ヨリンデとヨリンゲル(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

赤いゼラニウム グリム童話

グリム童話から、『ヨリンデとヨリンゲル』という物語のあらすじを紹介します。原題は、Jorinde und Joringel、英語のタイトルは、Jorinde and Joringel または Jorinda and Jorindel(ジョリンダとジョリンデル)です。

ともに人の名前でヨリンデは女の子、ヨリンゲルは男の子です。

超簡単な要約

忙しい人向け1行サマリー:結婚を誓いあった少女ヨリンデが、魔女に鳥に変えられ鳥かごに閉じ込められているのを、少年ヨリンデルが、森で見つけた赤い花を使って助ける話。

変わった趣味を持つ魔女

昔、広くて深い森の中に、古い城があり、年老いた魔女が1人で住んでいました。魔女は猫やふくろうに姿を変えることができますが、夜になると、いつも魔女に戻っていました。

その城から100歩以内のところに男性が近づくと、身体がフリーズして動けなくなり、魔女がのろいをとくまでそのままです。若い娘(生娘)が近づくと、魔女はその娘を鳥に変え、鳥かごに閉じ込めました。

そうやって集めた鳥の入った鳥かごを魔女は7000ほど持っていました。

ヨリンデとヨリンゲルのカップル

さて、どの女の子よりもきれいなヨリンデという少女がいて、ヨリンゲルというハンサムな少年と結婚を誓い合っていました。

いま、婚約中で毎日楽しい日々をすごしていた2人は、あるとき、森に散歩に行きました。

ヨリンゲル:「ヨリンデ、城に近づきすぎないように気をつけてね」。

美しい夕べでしたが、次第に、2人はみょうに悲しくなり、ヨリンデは涙をこぼしました。

ふと気づくと2人はすっかり道に迷っています。太陽は半分ほど沈んだところで、 ヨリンゲルはすぐそばに城壁があることに気づき、ぞっとしました。

鳥に変わってしまうヨリンデ

ヨリンデは歌を歌いはじめました。

♪わたしの小さな小鳥さんが、赤いネックレスをして
悲しい歌を歌うのよ
もうすぐ鳩が死んでしまうって
悲しく歌うのよ、ジュグ、ジュグ、ジュグ♪

ふと見ると、ヨリンデはナイチンゲールに変わっていて、ジュグ、ジュグと歌い続けます。その鳥を、ホーホーホーと言いながら、ふくろうが追いかけています。

ヨリンゲルは石のように動けなくなり、太陽は完全に沈みました。ふくろうは大きな赤い目とかぎ鼻を持つ年老いた女に変わり、元ヨリンデのナイチンゲールを両手でつかまえました。

しばらくすると老女が戻ってきて、ヨリンゲルを自由にしました。ヨリンゲルは泣きながらひざまづいて、老女に、ヨリンデを返してくれるよう頼みましたが、老女は、「おまえは2度とヨリンデに会えない!」と言って、向こうへ行ってしまいました。

羊飼いに精を出すヨリンゲル

ヨリンゲルは見知らぬ村に行き、長いこと羊飼いをしました。よく、城のそばを歩いていましたが、近づくことはできません。

ある晩、彼は、夜、真ん中に真珠のついた真っ赤な花を見つけ、城に行く夢を見ました。

その花でさわったものは、皆呪いがとけ、ヨリンデも取り戻せる夢です。

翌朝、彼は、丘に、その花を探しに行きました。8日間は徒労に終わりましたが、9日目にまんなかに、まるで大きな真珠のような露がのっている赤い花を発見しました。

ヨリンデを助けだす

ヨリンゲルがその花を持って、城へ行くと、100歩以内に入っても固まることはなく、ドアまで行き着きました。

花でさわると、ドアはばーんと開き、彼は中庭にでました。耳をすませたら、鳥の声がきこえ、彼はとうとう、それぞれ鳥が入っている7000個の鳥かごがある部屋を見つけました。

魔女はヨリンゲルを見て、すごい形相で怒り、彼に毒や胆汁を吐きましたが、ヨリンゲルに近づくことができません。

ヨリンゲルは元ヨリンデの鳥を探そうとしましたが、たくさんあってわかりません。しかしそのとき、魔女が、1つの鳥かごをもって、こっそり、出ていこうとしたので、ヨリンゲルは急いで、その鳥かごと魔女を花でタッチしました。

これでもう魔女には魔力がありません。

ヨリンデは人間の姿にもどって、ヨリンゲルの前に立つと、すぐに、彼の首に両手を回し、抱きつきました。ほかの鳥かごに入っていた鳥たちも、若い娘にもどりました。

ヨリンゲルはヨリンデと家に戻り、その後、2人は幸せに暮らしました。

参考にした原文⇒ Jorinda and Joringel

青春の輝きと喪失

この話は時間の流れをテーマにしていると思います。

時の流れを止めたい魔女

年老いた魔女が、若い娘をナイチンゲールに変えて、大量に集めていたのは、娘の成長を止めたいからではないでしょうか?

あるいは娘たちの若さを手元に置いて、自分も若い気分でいたいのでしょう。

つまり、この魔女は時間の流れを止めたいのです。なぜなら、これ以上、年を取って醜くなりたくないから。

子供から大人になる2人

原文にはヨリンデとヨリンゲルの年齢は書かれていませんが、中世の婚約中の2人なら、たぶんまだ少年少女なので、2人とも15歳前後だと思います。

たいていの恋人同士は、婚約中は楽しいものです。相手のことが大好きだし、大好きな人とこれから一緒にいられると思うと、うれしさでいっぱいでしょう。ましてやこの2人はまだ子供です。

しかし、結婚したらあれこれ生活に追われるので、もう、のほほんと楽しんでいるわけにはいきません。

2人は本能的にそのことを知っているので、森で太陽が次第に沈んでいったとき、とても悲しい気持ちになったのです。

労働と自然は人間の味方

ヨリンデを取られてしまい、絶望したヨリンゲルは、知らない場所に行って羊飼いをします。

グリム童話にはよく労働の話が出てきますが、労働することは、美徳であり、人間を助けることでもあります。

羊飼いをしながらも、ヨリンゲルはヨリンデのことを忘れたことはなかったでしょう。そして、ある晩、夢のお告げを得ます。

そして、夢に出てきた赤い花を自然の中に探しにいきます。この花は、彼の愛や情熱の象徴でしょう。

自分の愛でヨリンデを助けたヨリンゲルは、もう少年ではなく、責任ある大人に一歩近づいたと言えます。

ヨリンデのほうの成長はありませんが、物語の半分ほど、ナイチンゲールになっていたので、成長するチャンスがありませんでした。

彼女は、ヨリンゲルと結婚してからいやでも成長するでしょう。

ナイチンゲールが出てくるほかのお話:

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