アザラシの皮(アイスランドの民話)

アザラシ その他の物語

アイスランドの民話から、『アザラシの皮』を紹介します。英語のタイトルは、The Sealskin です。

人魚伝説の1つで、羽衣伝説の話もありますす。

1行の要約

人間の男が、アザラシの皮を持ち去り、その皮の持ち主(美しい女性として登場)と結婚するが、やがて、その女性は海に帰ってしまう。

男、アザラシの皮を持ち去る

朝早く、西部のミールダル(Myrdal)の男が、岸壁のそばを歩いているとき、洞穴を見つけました。

洞穴の中では、ダンスが行われているようで楽しそうな物音が聞こえます。

入り口の外に、たくさんのアザラシの皮が山になっていたので、彼は1枚持ち去り、トランクの中に入れて鍵をかけました。

その日、またあとで、洞穴に行くと、入り口に若くて美しい娘が裸で泣きながら座っていました。

男が持ち去った皮はこの娘のものだったのです。男は、娘に服を与え、なぐさめたあと、家に連れ帰りました。

男、アザラシ(美女)と結婚する

その後、娘は男を受け入れましたが、ほかの人間とは、決して仲良くなりませんでした。娘はよく1人で、海を見ていました。

しばらくして、男は娘と結婚し、2人の間にはたくさんの子供が生まれました。

男は、ずっとトランクに皮を隠していました。そして、どこに行くにもトランクの鍵を持ち歩きました。

アザラシ、自分の皮を見つけ海に帰る

何年かたって、男は、海に漁に行くとき、鍵を枕の下に忘れました。

実は、男はクリスマスのミサに家族と行ったけれど、妻は病気で一緒に行かなかったと言う人たちもいます。

このとき、男が着替えをするとき、いつも着ている服のポケットから鍵を取り出すのを忘れたとか。

とにかく、夕方、男が家に戻ったとき、トランクは開いていて、妻は皮と一緒に消えていました。

鍵を見つけた妻は、好奇心からトランクの中身を調べ、皮を見つけたのです。

妻は、子どもたちにさよならを言い、皮を着て、海に飛び込みました。

皮に飛び込む前に、こう言ったそうです。

こうしたいの。でもしたくない
海の底に、私は子供が7人いる
ここにも、私の子供が7人いる

この言葉を聞いた男はほろりとしました。

夫と子供をサポートするアザラシ

その後、男が海に漁に出るたび、一匹のアザラシがボートのそばにやってきました。その目からは涙が流れているように見えました。

男は、いつも大漁に恵まれました。

2人の子どもたちが、海辺を歩いていると、アザラシが海から出て、一緒について行き、色とりどりの魚やきれいな貝を子どもたちに投げる姿がよく見られました。

でも母親は決して陸には戻ってきませんでした。

☆原文はこちら(英語)⇒Mermaid Wife

けなげなアザラシ

このアザラシは、リアルのアザラシではなくて、英語でシルキーとか、セルキーと呼ばれる、とてもきれいで、永遠の命を持つ女性です。海にいるときは、アザラシの姿で、陸上にいるときはその皮を脱ぎ美女の姿です。

原文はすごくシンプルなので、なぜ男がアザラシの皮を持ち帰って隠したのか、夫はシルキーという生きもののことを知っていたのか、アザラシは、男が自分の皮を持っていったことを知っていたのかなど、肝心のところがわかりません。

たぶんアザラシは、夫が皮を取ったことを知らなかったんでしょうね。「トランクの中身を知りたい誘惑に逆らえなかった」と原文にありますから。

夫がトランクに鍵をかけて、その鍵を肌身離さず持っていたことは、知っていたと思います。夫が絶対鍵を手放さないから、何かとてつもなく大事なものが入っていると思っていたのでしょう。

開けてみたら、自分の皮が入っていた。この皮があれば海に帰れる、帰りたい、帰ろう、と思って帰ってしまったのでしょう。そりゃあ帰りたいですよね。海にも子供がいたみたいだし。

しかし、海に帰ったあとも、アザラシは置いてきた夫や子供のことは気にかけていて、夫にたくさん魚を採らせたり、子どもたちに貝や魚を投げたのです。皮を取って、自分を帰れなくしていた夫のことは、全然うらんでいないようです。

なんて、けなげなアザラシ。

人魚や羽衣伝説系の話を読むたびに、私は、羽衣を取られて、家に帰れなくなった人(生きもの)たちが、気の毒でなりません。こういうふうに女性が人質にされることって、昔からよくあったんでしょうね。借金のかたとして売られてしまったり。

この手の話は、「母親の愛情」みたいな美談でまとめられることが多いのですが、そこにあるのは、力のある者たちの、横暴で勝手な振る舞いです。そういう意味では、人魚や異形の世界の生きものが出てくるのに、とても人間らしい話です。

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