Tangled (塔の上のラプンツェル)の感想。

丘の上の塔 グリム童話

グリム童話の『ラプンツェル(髪長姫)』が原作のディズニーのアニメーション映画、Tangledを見ましたので、感想を書きます。

とてもいい作品です。

放題は、『塔の上のラプンツェル』となっています。塔の上のほうで育ったラプンツェルということなんでしょう。

原作の、tangled は、「もつれた」という意味で、髪がもつれたと、というときに使われる単語です。髪のもつれに、運命や状況のもつれをひっかけたのだと思います。

なお、主役のRapunzelの英語の発音をカタカナ書きすると、ルパンゾなので、この記事では、ルパンゾと呼びます。

Tangled・予告編

2分

作品情報

公開:2010年
監督:バイロン・ハワード、ネイサン・グレノ
脚本:ダン・フォーゲルマン
声の出演:マンディ・ムーア(ルパンゾ)、ザッカリー・リーヴァイ(フリン・ライダー、本名ユージーン)
原作:ラプンツェル(女の子が塔の中に閉じ込められ、魔女ゴーテルに育てられるという設定を借りているだけで、話そのものは全然違います)。

ラプンツェル(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

その他:ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編アニメ、50作目。
はじめてCGで作ったプリンセスのお話。

このアニメは、制作総指揮をした、グレン・キーン(アニメーター)の企画で、彼は、ジャン・オノレ・フラゴナールの絵、『ぶらんこ』のイメージをベースに作ったそうで、CGだけど、全体的にやわらかいトーンの絵です。

Les Hasards:Jean-Honoré Fragonard(1767)

ここで紹介した予告編だとわかりにくいのですが、絵がとてもかわいくて、童話の世界観がよく出ています。

あらすじ(ネタバレなし)

黄金の花

昔むかし、ある王国に、太陽の涙が落ちて、黄金の花が咲きます。

この花は、人の病気を治したり、若返らせたりするパワーがあり、魔女のゴーテルは、ときどき花のそばに行って、若返っていました。

一方、王国の女王が難産で、このままでは命が危なくなり、王様の命令で、家来が黄金の花を見つけ、持ち帰ります。

その花のエキスがとけた水を飲んだ女王は、元気になって無事に女の子を生みました。

この子がルパンゾで、たぶん生後すぐだと思いますが、すでに金髪がふさふさはえていました。

誘拐

花を取られてしまったゴーテルは仕方がないので、お城に出向いて、ルパンゾの髪を一房持ち帰ろうとしましたが、髪を切ったら、切った髪も、根本も茶色になり、明らかにパワーがなくなっているので、ゴーテルは赤ん坊ごと、黄金の花のパワーを盗みます。

かくしてルパンゾは、ゴーテルに、森の奥のほうにある塔の中に閉じ込められ、そこで育ちます。

ゴーテル自身はこの塔の中には住んでいないらしく、若返りたいときに、塔の下に立って、「ルパンゾ、ルパンゾ、髪をおろしておくれ」と言って、彼女の髪で塔の中に入ります。

そして、ルパンゾに歌をうたわせて、光った髪をさわって若返る、ということを定期的にしていました。

このパワーを失いたくないゴーテルは、ルパンゾが外に出ることを禁止しています。

ゴーテルは、「外には、悪い人や、自分勝手な人がたくさんいて、危険だから」と言っていますが、それはそっくりそのまま自分のことです。

ルパンゾは、ゴーテルが自分の母親だと思っているので、素直に言うことを聞いています。

18歳の誕生日

明日が18歳の誕生日という時、ルパンゾはゴーテルに「外に出たい」と言います。

実は、王国の王様と女王様は、さらわれた娘が、どこにいても、自分たちがお城で帰りを待っていると知らせるため、毎年、誕生日に、たくさんの提灯を空にあげていました。

ルパンゾは、遠くからいつもこの提灯を見ていて、自分の誕生日にあがる無数の灯りの美しさに感動し、絵まで描いていました(ルパンゾは絵がうまい)。

だから、大人になる18歳の誕生日は、そばでこの提灯があがるのを見たいと思ったのです。

ゴーテルは、ルパンゾのリクエストを無視します。ルパンゾは、「じゃあ、絵を描くために白い絵の具を取ってきて」と言います。この絵の具は、遠くのほうにある植物が材料なので、ゴーテルは3日ほど家を留守にします。

ゴーテルの留守中、追っ手に追われた盗賊のフリン・ライダー(本名はユージーン)が、ルパンゾのいる塔の中に入ってきます(予告編はこのシーン)。

ルパンゾは、彼に提灯があがる場所まで連れて行ってほしい、と頼み、彼が承諾したので、はじめて塔の外に出るのです。

では、ここからは多少ネタバレにつながる部分がありますので、これから見る人は読まないでください。

見どころ(ここからネタバレあり)

わかりやすいストーリー

この前に見たのが、Frozen IIで、バックストーリーがわかりにくいため、頭が疲れた私にとって、この映画のストーリーはとてもわかりやすく、すんなり入っていけました。

