大人のためのグリム童話 手をなくした少女(2016)の感想。

両手をあげる少女 グリム童話

グリム童話の『手なし娘』を原作にした長編アニメーション映画を見ました。原題は、La Jeune Fille sans mains(直訳:手のない若い娘)。

日本でも公開されたことがあり、邦題は、『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』です。長いタイトルですね。『手をなくした少女』だけのほうが、インパクトがあると思うのですが、配給会社は、『大人のための~』をつけたほうが客を呼べると思ったようです。

最初は、「変わった絵だこと」と思っていましたが、そのうち、物語に引き込まれました。

La Jeune Fille sans mains 予告編(2分)

作品情報

  • 監督、脚本、アニメーション:セバスチャン・ローデンバック( Sébastien Laudenbach )。セバスチャン・ローデンバックはフランスのアニメーターで、彼が1人ですべての絵を描いたそうです。
  • 制作:フランス
  • 言語:フランス語
  • 原作:グリム兄弟の『手なし娘』
  • 声の出演:アナイス・ドゥムスティエ(少女)、ジェレミー・エルカイム(王子さま)。2人とも役に合った声だと思います。
  • 長さ:76分
  • 公開:2016年12月14日
  • アヌシー国際アニメーション映画フェスティバルで審査員賞を受賞

あらすじ

川が枯れて水車がまわらず、すっかり食い詰めた粉挽き屋は、ある男に、「家の裏にあるものと交換に金持ちにしてやる」というオファーを持ちかけられる。

家の裏にあるのはりんごの木で、「りんごの木がなくなったら、食べるものが本当になくなる」と粉挽き屋はちゅうちょするが、男は、金持ちになったら、りんごの木なんてなくても問題ないという。結局、父親はこのオファーを受けるが、実は男は悪魔で、彼がほしいのは、たまたま家の裏にいた、粉挽き屋の娘だった。

しかし、娘は清らかすぎて、悪魔には近づけない。からだを洗うのをやめさせても、手はきれいなままなので、悪魔は父親に娘の手を切り落とすよう命じる。すでにぜいたくな暮らしに慣れていた父は、言われるまま娘の手を切り落とす。

しかし、手を切り落としても、やはり悪魔は娘に近づけない。悪魔はいったん引き下がる。その後、娘は家を出て、放浪したのち、王子の庭の梨を食べる。その姿を王子が見そめて、2人は結婚する。王子は、妻(手なし娘)、金の手を作ってやった。

しばらく幸せで平和な日々だったが、戦争が始まり、王子は、庭師(男)に、妻と生まれてくる子供のことを頼み、戦争に出かけていく。

アウトラインは、原作とほぼ同じです。

原作と大きく違うところ

原作では、娘は天使(つまり神さま)に守られていますが、このアニメは、キリスト教的なニュアンスはありません。

この娘は、自然と一体化した存在であり、自然が娘を守ってくれます。王子の庭の前には、川があって通れませんが、川の底まで娘が落ちたとき、その川の神さま(巨大な女神)に助けられ、手のひらにのせられて、庭まで運んでもらえます。

戦地にいる王子が、庭師に「妻と子供を殺し、子供の目の玉を取っておけ」という手紙 (実は、悪魔が書いてすり替えたもの) を送ったとき、庭師が娘を逃し、その後、娘は放浪しますが、山の奥のほうに家があると教えてくれるのも、川の女神です。

この娘は、かなりの野生児で、裸になって川に入ったり、そこらを転げ回ったり、手のない手で、土にがしがし穴をあけ、庭師のくれた魔法の種を埋めたりします。

種(たね)は、口を使って運びます。

とても躍動感のあるアニメーションで、娘の野生児ぶりがきわだちます。

印象的な効果音

セリフはあまり多くなく、BGMもそんなになく、水の音などの効果音が、耳に残ります。どの効果音(たいてい自然の音)もとても鮮烈です。

たぶん、絵がシンプルで、情報量が少ないから、効果音のほうを、脳がキャッチするのだと思います。以前、無声映画の『ブランカニエベス』を見たとき、セリフがないと、映像や音を堪能できると思いましたが、

このアニメーションは、絵がスカスカで、視覚的情報が少ないので、より音や物語を楽しめる気がします。スカスカといっても、ポイントは押さえてあり、何が起こっているのか、娘が何を考えているのか、そういうことはちゃんとわかります。

こんなシンプルな絵で、物語を語ってしまうなんて、すごいですね。雪の降るシーンなど、いくつかとても美しい場面もあります。娘の手が切り落とされたときは、(たぶん実写以上に)、「痛っ!」と思いました。

日本市場向けの予告編(2分16秒)

日本語字幕の入った予告編です。

上の予告編で、 「クリプトキノグラフィー(暗号描画)」 という言葉がでてきますが、これは、 セバスチャン・ローデンバック独自のアニメーションの手法だそうです。どうやっているのかは、まったく想像つきませんが。

墨絵っぽい雰囲気もあり東洋ふうでもありますね。

予告編をよく見ているとわかりますが、娘の手がはえてくるタイミングは、最後の最後、王子がようやく娘を探し当てたときです。

娘は、王子は、自分と息子を殺しにきたと思っているので、王子に押し倒されたとき、とっさに王子の斧を奪い、彼に襲いかかるそのタイミングで手がはえます。そして、息子が、「ママン、手がある!」というのです。

このあと、和解して、王子は、城に戻ろうといいますが、娘は、城には戻らないし、ここも引き払う、新しい場所であなたと息子と暮らすといって、赤い紙切れみたいなものになり、王子のまわりをぐるぐるまわります。

野生児なので、自由を求めるのです。手を切られるのは悲惨ですが、結局は、はえてくるし、現代的な強いおひめさまと言えましょう。

童話好き、ちょっと変わったアニメが好きな方には、おすすめの映画です。

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