フリーウエイ (1996)の感想。

ハイウエイ ペロー童話

赤ずきんのストーリーがベースになっているアメリカ映画、Freewayを見ました。人を選ぶ映画かもしれませんが、おもしろかったです。

日本では劇場公開されておらず、まず、『連鎖犯罪/逃げられない女』というタイトルでDVDが発売されました。

いやいや、このタイトル、なんか、火曜サスペンス劇場みたいでよくないです。販売側もそう思ったのか、別会社からDVDが発売されたとき、『フリーウエイ』というタイトルになりました。

フリーウエイ、予告編(1分44秒)

基本情報

  • 脚本、監督:マシュー・ブライト
  • 主演:リース・ウィザースプーン(ヴァネッサ)、キーファー・サザーランド(ボブ、シリアルキラー)、ブルック・シールズ(ボブの妻)
  • ジャンル:サスペンス? コメディ? アマゾンにはクライム・アクションとあります。
  • 上映時間:(私が見たものは) 110分 。暴力的なシーンをカットしたバージョンもあるらしいです。
  • R指定(暴力シーンと汚い言葉使い)

あらすじ

ヴァネッサは、16歳ぐらい。母親は売春婦、継父は麻薬中毒という劣悪な環境で生まれ育ち、自身も、筋金入りの不良少女。

予告編の最初のシーンは、ヴァネッサが学校で字を読む練習をしているところ。彼女は The cat drinks milk の cat が読めずとても苦労するが、友人の助けを借りて、なんとか全文読んで大喜び。

しかし、ろくに字も読めないのに車の運転はするし(無免許? アメリカでもペーパーテストはあるはず)、頭は悪くない。

ある日、母と継父が同時に刑務所に送られてしまう。警察官に、里子を受け入れている家(フォスターホーム)に行くよう言われるが、以前、そうした家でろくなことがなかったので、ヴァネッサは行きたくない。当座の世話をするためにやってきたソーシャルワーカーのおばさんの足を手錠(おもちゃ?)で、ベッドの足にしばりつけ、彼女は車で家を逃げ出す。

行き先は、別の街に住む祖母(亡き父の母)の家だ。ヴァネッサは祖母に直接会ったことはないが、祖母の写真は大事に持っていて、写真の裏には住所が書いてある。

しかし、ハイウエイで車が故障してしまう。そこにあらわれたのがとても紳士的でやさしそうな男性ボブ。彼は、親切にも彼女をおばあさんのところに送ってくれると言う。しかし、実は、彼はすでに女性を2人殺している連続強姦殺人の犯人であった。

最初のほうはサスペンス(ネタバレあり)

この映画のタイトルバックは、こんな感じのイラストなので、

予備知識なしで、映画を見始めても、「あ、これ赤ずきんちゃんなんだな」とわかります。

はじめのほうで、ヴァネッサが継父とテレビを見ていると、フリーウエイでの強姦殺人の報道があります。父親はテレビを消してしまうのですが、ヴァネッサは、「なによ、見ていたのに」と言います。

ヴァネッサの車が故障したとき、ボブがやってきて彼女を車に乗せるから、映画を見ている人は、ヴァネッサが赤ずきんで、ボブがオオカミとわかるわけで、とてもやさしそうなボブがいつオオカミに変わるのか、ドキドキしながら見ることになります。

ボブの車の中で、ヴァネッサとボブが話すシーンが続きますが、ここはサスペンス映画です。

ボブは、ティーンエイジャーの男子のカウンセリングをしている医者で、心理学に関する本が車の中にあります。彼は、親切そうにヴァネッサの相談にのってあげるのです。

若者を助ける医者であり、かつ若い女性を強姦して殺す男なので、ボブはとても屈折しています。対するヴァネッサは、劣悪な家庭環境で育ったわりには、まっすぐな性格なのか、はたまたボブの誘導がうまいのか、彼にこれまであったことを少しずつ話していきます。

母親は売春婦、父親は麻薬中毒、しかも、11歳のときから、父親に性的虐待を受けている。フォスターホームでもひどい目にあった、など。

ボブは、「ヴァネッサを助けたいから、とても効果がある、最新の心理療法を試さないか」と言って、きわどい質問をぶつけます。セラピーという名のハラスメントです。ひとつめの質問にはなんとか答えたヴァネッサですが、2つめの質問で、切れます。

