踊る12人のおひめさま(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

ダンス用の靴 グリム童話

グリム童話から、『踊る12人のおひめさま』のあらすじを紹介します。毎晩、ダンスをして靴をぼろぼろにするおひめさまの登場する話です。

超簡単な要約

忙しい人用1行のサマリー:ある兵士が、夜な夜な、どこかで踊っている12人のおひめさまの行き先をつきとめて、12人のうちの1人と結婚し、王様になる未来を約束される話。

12人のおひめさま

昔、あるところに、美しい12人の娘をもつ王さまがいました。娘たちは、1つの部屋に、ベッドを12個置き、寝ていました。夜になると王さまはその部屋に外から鍵をかけました。

しかし、翌朝、王さまがドアを開けると、おひめさま全員の靴はダンスをしたせいでボロボロになっています。それが毎晩続きました。

おひめさまたちが、夜、どこへ出かけて、誰と踊っているのか、不思議に思った王さまは、「娘たちの行き先を突き止めた者には、どれか1人を妻にめとらせ、自分が死んだあと王さまにしてやる、 しかし、3日かかっても突き止められない者は殺す 」というおふれを出しました。

どんどん殺される王子さまたち

ある王子が、自分が居場所を突き止める、と申し出ました。王さまは、彼に、おひめさまたちの隣の部屋をあてがいました。そうすれば、番をできるからです。しかし、この王子は夜になるとすごく眠くなって寝てしまい、行き先を突き止められないまま3日たち、4日目に殺されました。

あいかわらず、おひめさまたちの靴の消耗は続いています。

他にも何人も、自分が見つけますと、王子たちが申し出ましたが、みな失敗し殺されました。

兵士がやってくる

ちょっと離れたところに、貧しい兵士がいました。彼はけがのため、もう軍隊で働けません。兵士は、王さまの住む街に行くことにしました。途中で老婆に会います。

「どこへ、お行きになさるんじゃ?」

「おひめさまたちが、どこで、靴がボロボロになるまで踊っているのか見つけ、国王になりたいと思っています」。

「それはわりと簡単じゃ。夕方、おひめさまたちが差し出すワインを飲まないことじゃ。それと、このマントを持っていきなされ。これを着ると姿が見えなくなるんじゃ。そうすれば、12人のあとをついていける」

兵士は、老婆のアドバイスと贈り物をありがたく受け取り、いさんで王さまのもとに出向きました。

寝たふりをする兵士

王さまは兵士をこころよく迎え、これまでの男たちにしたように、姫の部屋のとなりの部屋に案内しました。夜になると、長女がワインを入れたゴブレットをもってきました。

兵士は、ワインを口にふくみ、すべてあごの下にひそませたスポンジに吸い取らせました。それから、ベッドに横になり、いびきをかいて寝ているふりをしました。

いびきをきいた長女は、「ほほほ、彼も命を失うしかないわね」と言い、服を着替えてダンスに行く準備をしました。末の娘は、「なんだかいやな予感がするわ」と言いましたが、長女は、「ばかね、あんた。これまでいったい、何人の王子が死んでいったか、忘れたの? 彼は絶対起きないわよ」とたしなめました。

おひめさまたちの行き先

美しいドレスに着替えて準備が整ったおひめさまたちは、まず兵士の様子をチェックし、それから、長女が自分のベッドをたたきました。すると、床下のドアがあき、みなは、階段をおりていきます。こっそり起き出した兵士も老婆にもらったマントを着て、ついていきました。

一度、兵士は、末娘のドレスのすそをふんでしまい、おびえた末娘が、「誰なの? 私のドレスのすそをひっぱるのは?」と言いましたが、長女は、「ばかね、自分でそのへんにひっかけたんでしょ」と言うだけです。

階段を下ると、美しい広間に出ました。銀色の葉をつけた木々が両側にたっています。証拠の品にしようと、 兵士が枝を1本おると、大きな音がしました。

末娘は、「何、いまの音?」とまたおびえましたが、長女は、「私たちを歓迎している音よ」と言います。

さらに歩くと、今度は、金の葉の木、最後はダイヤモンドの葉の木があらわれました。兵士はそのたびに、枝を下り、音をたて、末娘はおびえましたが、長女は相手にしません。

12人の王子様

しばらくいくと、大きな湖があり、12人の王子がそれぞれボートで、おひめさまたちを迎えに来ていました。兵士は、末の娘のボートに乗りました。「きょうはやけに重いなあ」、ボートをこぎながら、そう王子さまが言うと、「きっときょうは暖かいからよ。暑いくらいだわ」とおひめさまは答えました。