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リラックスしたいときに楽しめる映画です。

ルパンゾが塔に閉じ込められる理由は、最初にフリン・ライダーがわかりやすく説明するので、すぐに物語の背景がわかります。

単にわかりやすいだけでなく、クライマックスまで、うまく展開します。

最後は、ルパンゾとフリンがお互いに自己犠牲をいといません。死にそうになったフリンは、ルパンゾの涙で助かります。

ルパンゾは、黄金の花の化身だし、この花は、そもそも太陽の涙が落ちてできたものだから、その涙にパワーがあるのも納得できます。

なお、原作でも、失明した王子にラプンツェルの涙が落ちると、王子の目がまた見えるようになるので、ここは原作どおり、とも言えます。

ただ、原作では黄金の花は出てこないので、こういう奇跡が起きても、「これは童話だから」と説明するしかありません。

塔に閉じ込められ、自分勝手な魔女に育てられたわりには、ルパンゾはとても明るく、無邪気、かつやさしい性格で、彼女を嫌いになる人はいないでしょう。

C調なフリン・ライダーも、ここぞというところでは、男気のあるところを見せるので、盗賊でありながら、好感度が高い男性です。

上質なロマコメ

この映画は、ルパンゾとフリン・ライダーというカップルのロマンチックコメディになっており、2人がだんだん仲良くなっていく様子がうまく描かれています。

セリフもおもしろいし、2人はとても意気があっています。

特に、フリン・ライダーの声をあてている人がうまいと思います。

ただ、このあたり、子供にはアピールしないかもしれません。ロマコメが好きなのは、大人ですから。

美しい映像

ディズニーのアニメなので、映像は美しいのはあたりまえかもしれませんが、最初に書いたように、絵がきれいでかわいいし、アナログ感のあるアニメがいい感じです。

ルパンゾとフリンが、提灯があがるのを見るシーンなど、とても美しいです。

提灯シーン、歌詞がついている動画です。3分24秒。

エゴイストすぎるゴーテルや、職務に忠実かつ誠実な馬、マクマナス、ルパンゾのペットのカメレオンのパスカルなど、ほかの登場人物(動物)もいいキャラクターです。

おもしろくないことをべらべらしゃべるネズミが苦手な私には、馬とカメレオンが全くしゃべらないところが、とてもいいと思います。

ゴーテルは、ルパンゾを自分の都合のいいようにあやつろうとするのですが、こういう母親は、人間世界にもいますね。

☆この歌の歌詞を紹介しています⇒I see the light (輝く未来)の訳詞:映画『塔の上のラプンツェル』より

残念なところ

残念なところはあまりないのですが、しいて言えば、音楽はFrozenほどキャッチーではありません。

Frozenに出てくる音楽は、一度聞いただけで、耳に残りますが(まあ、ブロードウェイのミュージカルになるぐらいだし)、Tangledの音楽には、そういうパワーはないです。

でも、どれもいい曲だし、水準以上のできだと思います。

ストーリーの難点としては、ルパンゾが、自分こそが、18年前に、お城からさらわれたプリンセスなんだ、と気づくのが、やや安直だというのはあります。

それまでルパンゾは、全然気づいていませんが、街で、自分が赤ん坊のときに描かれた絵を見て、何かを感じ、部屋に戻ったとき、街で拾った太陽が描かれた旗を見て、昔たくさん見ていた太陽の絵を思い出すのです(たぶんそういう設定だと思います)。

この国のシンボルマークは太陽で、いたるところにこの太陽マークがあります。提灯にもついているし、ルパンゾが赤ん坊のとき見ていた、ベッドメリー(寝ている赤ん坊の上でくるくる回るおもちゃ)にも、太陽が描かれていたので、ルパンゾはそれを覚えていたようです。

それから、あんなに簡単に、プリンセスが誘拐されるかな、という疑問もあります。ふつう、もっと厳重に警備するはずです。ゴーテルは魔女だから、どんな警備もすりぬけてしまったのかもしれません。

続編など

この映画が作られたあと、2012年に、Tangled Ever Afterという続編が作られています。

といっても、これは6分ぐらいのショートアニメで、ルパンゾとフリンの結婚式のとき、マクマナス(馬)が、指輪をなくして、パスカル(カメレオン)と必死に取り戻す、という話です。

その後、2017年にTangled Before Ever Afterという55分ほどのアニメが作られ、これは、ちょっと時間が戻って、ルパンゾがフリンと城に戻ったあとから始まっています。このアニメはその後始まる、テレビアニメのパイロット版です。

その後、Rapunzel’s Tangled Adventure という30分(実質は24分ぐらい)のテレビアニメのシリーズが始まり、私はいま、このアニメのエピソードを3つ見たところです。

テレビアニメは映画とは絵柄が違いますが、登場人物の声は同じです。

映画とはまた別のおもしろさがあります。というか、私は、テレビアニメのほうがおもしろいかもしれないと思っています。このアニメは全部で60話ありますが、おもしろさが続く限り見続ける予定です(時間はかかると思うけど)。


もともと、ラプンツェルはすごく残酷な話ですよね。

親元から子供を奪い、その子を大人になるまで塔に閉じ込めるなんて。

ルパンゾの18歳の誕生日の日、ちょうちんをあげる前、国王がとても悲しそうな顔をしていて、お妃が、国王のほほに手をあてるシーンがあります。

これを見た時、私、横田滋さんのこと思いだして、泣けてきました。

こんなシーンがあるのも、Tangledは大人むけかもしれないと思う理由のひとつです。

プライムビデオでレンタルもできます。

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