モデル・ショップ:ジャック・ドゥミ監督(1968)の感想。

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ジャック・ドゥミ監督の長編、5作目、モデル・ショップ(Model Shop)を見ました。この作品は、興行的にはまったくヒットしなかったので、日本ではDVDは出ていないようです。

ドゥミ監督が、アメリカのロサンゼルスで撮影した映画で、当時の街の景色や空気感が感じられる、ちょっとドキュメンタリーふうの青春映画です。派手さはありませんが、ここまで無視されることもないと思う映画です。

モデル・ショップ、基本情報

  • 脚本、監督、制作:ジャック・ドゥミ
  • 音楽:Spirit(1967年、LAで結成されたロックバンド)
  • 主演:ゲイリー・ロックウッド(ジョージ)、アヌーク・エーメ(ローラ)、アレクザンドラ・ヘイ(グローリア)
  • 言語:英語。監督はフランス語でシナリオを書いて、それを英語に訳してもらったらしいです。
  • ローラ』に出てきたローラが登場するので、続編とも考えられます。しかし、あくまで主役はジョージで、たまたま彼の人生とローラの人生がある1点で交差しただけです。

モデル・ショップ、予告編(1分)

Model Shop (Trailer, 1969)

モデルショップとは、好きなモデルを指定して、顧客がポーズを指定して写真を撮影する店です。ローラは、「労働許可証がない私ができる唯一の仕事よ」と言っています。

あらすじ

1968年のロスアンゼルス、建築家のジョージ(26歳)は、失業中で一文無し。飛行場の近くの、工事現場みたいなほこりっぽい場所にある平屋に住んでいます。

朝起きたら、金融会社の人がやって来て、「お金を払わないと車を持っていく」と言います。

どうやら、ローンの支払いが終わっていないようです。ジョージは、その日の午後3時までに100ドル持っていくと話をつけます。

彼は、女優志願のグローリアと同棲して1年。さまざまな支払いはこのところグローリアがしているので、口論が始まり、「あなたには野心や夢がないの?」ときついことを言われます。

ジョージは、せっかく入った建築事務所をやめてしまったのです。彼は、バークレーで建築を学んだと言っているので、それなりに優秀だと思います。何かを作り上げることが好きなのですが、建築業界は競争が激しいのがいやみたいです。

それに、いま、ベトナム戦争中で、いつ招集されるかわからないのも、夢や未来にむかって、突き進む気になれない理由の1つです。

グローリアはオーディションに出かけ、ジョージはお金を作りに車で街に出ます。彼は友達はけっこういて、順番に回って借金をするつもりです。

1人目の友人(駐車場が職場)には、すでにお金を借りているし、逆に、「そろそろ返してほしいんだけど」と言われて借りられません。

ここで、ジョージは、白いドレスを着て、白いオープンカーに乗る女性(ローラ)を見て、思わずあとをつけます。

ローラは高台にある大きな家に入っていきました。ジョージは車から降りて、ロサンゼルスの街並みをじっと見ると、また車に乗り、今度は、ミュージシャンの友人をたずねます。

ここであっさり100ドル借りられたのですが、彼は、プールバーみたいな店 (ビリヤード台のある店) に入り、タバコを買い、ジュークボックスで音楽をかけて、ハンバーガーとコーヒーを注文します。

新聞を見ながら、食事をしていると、窓の外を例の白いドレスの女性が歩いているではありませんか。彼はあわてて店を出て、女性のあとをつけます。女性は、モデル・ショップに入っていきました。ちょっと考えて、彼も、その店に入っていきます。

ずっと車に乗っているジョージ

この映画は、金策をするジョージの1日を描いています。木曜日、または金曜日の朝から、翌朝までの24時間です。

予告編では、モデルショップでの会話がフィーチャーされていますが、本編でのジョージはたいてい車に乗っています。合間に、駐車場、友達の家、プールバー、モデルショップ、友人数人がやっている小さな新聞社(ふつうのお店ふう)、カメラ屋、金融会社、ガソリンスタンドなどに寄ります。

運転しているときも、歩いている時も、ロサンゼルスの街並みがよく見えるので、ドゥミ監督は、街そのものを映画にしたかったのだと思います。

その部分は、成功しています。

新聞を画面に入れたり、ラジオ放送を入れたり、徴兵に関する会話を入れたりしているので、1968年のリアルなロサンゼルスが伝わってきます。

当時の風俗を楽しむ映画と言えるかもしれません。

リアルすぎるから受けないのかも

わりと殺伐とした雰囲気のロサンゼルスを淡々と撮影しているので、『シェルブールの雨傘』や、『ロシュフォールの恋人たち』みたいな、カラフルでおとぎ話っぽい映画を期待していると、「なんじゃ、こりゃ?」と思ってしまうでしょう。

たいした事件も起きません。ジョージは、わりとあっさり100ドル手にするので、さしてドラマチックではないです。

彼は、すぐにお金を返しにいかず、たばこやハンバーガーに、少しずつお金を使い、あげくに、モデルショップで、25ドル使います。モデルを撮影するのに、15分だと25ドルなのです。

当時の物価がわかりませんが、ビリヤードの店でコーヒーとハンバーガーを注文したら、2つ合わせてたった65セント(!)だったので、25ドルは相当な大金だと思います(ガソリンスタンドでは1ドルでした)。

ロマンチックじゃない一目惚れ

ジョージは、駐車場でローラに一目惚れしたので、あとをつけ、モデルショップにも1日に2回も行きます。ただし、一目惚れのときめきや、ハートがあちこちに舞う感じは、ありません。

彼は、ローラにアイラブユーと言うのですが、その言い方がいかにも唐突だし、なんだか怒っているようです。

1961年頃の、明るいローラとはうってかわって、生活に疲れた感じのローラですが、やさしいところは変わっていなくて、彼を自分の部屋にさそいます。

ここで、ローラは身の上話をします(部屋にアルバムがある)。恋人のミシェルとどうなったのか、水兵フランキーはどうなったのか、いろいろと話すので、ドゥミ監督の映画の登場人物のその後がわかります。

アルバムの下に置いてある雑誌の表紙は、カトリーヌ・ドヌーブです。

ローラがずっと待っていて、ようやく結婚した初恋の人、ミシェルは、その後、ロサンゼルスで別の女性に気がうつり、この女性は『天使の入江』のジャッキーです。

このように、ドゥミ監督は、しばしば以前の映画の登場人物の近況をセリフに混ぜるのですが、このシーンは、あまりに說明的なので、もう少しさりげなく出したほうがよかったと思います。

ジョージのその後が気になる(注意:結末を書いています)

映画の途中で、ジョージは、実家に電話をして、自分のもとに、徴兵検査に来いという知らせが来たことを知ります。明日には、サンフランシスコに戻るつもりです。

だから車が必要なはずですが、ジョージは、ローラの家に行ったとき、彼女に手持ちのお金をみんなあげてしまいます。

ローラはそのお金でさっさとパリに帰ります。もう一度、彼女に会うつもりだったジョージは、電話で、ローラのルームメイト相手に、「彼女のおかげで、またやり直す気になったんだ」とはじめて前向きなことを言います。

しかし、このとき、金融会社の人が、ジョージの車を引っ張っていきます。

ジョージはこれからどうするのでしょうか? 戦争に行くのでしょうか? そもそも、サンフランシスコに帰る手立てはあるのでしょうか? そのうち、ローラに会いにパリに行くのでしょうか?

映画が終わったときに、新たな話が始まるのは、ドゥミ監督ならではです。

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