美女と野獣(ボーモン夫人)のあらすじ

赤いバラ 美女と野獣

ボーモン夫人(Marie Le prince de Beaumont)の書いた、La Belle et la Bête(美女と野獣)(1756)のあらすじを紹介します。原文はだいたい5000ワード、30ページぐらいの長さです。

短いあらすじ

長いあらすじを読みたくない人のために、先に、短いあらすじを書いておきます。

野獣のバラを盗んだ父親の代わりに、命を差し出した娘ベルが、野獣と暮らすうちに、彼のやさしさに気づき、彼と結婚することを承諾。すると野獣は、王子様に戻り、2人は幸せな結婚をする。実は王子様は魔法使いに野獣の姿に変えられていたのだ、

という話です。以下は、長めのあらすじです。

3人姉妹

あるところに、息子3人、娘3人をもつ金持ちの商人がいました。姉娘ふたりは高慢でしたが、末の娘のベルは、美しく、やさしい子でした。

商人は突然財産をなくし、田舎の家に引っ越します。ベルは朝の4時に起きて、率先して、家事をやり、あいまに読書とハープシコードの演奏をし、糸をつむぎながら歌を歌いました。

怠け者の姉たちは、そんなベルを見て「バカな子だ」とあざ笑っていました。

しかし、父親は、ベルが一番善良な娘だと思っていました。

出かける父親

田舎に引っ越して1年後のある日、父の船が港に戻ったという手紙が届き、彼は荷物を引き取りに行くことにします。

出かけるまえに、姉たちは、ドレスや肩掛けなど、こまごましたものを土産に持ってきてと父にねだりました。

「おまえも何かほしいものはないかい?」父がベルに聞くと、「バラをお願いします。このへんに咲いていないから」とベルは答えました。

ベルはバラがほしかったわけではありません。自分も頼まないと姉たちが悪く見えてしまうと思ったのです。

道に迷う父親

父親は、港で、荷物を得ることができず、前と同じくらい貧乏になります。家まであと48キロあたりの森の中で、彼は道に迷いました。おりしも、吹雪。

彼は馬から落ちたり、餓死しそうになりました。すると道の向こうに明かりが見え、近づくと大きな城のようなお屋敷です。

父親はここで泊めてもらおうとふらふら入っていきます。家の中には誰もいませんでしたが、大きな部屋にごちそうが並んでいました。

「これは神さまのしてくださったことだ」と父は感謝し、食事をすると別の部屋のベッドで眠りました。翌朝起きたら、ぬれた服は乾いていました。

バラを失敬する父親

ふと窓の外をみると、花が咲き乱れています。娘のリクエストを思い出した父は、ベルのためにバラを1輪摘みました。

すると、恐ろしい獣(けもの)が吠えながらやってきて、「命を救ってやったのに、なんという恩知らずなんだ、おまえは。私がもっとも大事にしているバラを盗むとは。命をもって弁済しろ」と言います。

父は「娘に頼まれてお花をいただきました。どうぞお助けを!」と命乞いをしました。

獣は、「娘の1人がおまえの代わりに死ぬなら許してやる。私の名は野獣( Bête )だ。娘が嫌がったら3日以内にお前がここに戻ってこい」と命じました。

野獣の城へ出向くベル

父親は娘を犠牲にするつもりはありません。ただ、最後に別れを告げたいと思ったのです。

野獣は、「手ぶらで返したりはしない。寝室にあるチェストに好きなものを詰めれば、それを送ってやる」と言いました。

家に戻ると父親は涙ながらに事情を話しました。姉たちは大泣きし、泣いていないベルを責めました。

「あんたがバラなんて頼むからこんなことになったのよ。それなのに涙一つ流さないなんて」

「泣く必要はありませんわ。お父さまは死にませんもの。私が代わりに死にます」。

兄たちは、自分たちが野獣を殺すと言いましたし、父親は自分が行くつもりでしたが、ベルの決心は固かったので、結局父とベルの2人が野獣の城に向かいました。

お城に残るベル

城には2人分のごちそうが用意してありました。食後に野獣がやってきて、ベルが自分の意志で来たと聞くと、「あなたはとてもやさしい人だ」と言い、父親に明日の朝までにここを出ていくように命じました。

その晩、ベルは父親と眠り、夢の中で「あなたの気高い行いは、かならず報われます」という女性の声を聞きます。

翌朝、父親は泣きながら帰っていきました。そのあと、ベルも泣きましたが、神に運命をゆだねる覚悟を決めて、豪華な城の中を見てまわることにしました。

『ベルの部屋( Appartement de la Belle )』と書かれたドアがあります。中はとても美しく、大きな本棚、ハープシコード、楽譜などがたくさんそろっていました。

鏡には、家に帰った父親と彼を迎える姉の様子が映ってすぐに消えました。ベルは野獣の心遣いを感じ、怖がることはないと思いました。

野獣と仲良くなるベル

夕食のとき、野獣がやってきて、同席してもいかとベルにたずねました。

「あなたがここのご主人さまですわ」

「いや違う、あなたが女主人だ」

それから野獣は、自分を醜いと思うかとベルに聞きました。うそを言わないベルは、「そう思います。でも、とても親切な方ですわ」と答えました。

その後、ベルは3ヶ月お城ですごします。毎日、ベルは野獣のいいところを一つずつ見つけていきました。

(ベルと野獣の会話がおもしろいのですが、あらすじでは省略します)

