シンデレラ(シャルル・ペロー版)のあらすじ-1

昔のメイド ペロー童話

『シンデレラ物語』の原作の、シャルル・ペローが書いたサンドリヨン(シンデレラ)のあらすじを数回にわけて紹介します。

この話の正式な題名は、Cendrillon ou la petite pantoufle de verre (サンドリヨンまたは小さなガラスの靴)です。

pantoufle は辞書でしらべると、スリッパ、室内履きと書いてありますが、あまりヒールの高くない靴です。「その靴」と単数になっているのは、舞踏会で落とした片方の靴をさしているからです。

父親が再婚する

昔、あるところに一人の貴族がいました。彼は、世にも高慢な女性と再婚。この女性には、母親とそっくりの性格の娘が二人いました。

男性にも、同じ年頃の娘がいましたが、こちらは亡くなった母親ゆずりの、とても心根のやさしい娘でした。

継母とその連れ子にいじめられる

結婚するやいなや、継母は夫の娘につらくあたるようになりました。この娘のやさしい性格が気に入らなかったからです。この娘のおかげで、自分の娘が悪く見えてしまうと思ったのです。

継母はこの娘に、すべての家事をやらせました。食器洗いも、家の掃除もすべてこの娘の仕事です。

娘は、屋根裏部屋のぼろぼろのベッドに寝ていましたが、連れ子の二人は、階下の床のきれいな部屋で、素敵なベッドで眠っていました。

その部屋には大きな鏡があり、姉たちはいつもその鏡に全身を写していました。

継母にいじめられていることを、この娘は父親に言いませんでした。なぜなら、父はすっかり継母の尻に敷かれており、自分の状態を父に訴えても怒られるだけだと思ったからです。

サンドリヨンというあだ名がつく

娘は一人で耐えて、家事が終わると、よくかまどの灰のそばでたたずんでいました。そのため、家族から『灰まるけ』と呼ばれるようになりました。

二人のまま姉のうち、比較的やさしい、すぐ上の姉は、娘を『サンドリヨン(灰っ子)』と呼びました。

サンドリヨンはぼろぼろの服を着ていましたが、美しく装おった二人の姉よりずっと美しい顔をしていました。

お城の舞踏会に姉たちが招待される

王子さまがお城で舞踏会を開くことになりました。家柄のよい娘が招待され、その中に、サンドリヨンの二人の姉も入っていました。

姉たちは、大喜び。舞踏会にどんな服を着ていくか、どんな髪型にするか、そんな話で持ち切りになりました。

サンドリヨンは仕事が増えました。なぜなら、姉たちの服に飾りをつけたり、アイロンをかけたりしなければならなかったからです。

姉たちは、街一番の髪結いに髪をゆってもらったあと、サンドリヨンにファッションのアドバイスを求めました。サンドリヨンはとても服のセンスがよかったからです。

サンドリヨンは、こころよくいろいろアドバイスし、姉たちの髪を整えてあげることもしました。

「サンドリヨン、あなたも舞踏会に行きたい?

姉の一人がこう聞きました。

「まあ、からかわないで。私なんて場違いです」

「そうよね、灰まるけを連れていったら、皆に笑われるわ」

姉たちは、2日間、絶食して少しでもほっそり見えるよう、鏡の前で、腰をしめつけていました。

あらすじ、次回につづきます・・・・

元の文章はこちらを参考にしています⇒ Cendrillon ou La petite pantoufle de verre par Charles Perrault (1697)

ここまでのポイント

サンドリヨンは貴族の娘

最初に、サンドリヨンの父親は貴族(Gentilhomme)であるとはっきり書かれています。つまり、サンドリヨンは庶民ではなく、最初から王子と結婚する資格のある身分です。

