シャルル・ペローの童話集(Histoires ou Contes du temps passé )(1697) の一番最初におさめられている、眠れる森の美女(La Belle au bois dormant)のあらすじを紹介します。
日本ではグリム童話のバージョンが有名だと思います。グリム童話版は、ペロー版の話が口承で伝わったものなので、よく似ています。ただし、ペロー版は、お姫さまが王子と結婚したあとの話があります。それと、最後に教訓が書かれています。
超簡単なあらすじ
この物語の内容を一言で書くと、魔女の呪いによって、あるお姫さまが100年眠る話、となります。グリム版では、王子さまがお姫さまにキスをするので、お姫さまが目覚めますが、ペロー版では、王子はその場にいるものの、キスはしません。
単に100年たったから目が覚めただけ、とも言えます。その後2人は結婚します。
では、以下にもう少し詳しいあらすじを書きます。
待望のお姫さまが生まれる
昔むかし、あるところになかなか子供ができない王さまと女王さまがいました。2人は、子宝をさずかるのに効果のあると言われるありとあらゆることをやったあげく、ようやく女の子に恵まれました。
子供に洗礼を受けさせる時、仙女(魔法使い)を7人呼んで、娘に贈り物をしてもらうことにしました。当時、そういう風習があったからです。教会での式のあと、お城でお祝いパーティをしました。
仙女の席には、それぞれ金の箱が置いてあって、なかには、ダイヤモンドとルビーのかざりのついた、金のスプーン、ナイフ、フォークが入っていました。
招かれざる客の登場
みなが、テーブルにつこうとしたとき、年老いた仙女がやってきました。この仙女はお祝いに招待されていませんでした。というのも、50年以上前から塔に閉じこもったきりで、死んだか、魔法でどうにかなったと思われていたからです。
王さまは、この仙女にも食器をだしましたが、金の箱に入ったスペシャルなカトラリーは、7人分しか用意していなかったので、ふつうのものになってしまいました。
この対応に、ばかにされたと感じた仙女は何か口のなかでぶつぶつ言いました。
機転をきかせた若い仙女
この様子を見ていた、一番若い仙女は、年寄り仙女が、お姫さまによからぬ贈り物をするのではないかと思い、食事の後、そっとタピスリーの後ろに隠れました。年寄り仙女が変な贈り物をしても、最後に、自分がそれを帳消しにする贈り物をすればいいと思ったのです。
年寄りと一番若いのをのぞいた6人の仙女が順番にお姫さまに贈り物をしました。贈り物といっても、物ではありません。
それぞれ、美貌、賢さ、優雅さ、ダンスのスキル、すばらしい歌声、どんな楽器も完璧に弾きこなすスキルを贈りました。
年寄り仙女の迷惑な贈り物
年寄り仙女は、「お姫さまは、手で錘(つむ)の先をつっついて死にます」という恐ろしい贈り物をくれました。
まわりにいた人は皆ショックを受け、泣きました。
そのとき、いちば若い仙女が出てきて声高に言いました。「ご安心なさいませ。王さま、女王さま。お姫さまは死にません。私には、年寄り仙女の言ったことを完全にキャンセルすることはできません。
お姫さまは手で錘(つむ)の先をさわってしまいます。ですが、死にはしません。代わりに深い眠りに入ります。100年間、眠ります。100年たったころ、王子さまがやってきて、お姫さまを起こしますわ」。
錘(つむ)使用禁止例
王さまは、年寄り仙女がくれた災いをふせぐために、皆に、錘を使ったり、錘を家に置いたりすることを禁止しました。このおふれに従わない者は死刑です。
それから15年~16年後、王さまと女王さまはとある別荘に遊びに行きました。お姫さまは1人で、城中の部屋を走り回っていて、だんだん上のほうに上っていきました。そして、塔(ドンジョン)の一番上の屋根裏部屋に行き着きました。
そこでは、老女が、錘を使って糸をつむいでいました。この老女は、王さまのおふれを知らなかったのです。
「おばあさん、そこで何してるの?」
「糸をつむいでいるのですよ」
「きれいねえ。ちょっと貸して。私もやってみたいわ」
お姫さまは手で錘の先をつっついて、その場にばたんと倒れました。
続きはこちら。
原文はこちらを参照しました⇒ La Belle au Bois Dormant de Charles Perrault
錘って何?
錘は、原文では、 un fuseau となっています。これは手で糸をつむぐときに使う、木製の道具です。
英語ではspindleと呼びます。ところで、このおばあさんは、なぜ、王さまのおふれを知らなかったのでしょうか? いつも屋根裏部屋にいて、ほかのスタッフとは交流がないのでしょうか? でも食事は、皆とするだろうし、不思議です。「仙女の呪いなので、どのみち防ぐことはできなかったのです」と、物語にはあります。
コメント