七羽のからす(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

カラス グリム童話

グリム童話から、鳥になった兄を妹が助ける話の1つ、『七羽のからす』を紹介します。

原題は、 Die Sieben Raben、英語のタイトルは、The Seven Ravens

超簡単なあらすじ

自分のせいで兄たちがカラスになってしまったと感じた妹が、兄たちを探し出し、人間に戻す話。

病弱な妹

ある男に7人の息子がいました。どうしても女の子がほしいと願っていたら、妻がまた妊娠し、待望の女児が生まれます。

夫婦は大喜びしましたが、この子は、とても小さくて病弱でした。

「このままではすぐに死んでしまうかもしれない」と思った両親は、娘に早めに洗礼を受けさせることにします。

父親の怒り

父親は、息子の1人に井戸に行って洗礼用の水をくんでくるよう命じます。残りの6人も彼について井戸に向かいました。

誰もが水をくみたがったので、争いになり、はずみで、水差しが井戸に落ちます。息子たちは、なすすべもなく、その場に立ちすくんでいました。

いつまでたっても、息子たちが帰ってこないので、父親は、「あいつら、何をしに行ったのか忘れて遊んでいるんじゃないのか?」と思います。

「早くしないと、娘が洗礼を受ける前に死んでしまう」と焦った父親は、怒って、「息子たちはみんなカラスになってしまえばいいんだ!」と叫びました。

そういう言うやいなや、息子たちはカラスになり、バタバタと空を飛んでいきました。

秘密を知る妹

両親は、呪いの言葉をとくことができないでいました。息子がいなくなって悲しかったのですが、それでも娘にずいぶんなぐさめられていました。

この子は、丈夫でとても美しい子に育ちます。

両親は、カラスになった息子のことは娘には秘密にしていました。だから、ずっと娘は自分は一人っ子だと思っていましたが、ある時、人々のうわさ話を耳にして兄たちのことを知ります。

街の人「あの子はきれいな子だけど、お兄さんたちがカラスになったのは、あの子のせいだよね」

娘が両親に、兄たちのことを聞くと、両親は本当のことを伝えましたが、「仕方のないことだよ。おまえには責任はない」と言います。

兄たちを探しに

しかし、娘は、罪悪感にさいなまれ、こっそり家を出て荒野に向かうのでした。

「どんなことがあっても、兄たちを見つけて、必ず人間に戻してみせる」と決めたのです。

娘の荷物は、両親の記念の小さな指輪、パン、水、小さな椅子だけです。

歩きに歩いて、娘は、地の果てに到達。そこには太陽がいましたが、とても暑かったし、太陽は小さな子どもを食べたので、娘は怖くなって、急いで逃げ出し、今度は月がいるところに来ました。

そこは、寒すぎるし、月は、娘を見ると、「くんくん、人間の匂いがする」と言ったので、娘は、また逃げました。

親切な星

今度は、星たちのところに来ました。星たちはみな、親切で、それぞれが小さな椅子に座っていました。

朝の星が、娘にニワトリの骨をくれました。

星:「これがないと、ガラスの山の扉を開けることができないの。お兄さんたちは、ガラスの山にいるからね」。

娘はニワトリの骨をハンカチにつつみ、ガラスの山まで歩きました。

扉には鍵がかかっています。

ニワトリの骨を取り出そうとしたら、なぜか、ハンカチの中にありません。

「どうしよう。あれがないと山に入れないのに…」

娘は、ナイフを取り出すと、自分の指を1本切り、それを鍵穴に差し込んだらドアが開きました。

カラスの家

中に入ると、小人がやってきました。

小人:「何を探しているの?」

娘:「兄を探しているの。7羽のカラスよ」

小人:「ご主人のカラスたちはいまは家にいないから、ここで待っていればいいよ」

そういうと、小人は、カラスの食事を運んできました。料理ののった7つのお皿と、7つのカップです。

娘は、それぞれのお皿とカップから、少しずつ料理を食べ、飲み物を飲みました。そして、最後のカップに、持ってきた指輪を入れました。

兄たち、人間に戻る

突然、羽ばたきがして、カラスが戻ってきました。

娘はドアの影にかくれました。

カラスたちは、誰かが自分の料理を食べたとか、誰かがカップから飲んだ、人間の口だ、と騒ぎ始めます。

7番目のカラスが、カップの中にある指輪を見つけ、両輪の物だと気づき、こう言いました。

「ああ、妹がここに来ればいいのに。そうしたら、僕たちは自由になれるのに」。

この言葉を聞いて、娘は前に出ました。

すると、カラスは人間の姿にもどり、兄と妹は抱き合って大喜び。皆で、一緒に家に帰りました。

原文(英語)⇒Grimm 025: The Seven Ravens

7羽のからすのイラスト

言葉には気をつけよう

この童話のわかりやすい教訓は、「口にする言葉に気をつけなさい」です。

父親が、「息子たちはカラスになればいいんだ」と言ったから、本当にカラスになってしまったのです。

怒ったとき、「おまえなんて、カラスになれ!」という人はあまりいないと思いますが、「おまえなんか死んでしまえ!」という人はいます。

私もそういうメールをブログの読者から受け取ったことがあります。

このように、感情のコントロールができず、無責任なことを言う人は、それ相応のむくいを受けるのです。

最近は、ソーシャルネットワークで、匿名なのをいいことに、無責任な暴言を吐く人がたくさんいますが、ぜひ、『7羽のからす』を読んでもらいたいですね。

父親のせいで、娘がどんな苦労をしたか。

この子は、指を1本なくしてしまったのです。

突然カラスになってしまった兄たちも、現状を受け入れるまでには、ずいぶん動揺したはずです。

冒険をするヒロイン

鳥になった兄たちを助ける話は、これまでに2つ書いています。

十二人兄弟(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

六羽の白鳥(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

ほかの話では、妹は、7年間口をきかないことで、兄たちを人間に戻しました。

2人とも、よその国の王様に見初められて結婚もしています。

しかし、『7羽のからす』では、妹は1人で地の果まで行き、太陽や月、星と会い、兄たちを見つけますので、ほかの妹より行動的です。

このあたりは、『クピドとプシュケ』とそのバリエーションに似ていますね。

『クピドとプシュケ』は花嫁が夫を探す話ですが。

クピドとプシュケの物語(ギリシャ神話)のあらすじ(前編)。

さて、指を鍵代わりにするのなら、切らずにそのまま差し込めばよかったのでは?

と思います。

実際、子供むけに残酷さをトーンダウンしている話では、じかに指を差し込んでいます。

しかし、ニワトリの骨の代わりなのですから、指の中にある骨が必要だったのでしょう。

そのへんに針金も落ちていなかったのだと思います。

指を切ってでも、妹は兄たちを助けたかったのです。

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