向こう岸には、美しいお城があり、きらきらした部屋で、楽隊が楽しい音楽を奏でていました。おひめさまたちは王子さまたちと楽しく踊ります。透明人間状態の兵士も、一緒に踊り、長女が差し出したワインを飲み干しました。

ゴブレットが宙に浮き、からになっていくのを見た末娘は、またもおびえましたが、長女は、「おだまり」、と相手にしません。兵士は、このグラスも、証拠品として持ち帰ることにしました。

午前3時、靴がぼろぼろになったところで、おひめさまたちは、踊りをやめ、来た時と同じようにボートで送ってもらい、「明日もまた来る」と約束して、階段へ向かいました。

兵士は、急いで階段をかけあがり、おひめさまたちより先に自分の部屋へ行き、大いびきをかいて寝ているふりをしました。

これを聞いて安心したおひめさまたちは、着替えてベッドに入りました。

2日目、3日目も、同じことが続きました。

ハッピーエンド(兵士にとっての)

兵士が王さまに答えを言う日が来ました。兵士は、「おひめさまたちは、地下にあるお城で、12人の王子と踊っています」と言い、証拠の品を王さまに見せました。

王さまが、娘たちに、それは本当かとたずねると、否定しても無駄だと思ったおひめさまたちは、そのとおりだと認めました。

王さまが、どの娘と結婚したいか兵士に聞くと、兵士は、「自分はそんなに若くないので、一番上のお嬢さまをください」と答えました。

その日のうちに、結婚式が行われ、王さまの死後、この王国は兵士のものになると決まりました。おひめさまたちと踊った王子さまたちは、踊った日数分だけ、呪いをかけられました。

原文(英語)はこちら⇒ Grimm 133: The Shoes That Were Danced to Pieces

教訓:娘を人間として扱うべき

この話、ミステリアスでおもしろいのですが、最後はあっけないですね。

いろいろな読み解き方がありますが、一番のメッセージ(教訓)は、年頃の娘を部屋に閉じ込めてはいけない、ということだと思います。

あるいは、子供扱いせず、自由にさせるべきだ、とも言えます。

このおひめさまたち、王さまに人間扱いされていません。12人、まとめて同じ部屋に入れられて、毎晩、外から鍵をかけられています。

ふつう、どこで踊っているのか知りたいなら、まずは本人に問いただしますよね? でも、この王さまは、おひめさまたちには何も聞いていないようです。

おまけに王さまは、娘の行き先を突き止めた者には、好きな娘を妻にめとらす、なんて勝手なおふれを出します。

いくら王族の姫君が、自由結婚できないからといって、本人の意志を無視しすぎです。

12人のおひめさまの年齢がわかりませんが、全員年子だったとすると、一番上と一番下のあいだは12歳開きがあるから、長女はもうかなりいい年です。

6つ子が年子で生まれた可能性もありますが。

王さまが自分の娘たちを1人の人間として信頼しなかったせいで、何人もの王子さまが殺される結果になりました。この王さまには反省してもらいたいですね。

なぞの地下の世界

おひめさまたちの部屋から地下におりていき、しばらく歩くとダンスができる宮殿があるなんて、まるでSFですね。

まあ、もともと童話は、マジカルな世界と、不思議な生き者が出てくる話なので、すべてSF、またはファンタジーですが、この童話はとくに、SF度が高いです。

おひめさまたちと踊っていた王子さまは、いつも地下に住んでいるってことなんでしょうか? おひめさまはいつ、地下にお城があると気づいたのでしょうか?

行動を束縛されていることに不満をいだいた長女が、頭にきて、ベッドの足をけった拍子に、床のドアがぎぎーっと開いて、見つけたのかもしれません。

やはり、諸悪の根源は王さまと言えそうです。

兵士が眠り薬の入ったワインを飲まずにすんだからくりですが、原文では、あご(chin)の下にスポンジをむすびつけていたとあります。

そんなことしたら、おひめさまに見破られるはずなので、舌の下にスポンジをひそませていた、としているアニメもあります。

しかし、それもかなり難しい芸当です。

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