ラプンツェル(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

塔 その他の物語

グリム兄弟の童話、『ラプンツェル』のあらすじを紹介します。日本では、『髪長姫』と呼ばれることもあります。

超簡単なあらすじ

長いあらすじを読みたくない人むけに、先に要約を書いておきます。

髪がやたらと長いお姫さまが、育ての親である魔女に塔にとじこめられていた。魔女がやってきて、姫を呼ぶと、彼女は、髪(三編み)をおろすので、魔女はそれとつたって姫の部屋までのぼる。あるとき、同じ要領で王子様がやってきて、2人は仲良くなる。

しかし、魔女は2人の関係を認めず、姫の髪をばっさり切って、荒野に放り出す。絶望した王子は塔から身を投げ失明する。数年後この2人は再会しハッピーエンドとなる(姫は王子の子である双子を生んでいた)。

ラプンツェルを食べたくなる妊婦

なかなか子供ができなかった夫婦にようやく子供ができます。2人の家の窓からは、となりの家の見事な庭がよく見えます。高い囲いがあるその庭は、魔女、ゴーテルのものでした。

妻は、この庭に咲いているラプンツェル(ランピオン)を食べたくて仕方がなくなり、次第にやつれていきます。妻を深く愛していた夫は意を決して、日が暮れると塀を乗り越え、ラプンツェルをこっそり取ってきます。

それを食べた妻はますますラプンツェルを食べたくなります。そこで、夫は翌日もう1度、 ラプンツェルを取りに行きますが、魔女に見つかります。

魔女と取引する夫

「私のラプンツェルを盗むとは?! お前はこの報いを受けるがいい!」 

怖ろしい形相で言うゴーテルに、夫は、「すみません。妻がどうしても食べたいと言ったのです。食べないと死んでいたと思います。どうぞ許してください」と平謝りします。

「それなら、好きなだけラプンツェルを詰むがいい。ただし、 赤ん坊が生まれたら私によこすのだ。私がちゃんと育ててあげるから」。こうゴーテルは言います。

とんでもない申し出ですが、魔女が恐ろしかった夫は、このオファーをそっくりそのまま承諾しました。

かわいい女の子が生まれた

しばらくして妻は女の子を生みましたが、すぐにゴーテルに取り上げられました。ゴーテルはこの子をラプンツェルと名付けます。ラプンツェルは世にも美しい少女でした。

ラプンツェルが12歳になると、ゴーテルは、森の中にある塔に閉じ込めました。この塔には扉がなく、小さな窓が1つあるだけです。

娘に用事のあるときは、ゴーテルは塔の下に立ち、「ラプンツェル、ラプンツェル、髪をおろしておくれ」と言います。

ラプンツェルはものすごく長い金髪の持ち主で、呼ばれたら、自分のおさげをおろし、魔女はこの髪を手綱にして上がってきました。

王子と知り合うラプンツェル

数年後、王子が馬にのって森を散策していると、美しい歌声が聞こえます。ラプンツェルの声でした。歌声に魅了された王子は、塔に入りたいと思いましたが、ドアが見つかりません。

その日はそのまま城に帰った王子は、翌日から毎日、塔に通って、歌を聞いていました。あるとき、魔女がラプンツェルに声をかけ、おさげ髪をつたって塔にあがっていくのを見た王子は、同じように、ラプンツェルに呼びかけ、とうとう美声の持ち主の部屋へ行きました。

王子を見て、はじめはひどく驚いたラプンツェルですが、彼はやさしい人だったので、2人は次第に親しくなり、しばらくして王子はラプンツェルにプロポーズし、ラプンツェルは「イエス」と答えます。

魔女に2人のことがばれる

ゴーテルは2人の関係を全く知りませんでした。しかし、あるときラプンツェルが、「ねえ、ゴーテル、髪をひっぱりあげるとき、なぜ、あなたはそんなに重いの? 王子はとっても軽々と上ってくるわ」と言ったので、すべてを知りました。

「この、恩知らずが! 世界からおまえを守ってあげていた私をだますなんて」。怒ったゴーテルは、ラプンツェルの美しい髪をばっさり切り、彼女を荒野に放り出しました。

失明する王子

その夜、いつものように王子がやってきて、「ラプンツェル、ラプンツェル、髪をおろしておくれ」と言ったので、ゴーテルは昼間切ったラプンツェルの髪をおろしました。

魔女を見てびっくりする王子。

「もうおまえのかわいい小鳥はここにはいないよ。猫につかまったのさ。猫はおまえの目をひっかいて取るよ。もうおまえは2度とラプンツェルには会えないのさ」

魔女の言葉を聞いて絶望した王子は、塔から身を投げました。命はとりとめたものの、王子は目にとげが入って失明。彼は森の中をさまよい、草を食べて命をつなぎつつ、愛しい妻を思って、嘆き悲しみました。

ハッピーエンド

数年間、森をさまよっていた王子は、ある日ラプンツェルのいる荒野にたどりつきました。ラプンツェルは王子の子供である双子と一緒でした。

ラプンツェルの声を聞いた王子が、彼女のほうに歩いていくと、ラプンツェルは王子に気づき、涙を流しながら、彼の腕の中に飛び込みます。ラプンツェルの涙が、王子の目に落ちると、彼はまた目が見えるようになりました。

王子は、ラプンツェルと子供を王国に連れていき、2人はそこで、いつまでも幸せに暮らしました。

原文はこちらを参考にしています⇒ Grimm 012: Rapunz

欲望に身を任せると痛い目にあう

今回紹介した、1857年版は子供が読んでも大丈夫なように、書き直されています。1812年に出た初版のラプンツェルは、もう少し性的な要素が強いです。そちらでは、ラプンツェルは毎晩、王子を部屋に入れ、そのうち妊娠するので、ゴーテルに2人のことがばれます。

2人は、2人なりに結婚していたのでしょうが、塔に監禁されたまま妊娠するのは、いかがなものか? この2人は若く、欲望にまかせていたと言えます。

ラプンツェル(草のほう)を食べたくてどうしようもなくなる妻も、欲望に突き動かされています。あらすじでは軽く書いていますが、妻はこの植物を食べたくてどうしようもなくなり、その渇望は日に日につのり、「あれを食べないと私は死んでしまう」とまで言うのです。

妻は妊娠中で、味覚が変わっていたのでしょうが、他人の庭に咲いている草をそこまで食べたくなるなんて尋常ではありません。

妻が理不尽に何かを求めていたら、夫はいさめるべきですが、夫は夫でこの草を盗んでしまうのです。そして2人はあんなに待ち望んでいた子供を失います。

もちろん、ラプンツェルも王子も痛い目にあっています。

このように、この童話は、欲望のまま生きた人々が罰を受ける物語と言えます。ラプンツェルと王子は最後には幸せになりますが、一国の王子ともあろう人が、失明して、草のつるや根っこを食べながら、何年も森をさまようなんて、ずいぶん怖ろしい運命です。

ラプンツェルはどんな植物?

Campanula rapunculus

ラプンツェルは英語版では、rapunzel または rampion(ランピオン)という単語で出てきます。rampion を辞書でひくと、正式な名前は、Campanula rapunculus で、ヨーロッパ・アジア産キキョウ科、ホタルブクロ属の植物とあります。つまりキキョウの仲間なのでしょう。rampion bellflower とも呼ばれます。

花は青みがかっていて、根が食用とのこと。きっと、グリム兄弟が生きているころには、そのへんにたくさんあり、サラダにして食べたりしたのだと思います。どんな味だったのでしょうか。

この植物は、妊婦が食べるとよいと言われていたそうです。しかし、人の庭から盗んではいけません。

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