するとボブが本性を表して、ヴァネッサにひどい暴力をふるいます(言葉の暴力つき)。彼はカミソリを持っていて、ヴァネッサのポニーテール(みつ編み)を切ります(車の運転をしながら)

このあたりのシーンもどきどきします。ヴァネッサは、家を出るとき、ボーイフレンド(ヴァネッサはフィアンセと言っている)から、銃をもらっており、ボブのすきをついて、彼に銃を向けます。

そして、なんと本当に彼を銃で撃つのです。それも何発も。そして、ボブのお金を奪って逃げます。しかし、もっと驚くことに、ボブは死なずに、血みどろになりながらも、近くの病院まで自力で歩いていきます。

ここから、映画の雰囲気が変わります。

リース・ウィザースプーンが引っ張る映画

クレジットでは、キーファー・サザーランドが一番最初に出てきますが、主役はヴァネッサ役のリース・ウィザースプーンです。

当時、リースはまだ数本の映画に出ただけで、今のような大女優ではなかったのですが、この頃から、とても演技がうまいです。キーファー・サザーランドもそれなりにうまいのですが、出番があまり多くないし、ろくでもない役だし、完全にリースに食われています。

ヴァネッサは、かっとなると暴力をふるう、困った赤ずきんですが、このぐらいアグレッシブじゃないと、あの環境では生き抜けないとも思います。

母親も継父もほんとうにどうしようもない人間だし、アメリカの福祉制度も、司法(警察や刑務所)も、少なくともこの映画では、ろくに機能していないので、自分の身は自分で守るしかありません。

だからといって銃をばんばん撃つのは問題ですが、いまのアメリカはそういう社会で、銃がなかったら、ヴァネッサは別の形で身を守り、闘っていたでしょう。 ヴァネッサは銃でボブを撃ちますが、最初の1発ぐらいなら、正当防衛だったと思います。何もしていなかったら、殺されています。

それに、ヴァネッサは、気の毒な身の上です。先日見た、白雪姫のアダプテーションの、ブランカニエベスでも、

白雪姫にあたるカルメンが字を読めないし書けないシーンがあり、気の毒に思ったのですが、ヴァネッサも、十代半ばなのに、ねこ(cat)が読めないのです。

親はいるけど、愛情を受けることができませんでした。自分が、ヴァネッサの立場だったら、いったいどんなふうになっていたかと思うと空恐ろしいです。

字が読めないということは、本を読めないということであり、こんなふうに文章を書くこともできないのですから。

かわいいところがあるヴァネッサ

ヴァネッサは、放火や万引もしている不良少女ですが、死んだ父親や、まだ見ぬ祖母を慕っている、かわいいところもあります。

ボブがレストランで、ヴァネッサに食事をさせるシーンで、彼に父親の写真を見せるのですが、その写真が入っているケースには、サンリオのあひるのキャラ、ペックルがついています。

手はボブ(キーファー・サザーランド)

このケースを、ヴァネッサはカプリパンツのポケットに入れています。ペックルは90年代のキャラですね。時代を感じさせます。

ヴァネッサは友達には評判がいいのです。車の中で ボブが 豹変したとき、ヴァネッサのことを人間のクズだとぼろくそに(本当にぼろくそに)言うのですが、ヴァネッサは、「私は学校もろくに出てないけど、少なくともあんたみたいな偽善者じゃないわ」と言い返します。

確かに、ボブは偽善者で、いや~な奴なのです。ヴァネッサは、すぐにカッとなるし、態度もよくないけど、正直だし、生きるヴァイタリティがあります。刑事も最後は、心情的にはヴァネッサの味方です(余罪はたくさんあるけれど)。

予告編では、「殺人、復讐、裏切り、サバイバル、すべてが入った映画です」とありますが、ちょっといろいろな要素を入れすぎた感じはあります(そのわりにはうまくまとめてありますが)。

もう少し、リアリズム路線にして、赤ずきんのサバイバルと成長に焦点をしぼったら、A級の作品になったかもしれません。

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