クピドとプシュケの物語(ギリシャ神話)のあらすじ(前編)。

クピドとプシュケ 美女と野獣

Cupid and Psycheと呼ばれる物語のあらすじを紹介します。ギリシャ神話ですが、『美女と野獣』はこの神話がもとになっている、またはバリエーションである、という説があります。

『クピドとプシュケ』は、アプレイウス(123年頃生まれ)というローマの作家が書いた、 『変容(黄金のロバ)』という小説(現存するラテン語の完全な小説)の中の逸話の1つですが、これは長いです。

今回は、比較的短い、トマス・ブルフィンチ(1796-1867)というアメリカの作家であり、神話の研究者が書いた、 “The Age of Fable” (邦題:ギリシャ・ローマ神話)(1855)にある、『クピドとプシュケ』のあらすじを2回に分けて紹介します。

プシュケはプシュケーと書かれることもあります。英語読みはサイキです。

クピドはキューピッドのことで、ギリシャ神話だとエロース(エロス)で、英語だとアムールとも言うらしいので、『アムールとプシュケ』 『 エロースとプシュケ』というタイトルのときもあります。

超簡単な要約

忙しい人のための1行サマリー:プシュケという美人(人間)とクピドという神が愛し合い、困難を乗り越えて結ばれる話。

プシュケに嫉妬するヴィーナス

あるところに3人姉妹を持つ王さまと女王がいました。姉2人はふつうに美人でしたが、末っ子のプシュケは驚くほどの美人で、皆が、「美しい。まるで美の女神さまのようだ」とほめたたえ、あがめました。

これを聞いた、本物の美の女神であるヴィーナス(アフロディテ)が、「人間のくせに美の女神だなんて許せない」と怒り、息子のクピドを呼び、プシュケに矢を刺して、いじわるで何の価値もない男に恋をさせろ、と命令します。

クピドは翼が生えていて、いつも弓矢を持ち歩き、彼の矢があたった人は、恋に落ちるのです。

プシュケに恋をするクピド

プシュケが寝ているとき、彼女の横腹をクピドが矢でぽちっとさわると、プシュケが目をさまし、前をじっと見つめました(しかしプシュケには、クピドの姿は見えていない)。その美しさにびっくりしたクピドは、混乱し、あやまって自分を矢で刺してしまいます。

彼はプシュケに恋をして喜びでいっぱいになります。かくして、ヴィーナスの計画は失敗に終わります。

求婚者があらわれないプシュケ

姉2人は結婚しましたが、プシュケはあまりに美しく、神々しいせいか、求婚者があらわれません。プシュケは1人ぼっちで寂しく、自分の美貌を呪いました。

プシュケの両親は、「プシュケが美しすぎるから、知らないうちに、神さまたちの機嫌を損ねたのかも?」と心配し、アポロン(預言する神さま)にアドバイスしてもらうことにします。

アポロンは、「プシュケは人間とは結婚しない。彼女の夫は山の上で待っている。彼は神も人間もさからえない怪物だ」と言ったので、両親や周囲の人は驚き、嘆き悲しみました。

しかし、プシュケは、自分の運命を受け入れるから、山まで私を連れていって、と言います。

山に行って結婚するプシュケ

かくしてプシュケは花嫁衣装を着て皆と山まで行き、ほかの人は下山して1人頂上に残っていました。クピドが泣きながら突っ立っていると、 ゼピュロス (風の神)が彼女を運びさり、プシュケは寝てしまい、気づくとすばらしい宮殿の前にいました。

中に入ると、美しくて素晴らしいものばかりが置いてあります。そのうち声が聞こえてきて、「ここはおまえの家だ。自由にしてくれ。用があれば、召使いが何でもする。まずは部屋で休み、それからお風呂に入りなさい。そして夕食だ」と言います。これはプシュケの夫の声です。

プシュケが言われたとおりにすると、見えない召使いたちが、いろいろな支度をしてくれます。夕食のテーブルにはごちそうが並び、どこからともなく心地よい音楽が聞こえます。

