グリム童話版、シンデレラのあらすじの続きです。
うまく王子さまをまいたシンデレラ
王子さまは、シンデレラの父親が帰ってくるのを待ちました。父親が戻ると、「見知らぬ少女が逃げて、この梨の木に登ったと思うのです」、こう王子さまは言いました。
「それは、シンデレラなのだろうか?」
父親は、おのでその木を切り倒しましたが、誰もいません。台所に行くと、シンデレラがいつものよう灰の中に横たわっていました。
シンデレラは木の反対側から飛び降りて、ドレスをハシバミの木にいる鳥に返し、いつもの灰色の服を着たのです。
わなを仕掛ける王子さま
3日目も、両親と姉たちがお祭りに出かけると、シンデレラはまた母親の墓に行き、前と同じように金と銀を落としてくれるように頼みました。
すると鳥は、これまで以上に美しいドレスと、黄金の靴を運んできました。ドレスを着て祭りにでかけたら、シンデレラの美しさに、みな、言葉を失いました。
王子さまはシンデレラとだけ踊りました。
夜になって、シンデレラが家に帰ろうとすると、王子さまは今度こそ一緒に行こうとしましたが、またもや、シンデレラはすばやく逃げました。しかし、今回は、王子さまは罠をしかけていました。階段すべてにタール(pitch ねとねとしたもの)を塗りつけていたのです。
シンデレラが階段を駆け下りるとき、左足の靴がタールにひっかかって脱げました。王子さまはその靴を拾い上げました。それは小さくてきゃしゃな黄金の靴でした。
つま先を切り落とす上の姉
翌朝、王子さまは、靴を持って、王さまのところに行くと、「この黄金の靴がぴったり合う人と結婚します」と言いました。
これを聞いたまま姉たちは喜びました。2人とも小さな足をしていたからです。まず、上の姉が靴をはいみたら、つま先が大きすぎて入りませんでした。
母親は、「つま先を切り落としなさい。女王になったら歩く必要はなくなるのだから」と言って娘にナイフを渡しました。
娘はつま先を切り落とし、無理やり足を靴に押し込み、痛みをこらえて、王子さまのもとに行きました。王子さまは、この娘を花嫁として馬にのせ、出発しましたが、墓の横を通り過ぎるとき、ハシバミの木にいた2匹の鳩が、「靴に血がついている。靴が小さすぎる。この人は花嫁じゃない」とさえずりました。
かかとを切り落とす下の姉
王子さまが、娘の足元を見ると、血が流れています。王子さまは娘の家に引き返すと、「この娘ではない、べつの娘に靴を試してもらいたい」と言いました。
下の姉は、つま先は入りましたが、かかとが大きすぎて入りません。母親は、「かかとを切りなさい。女王になったら歩く必要はなくなるのだから」と言って、娘にナイフを渡しました。
娘はかかとを切り落とし、靴に足を入れ、痛みをこらえて王子さまのところに行きました。王子は、この娘を花嫁として馬に乗せ、出発しました。しかし、墓の横を通るとき、ハシバミの木にいた2匹の鳩がさえずりました。「靴に血がついている。靴が小さすぎる。この人は花嫁じゃない」。
王子さまが娘の足元を見ると、血が流れ、白いストッキングが真っ赤に染まっていました。そこで、彼は再び娘の家に戻りました。
☆もとの童話はこちらを参照しています⇒ ⇒ Grimm 021: Cinderella
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グリム版のシンデレラの性格
シャルル・ペローのシンデレラ、そしてそれを原作としている、ディズニー・アニメ(1950)のシンデレラは、とてもやさしく、働き者ではあるものの、どちらかというと、おとなしく受動的なヒロインとして描かれています。
しかし、グリムのシンデレラは、もっと行動的です。魔法使いから、ある意味、一方的にドレスや靴をあてがわれたディズニーのシンデレラとは違い、グリムのシンデレラは、母親の墓に生えているハシバミの木に、服を出してくれるよう頼みます。
そして、この木は、もともとシンデレラが父親にねだったものでした。
さらに、お祭りに3回行き、3回とも、王子さまを振り切って、うまく家に帰り着いています。会場から、走って家に戻り、初日は鳩小屋に飛び込み、翌日は梨の木に登ります。
このとき、木に出してもらったきれいなドレスと靴姿のはずなので、なかなかの運動神経です。
昔のシンデレラはもっと知恵があった
機転がきいて行動的なシンデレラは、ほかのシンデレラ話でも見られます。
ヨーロッパでは、一番古いシンデレラの話だとされている、1634年のイタリア産、「キャット・シンデレラ」という話に出てくるシンデレラは、なんと、物語冒頭で、彼女をいじめる継母を殺しています。これは、仲のよかった家庭教師のアイデアですが、実行犯はシンデレラです。
次にこのシンデレラは、父親をピンでさして、家庭教師と結婚することを承諾させます。この家庭教師は先生時代はとてもいい人でしたが、父親と結婚すると、いじわるな継母になり、ここからは、だいたいいつものシンデレラ話の展開となります。
このように、昔のシンデレラは、それなりに知恵がありましたが、時代が経るに従って、美しく、とてもやさしい性格という美徳はあるものの、あまり行動力はない女性となっていきました。
シンデレラが、最後に王子さまと幸せになれるのは、その美貌、やさしさ、そして幸運のせいである、というのが現代の見方です。
だからこそ、1981年に、「女性は潜在的に自立を恐れる気持ち、他人に依存する願望があり、これはシンデレラ・コンプレックスです」と書かれた本(Cinderella complex)が話題になったのでしょう。
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「キャット・シンデレラ」は、灰のそばで猫のように丸くなっているから、キャット・シンデレラです。このシンデレラの本名は、ゼゾーラで、先日紹介した「ジェーン・バーキン in シンデレラ」のシンデレラの名前が、ゼゾーラでした。
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