聞く家臣が、王子さまの代わりに王子さまの寝室で寝て、メイドがやってきたとき、彼女が着ていたローブ(ドレスの上に着ている服)を奪いました。

次の晩、おひめさまは、別のメイドを送り込みましたが、やはり、家臣にローブを奪われました。

おひめさま、王子の部屋に忍び込む

その次の晩、王子さまは、もう大丈夫だろうと、自分のベッドに寝ました。すると、この晩は、おひめさま自身が王子さまの寝言を聞きにやってきました。

グレーのローブを着たおひめさまは、寝ている王子さまのそばに座りました。王子さまが夢を見ていると思ったおひめさまは、王子さまに話しかけましたが、実は、王子さまはしっかり起きていました。

おひめさま:「1人も殺してない、それって何?」

王子さま:「毒で死んだ馬の肉を食べたカラスだ」

おひめさま:「それでも12人殺した、それって何?」

王子さま:「カラスを食べて死んだ盗賊の話さ」

答えがわかったおひめさまが、帰ろうとしたら、王子さまがローブをすばやくつかんだので、おひめさまはその場に服を残して逃げ帰りました。

ハッピーエンド?

翌朝、おひめさまは12人の判事の前で、なぞなぞの答えを言ってみせました。

しかし、王子さまは、「ひめは、夜、私の部屋に忍び込んで、私に答えを聞いたのだ。そうしなかったら、答えられなかったはずだ」と訴えます。

判事が、「証拠をもて!」と言うと、王子さまの家臣が、3つのローブを持ってきました。おひめさまがいつも着ているグレーのローブを見たとき、判事たちは言いました。

「このローブに、金と銀で刺繍をしなさい。それが、あなたのウエディングドレスです」。

原文(英語)はこちら⇒Grimm 022: The Riddle

危険な知恵比べ

この童話の教訓はなんでしょうか?

「毒で死んだ馬の肉を食べたカラスの肉を食べてはいけない」というのが考えられます。

また、「人の忠告は素直に聞いたほうがいい」というのもあります。

王子たちは、魔女の娘の忠告を聞いて、家に行かなかったら、トラブルにまきこまれなかったでしょう。

と言っても、実際は魔女の毒で死にはしなかったし、結果的にちょっとやそっとでは答えられないなぞなぞのネタを仕入れ、おひめさまを手に入れることができたので、魔女の宿に行ったのは正解と言えます。

一番の教訓は、おひめさまの行動から引き出せます。

つまり、「自分の知恵を過信してはいけない」し、「ゲームで、不正を働いてはいけない」のです。

このおひめさまは、なぞなぞの勝負で、9人もの命を奪っている、魔女に近いおひめさまです。

よほどなぞなぞが好きなのか、スリルが好きなのか?

火遊びはよくありません。

きっと、結婚したくなかったんでしょうね。

童話に出てくるお姫さまは、自分が選んだ人とはなかなか結婚できないし、そもそも、結婚しない、という選択肢はなかったようです。

だから、こんな危険ななぞなぞ遊びをして、なんとか結婚から逃れようとしていたのでしょう。

その意味では、かなり近代的なおひめさまと言えます。

残念ながら、王子さまのほうが1枚上手でした。

おひめさまが勝つストーリーは、もう少しあとの時代まで待たなければなりません。

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