姿を見せない夫

プシュケは夫の姿は見ていません。彼は夜、暗くなってからしか表れないし、朝になる前にどこかに行ってしまいます。ですが、彼はとてもやさしく、愛にあふれていました。

プシュケは、「朝になっても、ここにいて」と夫に頼みましたが、夫は、「自分の顔を見ようとしてはいけない」と言います。

「私の愛を疑うのか? 私の顔を見ると、好きになるかもしれないし、嫌うかもしれない。しかし、私が望むのはおまえが私を愛することだけだ」と夫は言うのです。

プシュケ、姉たちを呼び寄せる

夫の顔が見えない以外は、何不自由ない生活で、プシュケは幸せでした。しかし、しばらくして、自分の今の暮らしを知らず、心配しているだろう両親や姉を安心させたいと思うようになります。

ある晩、夫に、姉を呼び寄せてもいいかと頼んだら、夫は承諾し、 ゼピュロス(風の神)が、姉たちを連れてきました。

プシュケが姉たちを宮殿に案内し、ごちそうしてもてなすと、姉たちは、プシュケの優雅な生活をねたみました。プシュケに、夫はどんな人かと聞いたら、「彼はとてもやさしい人よ。昼間は狩りをしていて、夜だけ家に戻るの」と言います。

「何、それって変じゃない?」と姉たちがさらに妹を問い詰めると、プシュケが夫の姿を一度も見ていないことがわかります。

「アポロンの神託では、あんたはとんでもない怪物と結婚するって話だったよね? 今夜、こっそりランプと短刀を持っていって、夫が寝たら、顔を確認しなさい。もし、怪物だったら、そいつの首を落として、逃げるのよ」

姉たちは、こう プシュケに、アドバイスしました。

プシュケ、夫の顔を見る

プシュケはそんなことはしたくないと思う一方で、夫の顔を見てみたいという好奇心に負け、結局、姉たちが帰ったあと、ランプと短刀を寝室に隠します。

夫が眠りに落ちたあと、ランプで夫の顔を照らしてみると、おそろしい怪物の顔が出てくると思ったら、そこにあるのはびっくりするほどの美青年の顔でした。

それは、世にも美しくて魅力的な神の顔。雪のように白い首には黄金の巻毛がかぶさり、ほほはバラ色です。肩からは白い翼が2つはえていて、春の花のようにやさしい羽がついていました。

もっとよく顔を見ようと、プシュケが近づいたら、ランプから、熱い油が落ちて、夫の肩にかかりました。驚いた夫が目をさまし、プシュケの姿を見ると、彼は何も言わず窓から飛んでいってしまいました。

プシュケはその後を追い、窓から地面に落ちました。

プシュケの前から姿を消すクピド

それを見たクピドはこう言います。

「ああ、ばかなプシュケ。これが私の愛に対するむくいなのか? 母の言いつけをきかずに、おまえを妻にしたのに、おまえは私を怪物だと思って、首をはねようとするなんて。

姉たちのところに帰るがいい。おまえは私より姉たちの言うことをきくのだから。

私はお前の前から姿を消す以外の罰は与えない。疑いの気持ちがある限り、愛はなりたたない」。

そういって、彼は、泣いているプシュケをおいて行ってしまいました。

原文はこちら⇒ Cupid and Psyche myth told by Bulfinch in Age of Fable – Excellence in Literature by Janice Campbell

いろいろなバージョンあり

クピドとプシュケの話はいろいろなバージョンがあり、クピドがわざと自分に矢をさした、という話もあるし、この話のように、あやまって矢をさしたというのもあります。

クピドはプシュケには矢を刺していないパージョンもあります。クピドが姿を消すまえに、プシュケが妊娠するというストーリーもあります。

クピドについて

クピドは、 ヴィーナス(アフロディーテ、 ウェヌス)と軍神アレス(マルス)との間に生まれた息子だとされていますが、出生については諸説あります。

というよりも、神さまなので、実在はしていません。

クピドは、マヨネーズのキャラのキューピーのモデルなので、幼児体型を思い浮かべることが多いかもしれませんが、この話では、彼はティーンエイジャー(15~16歳くらい?)あたりだと思います。

クピドとプシュケの話はヨーロッパではとても有名で、3世紀ぐらいから数々の芸術(絵画や彫刻)のモデルになっています。美男美女のカップルなので、絵にすると映えるのでしょう。

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