野獣は毎晩立ち去る前に、ベルに、自分はあなたをとても愛しているから、自分の妻になってくれないかとたずねましたが、ベルは、友だちでいたいと答えていました。

いったん家に帰るベル

ある日、ベルは、鏡で、父が病気になったことを知り、1週間で戻ると野獣に約束して、実家に戻りました。

野獣は、悲しそうな顔で、戻りたくなったら、指輪をはずしてテーブルに置くように言いました。

翌朝、目覚めたらベルは実家に戻っていました。父は大喜びです。野獣は、ベルのために美しいドレスや宝石を送ってくれていました。ベルは一番地味な服を着て、残りは姉にあげることにしました。

2人の姉は不幸な結婚をしていたので、ベルにはげしく嫉妬しました。2人はベルを1週間以上、実家に引き留めて、野獣を怒らせることを計画します。

姉たちが引き止めるので、ベルはもう4,5日実家にいることにしましたが、同時に、強い罪の意識を感じました。

どんなに野獣が悲しんでいることか。

実家に戻って10日目の夜、ベルは、草の中で野獣が倒れ、ベルのことを責めている夢を見ました。目覚めたあと、ベルは泣き出しました。

あんなによくしてくれた人をこんなに悲しませるなんて、私はなんてひどい人間なの。彼が醜くかったり、知性がないのは、彼のせいではないのに。

そもそも、どうして彼の結婚の申し込みを断ったの? 容姿やウィットが女性を幸せにするんじゃないわ。

人柄や善良さ、優しさがそうさせるのに。そして野獣はそういう、いいところがいっぱいあるのに。

私は彼を愛してはいないかもしれない。でも、尊敬、友情、感謝を感じている。彼を悲しませることをしたら私は一生、後悔するわ。

ベルは父に書き置きをし、指輪をテーブルの上に置くと、眠りにつきました。

野獣の変身

翌朝、ベルは野獣の城にいました。夜になっても野獣があらわれないので、ベルは、彼が死んでしまったのだろうかと、心配になり、泣きながら城中を探しました。

野獣は庭のお堀のそばで意識を失って倒れていました。心臓はまだ動いていたので、ベルはお堀の水を野獣にかけました。

「あなたは私との約束を忘れてしまった。もう会えないと思ったから、何も食べずに死のうと思ったのだ。最後にあなたに会えてうれしい」

「いいえ、あなたは死にませんわ。私の夫として生きるのです。あなたと結婚しますわ。いつまでも私はあなただけのものです。

友情しか感じていないと思ったけれど、あなたなしでは生きられないと気づきました」。

ベルが、本心を語ると、城は光かがやき、花火があがり音楽が鳴りひびきました。

驚いたことに、野獣が横たわっていた場所に、若くてハンサムな王子がいます。

実は、王子は、魔法使いに魔法をかけられていたのです。美しい女性が、彼と結婚することを承諾するまで、野獣の姿でいなくてはならなかったのです。

エピローグ

ベルは、王子の手を取り、立ち上がらせると、2人で城に歩いていきました。

ホールには父親をはじめ、家族全員がそろっていました。ベルの夢に出てきた女性が、家族を呼び寄せたのです。

「ベル、あなたは、容姿や知性より、善良さを大事にしましたね。だから、そういう徳をもった人を見つけることができました。ごほうびとして、女王になります」。

女性は言いました。さらに、2人の姉にむかってこう言いました。

「そこの2人、あなたたちの心がいかに邪悪かわかっています。2人は、彫像になり、妹の城の入り口に立っていなさい。

罪を自覚するまで、もとの姿には戻れません。永遠に彫像でいることでしょう。高慢、怒り、強欲さ、怠惰なことは直せるけれど、奇跡でも起きない限り、悪意とねたみでいっぱいの心は変わりませんからね」。

王子はベルと結婚し、いつまでも幸せに暮らしました。2人の結婚は、善良さのもとに築かれたものだったからです。

原文はこちらです⇒ La Belle et la Bête – Wikisource

美女と野獣について

伝承話がもとになっている物語で、もっとも知られているのがボーモン夫人のバージョンです。

フランスでは、まず、1710年にガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ(Gabrielle-Suzanne de Villeneuve ヴィルヌーヴ夫人)という人が書いていますが、このバージョンは、200ページ以上ある長い小説です。

ボーモン夫人はそれを短くしました。最後に、仙女が姉たちを彫像に変えるのは、ボーモン夫人版のみにあるそうです。

原文を読むと、私の印象では、ものすごいラブストーリーで(ずっと野獣の片思い)、あまり子供向けとは思えません。ボーモン夫人は、最後に、おとぎ話らしく教訓を付け加えたのだと思いますが、付け足した感があります。

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