美女と野獣(ディズニーアニメ、1991)の感想。

赤いバラ 美女と野獣

ボーモン夫人の、La Belle et la Bête(美女と野獣)をアニメーション映画にした、ディズニーの The Beauty and the Beast を見ました。コクトーの、『美女と野獣』とはかなり違うのですが、想像以上におもしろく、感動しました。

美女と野獣、公開当時の予告編

作品情報

  • 監督: ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイズ
  • 脚本は、 Linda Woolverton という人を中心にたくさんの人が書いています。
  • 原作:『美女と野獣』ボーモン夫人
  • おもな声の出演:ページ・オハラ(ベル)、ロビー・ベンソン(ビースト)、アンジェラ・ランズベリー(ミセス・ポット)、リチャード・ホワイト(ガストン)
  • 音楽:アラン・メンケン、6曲、歌があります。
  • 公開:1991年22月22日
  • アニメなのに、アカデミー賞作品賞にノミネートされるほどの映画で、いろいろな賞を獲得している大ヒット作。

あらすじ(さわり)

中世のフランス、森のむこうにあるお城に、甘やかされて育った王子が住んでいた。老女がやってきて、赤いバラと交換に一夜の宿を求めるが、王子は老女が醜いので断る。

老女は、「人を見た目で判断しちゃあいけません。美はこころの中にあります」と言ったが、王子は無視する。すると老女は美しい魔法使いに変身し、愛の心のない王子を野獣に変え、城全体に魔法をかける。

魔法使いの差し出したバラは、王子が21歳まで咲いている。もし最後の花びらが落ちるまでに、王子が人を愛し、相手も王子のことを愛さないと、王子は一生野獣のままだ。

一方、街には発明家のモーリスという男が、美しい娘、ベルと住んでいる。モーリスは、発明フェアに作品を出品するために出かけるが、森の中で迷い、おおかみに襲われそうになり、大きな城にたどりつく。

ここは野獣の住む城で、野獣は、勝手に入ってきたモーリスに怒って、牢に閉じ込める。モーリスの乗っていた馬が、ベルの元にもどり、ベルはこの馬に乗って、父を探しに城にやってくる。そして、父の代わりに自分が城に残ることを承諾する。

このあとは、だいたい原作どおり。原作には出てこないガストンという、狩りが得意で、ごうまんな男が、ベルに結婚をせまっていて、後に彼は、村人をたきつけ、野獣の城にせめこむ。

手際のよい筋運び

この映画は、魅力がいろいろありますが、私がいいと思ったのは脚本です。物語の一番最初に、ステンドグラス風(?)アニメーションで、王子が野獣になった理由と、 魔法がとける条件 、21歳の誕生日というタイミリミットが提示されます。

最初に映画のテーマがわかりやすく提示される親切設計です。

さらに、これがあるので、物語の後半で、野獣がベルを父親のもとに返したシーンが生きてきます。彼は自分のことより、ベルの気持ちを優先したわけで、もう昔のような、自分本位な人間(野獣だけど)ではなくなっていたのです。

そして、彼をそんなふうに変えたのは、ベルとの生活です。

ベルは最初は、野獣を拒絶していましたが、オオカミに襲われたとき、野獣が身を張って助けてくれたのをきっかけに、だんだん仲良くなっていきます。

2人が次第に愛し合うようになり、一緒に踊るまでになるまでの気持ちの変化がていねいに描かれています。

物語のプロローグ(2分19秒)

このプロローグが終わると、ベルが歌いながら街なかを歩き、街の人が次々と紹介され(みんなで掛け合いで歌う)、傲慢なガストンも出てきます。このシーンで、一気に物語に引き込まれます。

ベルの性格

もう1つの魅力はベルの人柄です。

ベルはディズニープリンセスの1人ですが、もともとは発明家の娘で、庶民です。フレンドリーだけど、しっかりしているし、本が好きだし、夢もあるし、自分を持ったヒロインです。しかも、父親思いで、見た目が野獣の男を愛せる人間です。

たぶん誰もがベルを好きになるでしょう。このベルの性格に、声がぴったりあっています。かわいすぎない声がいいです。

脇役もいい

ベルが主役だと思いますが、野獣もかなりフィーチュアーされていて、2人とも主役と言えるかもしれません。野獣は短気ですが、ベルと暮らしているうちに、だんだんやさしい人になっていきます。 野獣の声をあてているロビー・ベンソンもうまいです。

ディズニーの童話が原作のほかのアニメ(シンデレラとか)も、しばしば、「真実の愛(true love)」の話だと言われますが、ヒロインとヒーローの両方がしっかり描かれていないと、ロマンスが感じられません。その点、この映画は両者にウエイトがかかっているので、愛の物語になっています。

たぶん、原作のストーリーがいいのだと思いますが。

ガストンもわりに出番が多く、1曲、いい歌を歌います。ガストンは、コクトーの『美女と野獣』で出てきたアヴナンから、ヒントを得た登場人物だと思います。

野獣の城は、燭台や時計、食器、家具が擬人化されていて、みなしゃべったり、歌ったりします。野獣と、物たちとの会話もおもしろいです。

実は彼らは、本当は野獣王子の家来(人間)で、魔法で物に変えられているのです。最後に人間に戻りますが、ここもちょっと感動します。

その他の見どころ、聞きどころ

ベルと野獣が踊るシーンでは、ミセス・ポット(しゃべるポット)が、タイトルソングを歌いますが、名曲です。ミセス・ポットを演じているのは、アンジェラ・ランズベリーですが、声の演技もうまいですね。

このシーンは、だんだんカメラがひいていって、広いへやで、2人だけで踊るようすがとても美しく、ロマンチックです。

よく考えると、野獣と人間が踊っているので、ロマンチックになりにくい場面ですが、ディズニーは、野獣のデザインをちょうどいいあんばいにしていると思います。

こういうところはアニメーションならではです。

はじめのほうは、野獣の城のインテリアは暗くて不気味ですが、ベルと野獣が仲良くなるにつれて、明るい雰囲気になっていきます。

アニメーションもかなりていねいに作っていると思うし、心あたたまる話だし、マジカルな雰囲気もたっぷりあるし、ホリデーシーズンに見る映画にぴったりではないでしょうか?

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