シンデレラ(グリム童話、アシェンプテル)のあらすじ(1)

ハシバミの葉 グリム童話

シンデレラに類似した話は世界にたくさんありますが、特に有名なのが、シャルル・ペロー版と、グリム童話版です。今回は、グリム童話のシンデレラのあらすじを紹介します。グリム童話のほうが、童話らしいというか、より原始的です(ペローのほうが洗練されています)。

ドイツ語でシンデレラは、Aschenputtel(アシェンプテル、またはアッシェンプッテル)です。

母親が亡くなる

ある金持ちの男性の妻が病気にかかり、もう終わりが近いと悟ったとき、彼女は一人娘を枕元に呼びました。

「娘や、ずっと信心深く、いい子でいなさいね。そうすれば、神さまがあなたをいつも守ってくださいます。私も天からあなたを見ていますよ」。こういうと母は息を引き取りました。

娘は母のお墓に毎日参り、泣いていました。言われたとおり、信心深く、よい子でいました。冬がすぎ、春になると、父親は再婚しました。

父が再婚して女中に格下げ

新しい母親には2人の娘がいました。2人は見かけはきれいでしたが、心はどす黒く、すぐに娘(実子のほう)をいじめるようになりました。

「なぜ、こんな子と一緒の部屋にいないとだめなの。あんた、パンが欲しかったら自分でなんとかしなさいよ。ほら、女中は台所へ行って!」。

娘は姉たちに古い灰色の服を着せられ、木靴をあてがわれました。そして朝から晩まで家事をしなければなりませんでした。

それだけでなく姉たちは、あらゆる機会をとらえて娘をからかい、いじめました。夜になると疲れた娘は、かまどの灰のそばで眠りました。自分のベッドがなかったからです。娘はいつも灰で汚れていたので、姉たちは、娘を「シンデレラ(灰だらけの子)」と呼ぶようになりました。

父からハシバミの枝をもらう

ある日、父が博覧会に行くことになり、娘たちに、おみやげに何が欲しいか聞きました。

「きれいなドレスがいいわ」姉がいいました。
「真珠とダイヤモンドをお願い」もう1人の姉がいいました。
「帰る途中に、お父様の帽子にさわった最初の木の枝をお願いします」。シンデレラがいいました。

父親は頼まれたものを買い、帰路で自分の帽子に当たったハシバミの小枝を持ち帰りました。

母のお墓にハシバミを植える

シンデレラは父に礼を言うと、もらったハシバミを母のお墓に植えました。シンデレラの流した涙のせいで、その枝はどんどん成長し、1本の美しい木になりました。

シンデレラは1日3回母の墓に行き、泣きながらお祈りをしました。いつも白い鳥が木にやってきました。シンデレラが望みを言うたびに、この鳥が望んだものを落としてくれました。

王さまのお祭りが行われることに

ある時、王さまが3日間お祭りをすることにし、国中の美しくて若い女性を招きました。この中から王子さまがお妃を選ぶのです。2人のまま姉も招かれ、姉たちはシンデレラに、髪をとけ、靴を磨けなどなど命令しました。

シンデレラは泣きながら、仕事をしました。自分も姉たちと一緒に踊りに行きたかったからです。継母に、「私も行かせてください」と頼みましたが、「灰だらけのおまえが、お祭りに行くだって? ドレスも靴もないのにダンスをしたいだなんて」と冷たく言われるだけでした。

☆私はドイツ語はまったく読めないため、英語の翻訳を参照しました⇒ Grimm 021: Cinderella  これは1857年版です。グリム童話は1812年に初版が出て、その後7回改定され、1857年版が決定稿とされています。

今回のポイント(penの解釈)

いきなりの不幸と母親の教え

グリムのシンデレラはいきなり母親の死から始まりますが、亡くなるとき母はとても大事なことを教えます。「いつも信心深く、いい子でいなさい」。シンデレラが継母やまま姉の理不尽なふるまいと、父親の無関心に耐えることができたのは、母の教えがあったからです。

母の教えどおり、信心深く、いい子でいたら、最後に幸運に恵まれた、というモラルを子どもたちに伝えていると思われます。

ディズニーのアニメは、「信じていれば夢は叶う」と言いますが、自分を信じるのではなく、神さまを信じることがポイントのようです。

ペロー版より意地悪な姉たち

グリム版の姉たちは、ペロー版の姉たちと同じように、虚栄心が強く、自分のことしか考えていないし、思いやりも知性のかけらもない困った人たちですが、グリム姉のほうが、ペロー姉より、意地悪に思われます。

ペロー版では、姉たちは、鏡を見ておしゃれに一生懸命で、そちらにエネルギーを取られていじめにまわす方があまり残らなかったのかもしれません。すぐ上の姉は上の姉ほど意地悪ではなかった、という説明もあります。

グリムでは、姉たちは、灰の中に豆をばらまいて、シンデレラに拾わせるという具体的ないじわるをしています。グリム版の姉のほうが育ちの悪さを感じさせます。

ハシバミの木

姉たちはドレスや宝石を父にねだりましたが、シンデレラは木の枝をリクエストしました。実はこれはとても賢いことです。なぜならこのハシバミ(hazel)の木があとでシンデレラを助けるからです。

グリムのほうは、魔法使いは出てこず、ハシバミの木からいろいろなものが出てくるのです。

ハシバミは知恵の象徴と言われています。また、ハシバミはさまざまな文化圏で魔除けや不思議な力がある木だと考えれてきました。

ギリシャ神話に出てくるヘルメスが持っている杖も、ハシバミ製です。

とはいえ、そんな計算があって、シンデレラは枝をリクエストしたのではないでしょう。

シンデレラが父親に枝を頼んだのは、母親のお墓に植えたかったから、つまり母親を供養したかったからです。このやさしい気持ちが、幸運を引き寄せたのです。

この続きはこちら。

ペロー版はこちら。

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