Little Red Riding Hood (1997) の感想。

暗い森 ペロー童話

赤ずきんをモノクロの短編映画にした、 Little Red Riding Hood (赤ずきん)を見ました。12分の映画で、監督自身が全編、vimeo にアップしているので、そのまま紹介します。

Little Red Riding Hood (1997) 、全編(12分)

基本情報

  • 脚本、監督:デイヴィッド・カプラン(David Kaplan)
  • 主演:クリスティーナ・リッチ(赤ずきん)、Timour Bourtasenkov(オオカミ、名前の読み方がいまいちわからず。ティモール・ブルタシュンコフでしょうか?)、イヴリン・ソラン(おばあさん)、クエンティン・クリスプ(ナレーション担当)。
  • モノクロでセリフなし。音楽とナレーションが入っています。
  • 原作: アシル・ミリアンの Le conte de la mère-grand (おばあさんの童話)
  • 音楽は、ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』
  • オオカミを演じた人は、バレエダンサー。
  • デヴィッド・カプランは、中国のシンデレラ、イェ・シェンを映画化した、Year of the fish の監督です。

あらすじ

おばあさんに、パンとミルクを持って行く途中、赤ずきんは森の中でオオカミに会う。オオカミに、どこに行くのか、ニードルとピンのどっちの道を通っていくのかと聞かれたので、赤ずきんは、ニードルの道を行くと答える。

オオカミはピンの道を行き、先におばあさんの家につき、おばあさんを殺す(食べたらしい)。そして、おばあさんの血をびんに入れ、肉の一部をテーブルの上にあったお椀に入れる。

赤ずきんが到着すると、おばあさんに化けたオオカミは、赤ずきんに、服を脱いでベッドい入るようにいう。赤ずきんは服を1枚ずつ脱いで暖炉に放り投げ、ベッドに入るのだが…。

映像が美しい映画

モノクロの映像がきれいです。赤ずきんはかわいいし、オオカミも、なかなか魅力的。このオオカミは、アンドロジナスな雰囲気のとてもきれいな人です。

しかも、ダンサーだから身のこなしはきれいだし、表現力もあります。

おばあさんの家のドアも家具もななめになっているのは、ドイツの表現主義の映画を意識しているようです。たとえば、『カリガリ博士』とか『吸血鬼ノスフェラトゥ』など。

私としては、このまま美しく幻想的な方向で進んでほしかったのですが、赤ずきんがベッドに入ると、コメディっぽくなります。

ベッドの中の会話が雰囲気をこわしているような?

森の中で、赤ずきんがオオカミを見た時、多少は驚くものの、全然怖がっていません。オオカミが、「どっちの道を行くの?」と聞いたとき、「ニードルのほうよ、ふふん」ってな感じで、赤ずきんは、オオカミの頬を軽くなでます。

赤ずきんは、オオカミを、いたぶっているのです。

ベッドの中でも、そういう感じですすむのかな、と思っていたら、なんと「おばあちゃん、私、おしっこしたくなっちゃった」と言うではないですか?

「ちょっとトイレに行ってきます」は席をはずすのに、よく使われる言い訳ではありますが。

オオカミが、「ここですればいいじゃない」というと、「うんちもしたくなっちゃった」と言い、「それもここですればいいじゃない」とオオカミが言うと、「ここでしたら、すごく、くさくなっちゃうよ」って。

いや、くさくなる以前に、ベッドが汚れるでしょう? ここは笑うシーンなのか?

その後、赤ずきんは身体にシーツを巻きつけ、外に用を足しに行きます。足に毛糸を結びつけたって、そんなもの、簡単に逃げ出せますよ、オオカミさん。

この赤ずきんは、オオカミより、一枚上手(うわて)でした。

原作は赤ずきんのバリエーション

ペローの赤ずきんはバターとガレットを持っていきますが、この赤ずきんは、パンと牛乳を持っていきます。というのも、原作はペローの赤ずきんでも、グリムの赤ずきんでもなく、アシル・ミリアン(1838-1927)というフランスの詩人が、 1870年代に、二ヴェルネ地方で、収集した民話、Le conte de la mère-grand がもとになっているからです。

こちらに、原文があるので読んでみましたが⇒ Le conte de la mère-grand (Le petit chaperon rouge) – Achille Millien | touslescontes.comTous les contes – Contes, récits et légendes de tous les pays

映画のストーリーは、ほぼ原作どおりに進みます。この赤ずきんは、本当におばあさんの肉を食べますし、オオカミに言われて、脱いだ服を暖炉に放り投げます。

ただし、ベッドで、「トイレに行きたい」とは言わず、「すごくおなかがすいたから外へ行きたい」(外で何か食べるらしい)と言って、出ていきます。

赤ずきんが、セクシーな目でオオカミを見たり、オオカミと赤ずきんの間に、性的な緊張感が漂うのは原作にはないので、これはカプラン監督の味付けです。

けれども、原作でも、赤ずきんは、エプロンのみならず、服をすべて( le corset, la robe, le cotillon, les chausses )1枚ずつ脱いで、どこに置くべきか、いちいちオオカミに聞いていて、そのたびにオオカミは、「もういらないから、暖炉に入れて燃やせ」と言っています。

赤ずきんのバリエーションの中でも、セクシャルな話と言えましょう。

これはこれで、おもしろいですね。何より、12分という短さがいいです。

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