アシェンプテル(2011)の感想。

野原 グリム童話

2011年12月25日にドイツで放映されたテレビ映画、Aschenputtel(アシェンプテル)をフランス語の吹替えで見たので感想を書きます。 アシェンプテル はドイツ語でシンデレラのことです。

これまで、見たシンデレラの実写で、一番好きになれない作品でした。たぶん、私の感性に合わないのでしょう。予告編がないので、制作現場でキャストがインタビューを受けているクリップを紹介します。ドイツ語です。

アシェンプテル、制作の様子

お城の外回りでする場面の撮影現場のようです。35秒あたりからしゃべっているのが、シンデレラ役の人です。なぜ、この映画を好きになれなかったのか、その理由を書きます。

ミスキャスト

シンデレラ役の女優は、美人ではありますが、どちらかというと個性派だと思います。この映画のシンデレラは、活発なので、野性味のある人をキャスティングしたのかもしれませんが、私のシンデレラのイメージには合いません。

中央がシンデレラ

シンデレラと同じ年頃の使用人の女性がいて、わりとセリフもありますが、この女優のほうが、主役を演じた人より私のシンデレラのイメージに合っています。

シンデレラよりかわいい召使い

王子さまは、ちょっとUKのヘンリー王子に雰囲気が似た人ですが、まったく昔の人に見えません。

右側が王子さま

奇をてらいすぎた出会いその1

シンデレラと王子は、きのう紹介した「シンデレラ・魔法の木の実」と似ていて、舞踏会より先に、森で2回会います。それはいいのですが、出会い場面が、とてもわざとらしいです。

シンデレラは、継母に命じられ、街で売るために、子豚を5匹入れた箱(輪っかつき)をロバに引かせて森に行きます。人の気配がしたので、「誰かいるのかな?」と突っ立っているシンデレラの横を、王子を乗せた馬が、ヒューッと走り去ります。

とっさに、馬をよけたシンデレラは足を踏み外し、泥沼(浅い)に真正面から倒れ込み、全身泥まみれになります。

顔も泥まみれで、ここはホラー映画のようです。シンデレラが倒れた衝撃で、ロバが前進し、子豚を入れた箱が倒れて、子豚が逃げます。

王子がやってきて、「そんなところにいるとは気づかなかった」と言いますが、王子は狩りをしていたのですから、前方に何があるかぐらい見てなくてどうする? と思ってしまいます。

このとき、シンデレラは、王子のことをただの狩人だと思っています。

「何か手伝おうか」と言う王子の手を、シンデレラはぐいっと引っ張って、泥沼にわざと落とし、王子も泥まみれになります。

シンデレラはやさしい女性のはずなのに、なんということをするのでしょうか?

このあと、泥にまみれた2人は、逃げる子豚をつかまえようとそこら中を走りまわり、ときには転んで、さらに汚れていきます。

奇をてらいすぎた出会いその2

ロバの背中に小麦粉を入れた袋を乗せてシンデレラが森を歩いていたとき、狩りをしている王子さまを見つけます。

シンデレラは後ろから、こっそり王子さまの様子を観察します。このとき、シンデレラは、うっかり、小麦粉の袋の口を結んでいたひもをひっぱってしまいます。

袋から小麦粉が 、ドサッと出て、シンデレラに頭からふりかかります。その拍子に、シンデレラは足を踏み外し、傾斜をごろごろとものすごい勢いで下に転がって行き、全身まっしろになって、王子さまの足元で止まります。

シンデレラの髪も顔も服もまっしろで、まるで、 志村けんのバカ殿様のようです。

こんなにまでして派手な出会いにする必要があるのでしょうか? それにこの時代(いつの時代か今ひとつわかりませんが)、こんなにまっしろな小麦粉を作ることができたのでしょうか?

どうやら、1回目は黒く、2回めは白くしたかっようです。というのも、舞踏会で王子が、「前に会ったことあるよね?」と聞くと、『シンデレラ・魔法の木の実』のシンデレラと同じように、このシンデレラも、「前に2度会ってるわ、1回目は黒くて、2回めは白よ」と謎をかけるのです。

その他ひっかかるところ

このほか、気に入らない点がいくつかあります。たとえば、シンデレラのドレス。この映画は、グリム童話のシンデレラが原作ですが、なぜ、金か銀のドレスにしなかったのでしょうか?

舞踏会のほかのゲストと比べても、あまりぱっとしないカントリースタイルのドレスです。しかも、靴は、2足6000円で売っていそうな赤い靴。

さらに舞踏会で踊るのは、最初はラジオ体操みたいに、上を手にあげる不思議な振り付けの踊り。そのうち、だんだん、カントリーダンスというのか、テンポの速い曲になって、みんなで輪になって元気に踊り、お城の舞踏会というより、村の収穫のお祝いダンスふうです。

それなのに、王子は、シンデレラに、「きみは、とっても優雅にステップを踏むね」などと言うのです。

舞踏会でシンデレラが王子と踊っているのを見つけた継母とまま姉は、シンデレラを無理やり外に引きずり出します。まま姉はシンデレラを、池にどんと突き落とすので、シンデレラはびしょぬれになります。

泥や小麦粉にまみれ、池に突き落とされ、もしかしたら、落ちるところはスタントの人が演じているのかもしれませんが、体を張って演じているわりには、あまりいい結果に結びついていません。

継母が、シンデレラにヒステリックに怒鳴るのも好きになれなかったし、シンデレラが首に筋を作って、継母に怒鳴り返すのも、「いや、シンデレラって、そういう性格じゃないでしょ?」と思いました。

自然や鳩が美しかったのはよかったです。時間が1時間と短いのもいいところです。

というわけで、あまりおすすめの映画ではありませんが、人の趣味はいろいろなので、こういうシンデレラが好きな人もいると思います。

それにしても、ドイツでは、2010年のクリスマス用に、シンデレラのテレビ映画を作っているのに、翌年、またシンデレラをやるなんて、ほかに題材はないのでしょうか?

2010年のシンデレラは、私の好きな作品です。

コメント

  1. masausa より:

    このシンデレラ、野性的といえば聞こえはいいけど、あまりにも品性にかけているような…?
    シンデレラはワケあって灰まるけになっているだけで、そもそも誰よりも王妃にふさわしい品のいいお嬢さんなわけで、森の中でお腹が空いているとはいえ、パンにあんなかぶりつき方をするのはどうかと思いました。走ったり乗馬したり、活発なのは好ましいですが、まるで野獣のような喰らい方にはかなり違和感を感じました。
    それにしてもシンデレラというキャラクタ一人に対しても制作者によってこんなにイメージが違っているのは本当に面白いですね。

    • pen より:

      パンに食らいついていましたね。あのシーンは、食べものをもらえないから、飢えていることを表現したかったのでしょうか?

      そのわりには、あのシンデレラ、元気ですけど。本当のシンデレラはあんな食べ方しないですね。

      「シンデレラ物語」のサンドリヨンは、自分がおなかすいていても、いつも動物に分け与えるやさしい女の子です。

      そうですね。いろいろなシンデレラがいておもしろいですね。最近、シンデレラの映画ばかり見ているけど、意外に飽きません。

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