シャルル・ペローの紹介記事でも書きましたが、彼は、ルイ14世の宮廷で仕事をしていた人ですし、この童話集は、宮廷の童話好きの人たちを読者として意識していました。

よって、平民がプリンセスになるという展開にはなっていません。

継母はさして登場しない

ペロー版のサンドリヨンでは、「継母は性格が悪く、継子に家事をやらせた」とあるだけで、実際にサンドリヨンと交渉があるのは、二人のまま姉です。

父親はいるがまったく無力

父親はいますが、サンドリヨンにとってはいないも同然です。

サンドリヨンは名前ではなくあだ名

よく知られたことですが、サンドリヨンは本人の名前ではなく、すぐ上の姉がつけたニックネームです。その意味は、「灰っ子」。日本風にいうと、「お灰ちゃん」でしょうか。

かまどのそばにいたのは灰がまだ暖かかったからでしょうね。ボロボロの服を着て、寒かったのだと思います。

ドレスの描写が細かい

あらすじでは省略しましたが、姉たちが舞踏会にどんな服を着ていくか、かなり具体的に話し合っています。こんな色のドレスを着るとか、ペチコートはふつうのだけど、かわりに、こんな柄のマントを着て、こんなアクセサリーをつけるとか。髪型についても詳しく書かれています。

これは、当時の宮廷文化を反映したものでしょう。それに、ペローはもともと美しいものが好きなので、宮廷での上流階級の女性をしっかり観察していたと思われます。

姉たちは、いつも鏡を見ていたとか、腰を細くするために必死にコルセットをしめて、ひもが12本(1ダース)以上切れたとも書かれていて、描写の細かさに笑ってしまいます。

6年前に、べつのブログでもあらすじを紹介しています。こちらはかなり簡略していますが、よかたらこちらもどうぞ。

『シンデレラ』はフランス語で何と言う? 第11回 | フランス語の扉を開こう~ペンギンと

つづきはこちら。

コメント

  1. masausa より:

    「灰まるけ」という訳(?)初めて見ました。今までよく目にした日本語訳は「シンデレラ」でなければ「灰かぶり」「灰かぶり姫」なので、とても新鮮であるとともに…なんだか妙な可愛らしさがあって毎回目にはいるたびに笑いがこみあげてくるのですが。この訳は「灰かぶり」より古い時代のバージョンなのでしょうか?

    • pen より:

      コメントありがとうございます。

      古い時代のバージョンではなくて、penバージョン、あるいは名古屋弁バージョンです。

      サンドリヨンは、家の人に、はじめは、Cucendron と呼ばれていました。これは cul + cendre で、「灰にまみれた尻」です。

      ここの訳を、手元にある翻訳本2つで調べたら、1つは「灰かぶり」、もう1つは、「キュサンドロン(おしりが灰だらけの子)」となっていました。
      キュサンドロンを私は、「灰まるけ」としました。

      「~まるけ」は、「~だらけ、~まみれ」という意味の名古屋弁です。

      しかし、それが名古屋弁だと私が知ったのはわりと最近のことです。べつのブログで「ほこりまるけ」と書いたら、読者から指摘があり、それで調べて、名古屋弁(愛知、岐阜、三重、滋賀あたりでも使うそうですが)なのだとわかりました。ほかには、「泥まるけ」などとも使います。

      キュサンドロンは、わりと失礼な呼び名なので、すぐ上の姉は、もう少しかわいげのある サンドリヨン(Cendrillon)と呼ぶようになりました。

      ここの訳を先に書いた翻訳本では、「灰っ子さんという意味で、”シンデレラ”」と、「サンドリヨン(灰だらけの子)」となっています。

      私はここを、「サンドリヨン(灰っ子)」としてみました。

      • masausa より:

        penバージョンとはハイセンスですね。意味はおいておいて「キュサンドロン」は可愛らしくないけど「はいまるけ」はちょっとキュートですね。「サンドリヨン」もかわいいと思います。「灰子」だと普通に昔のお姫さまの名前かなと思いますね。

        • pen より:

          灰まるけ、かわいいですかね。私はどうしても、灰だらけでなくて、灰まるけと言ってしまうので、気をつけなければいけません。サンドリヨンは、日本語の響きだとかわいいですね。灰まるけという意味ですけど。

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