ディリリとパリの時間旅行(2018)の感想。

パリ その他の映画のレビュー

ベル・エポックのパリを舞台にした、アニメーション映画、Dilili à Paris (パリのディリリ)、邦題:『ディリリとパリの時間旅行』を見ました。

Dilili à Paris の予告編(1分36秒)

Dilili à Paris – de Michel Ocelot – Bande-annonce

基本情報

  • 監督:ミッシェル・オスロ
  • 音楽:ガブリエル・ヤレド
  • 制作:フランス、ドイツ、ベルギー
  • 言語:フランス語
  • 上映時間:95分
  • 公開:2018年10月10日(フランス)。これ以前に、アヌシー国際アニメーション映画祭でも公開。
  • コンピュータアニメーションだそうですが、バックの背景や建物は実写みたいに見え、キャラクターはまんがの中の登場人物みたいで、あまり奥行きがない絵柄で、不思議な雰囲気をかもしだしています。
  • 背景はベルエポック時代(19世紀末から20世紀のはじめ)のパリで、その頃、パリにいて、今でも名前が残っている、著名な人々が実名でたくさん登場します。たとえば、キュリー夫人、サラ・ベルナール、ピカソ、ロートレック、マルセル・プルースト、ロダン、パスツールなど。全部で100人ほどいるらしいです。その中で、特にセリフが多いのはエンマ・カルヴェ(ソプラノ歌手)と、ロートレックです。

あらすじ

映画の冒頭、黒人たちが村で生活している様子が映し出されます。

このあとズームアウトして、実はこれはパリの万博のアトラクションの1つ、人間動物園だとわかります。ある少年が、木の上から、にんじんを切ったりしていた少女に話しかけ、あとで会う約束をします。

ディリリとオレル

落ち合った少女と少年はお互いに自己紹介しあい、ここで2人の身の上がわかります。

少女の名はディリリ。彼女は半分カナク族(ニューカレドニアのメラネシア系民族)で半分フランス人。両親はいません。自分の目で外国を見たくて、船で密航してパリにやってきました。

ディリリはマダム・ミシェルからフランス語をならい、パリで伯爵夫人から礼儀作法を習ったので、上手にフランス語を話し、とても礼儀正しいです。縄跳びが大好きで上手です。

少年の名はオレルで、パリっ子。彼はメッセンジャー(coursier)をしており、3輪自動車の荷台にいろいろなものを入れて運んでいます。

2人は意気投合し、オレルはディリリを荷台に乗せて、パリの街を案内します。ほどなくして、2人は新聞売りの言葉から、最近、パリの街で少女が、 Mâles-Maîtres(直訳:男性支配) と名乗るグループにどんどん誘拐されている事件を知ります。

2人は、事件を解明しようと、手がかりをもとめて、有名人たちに会いにいき、捜査を進めます。

見どころは映像

このアニメーションの見どころはやはり映像でしょう。美しく華やかだった頃のパリの街並みやすばらしい建物を見ることができます。背景のパリの街は、監督がとった大量の写真をもとに作られたとのこと。どうやって作ったのか知りませんが。

邦題には、「時間旅行」と入っていますが、タイムトラベルものではなく、観客が、古き良きパリを訪れる、という意味です。まるで観光旅行しているような気分になります。

特に 前半は パリの美しさ全開です。貧しい人が住んでいたパリのシーンもありますが、ほんの少しで、基本は美しく華やかなパリです。パリ好きな人、歴史や美術、建築が好きな人は楽しめる映画だと思います。

後半では、 Mâles-Maîtres の正体がわかるのですが、この人たちは、パリの地下水路(下水道?)を根城としており、彼らのシーンは打ってかわって暗く、誘拐した少女たちに怖ろしいことをしています。といっても、この映画は子供向けなので、残酷なシーンはありません。でも、よく考えるとかなり残酷です。

有名文化人がたくさん登場

この映画の売りは、美しい映像と、たくさんのセレブが出てくるところだと思いますが、「あ、あの人だ、あの人も出てる」と喜べるのは、ある程度、教養のある人です。

この時代、パリにいた有名人を知らないと、ピンと来ません。しかし、その人が誰であるのか、わかりやすいようにはなっています。

画家の場合は超有名な絵を描いていますし、誰かに会うと、オレルがディリリに、「この人は◯◯さん」と紹介するか、ディリリが名前を聞いて手帳にメモをします。ディリリはいつも手帳を持ち歩いており、会った人の名前と仕事の内容を聞いて書き留めています。

そうやって、自分が将来なりたい仕事を模索しているのですが、この設定は、登場人物が誰であるのかわかりやすいようにする演出上の都合だと思います。メインオーディエンスである子どもたちに、昔のパリのことや、そこで生きていた人々のことを教える、という意図があるのでしょう。

マリー・キュリーが、祖国ポーランドでは、女性は科学の勉強をすることができなかった、と語りますが、この映画には、女性や外国人など、弱い立場にある人をしいたげてはいけない、皆と協力しなければいけない、というテーマがあります(ものすごくわかりやすい形で出てきます)。

この時代のパリには、才能あふれる人が、いろいろなところからやってきていたんだ、ということがよくわかり、当時のパリのふところの深さを改めて感じました。一方で、 Mâles-Maîtres みたいな考え方をする人もいたでしょうね( Mâles-Maîtresは、もちろん架空の組織です)。

話はまあまあ

視覚的には楽しい映画ですが、シナリオはそこまですごいとは思いませんでした。

一応、ディリリとオレルが、誘拐された少女たちを助けるために、探偵のようなことをするのですが、すぐに手がかりが見つかりますし、ディリリも誘拐されるものの、こちらも簡単に助け出されるし、手助けをしてくれる人もあっさり見つかりますから、ミステリではないと思います。

とはいえ、私、フランス語音声のみで観賞したので、理解できていない部分も多いため、英語字幕や日本語吹き替えで見たら、また違う印象を持つかもしれません。

フランス語勉強用には最適

予告編を見るとわかるように、登場人物はなぜかみな、異様にゆっくりしゃべるし、スラングなども出てこないので、フランス語の学習には向いている映画です。

ディリリは、とても礼儀正しく賢い少女という設定なので、ていねいなフランス語を話しますし、ディリリと会った、文化人たちも、みな、とても親切に彼女に応対します。

話の流れや、登場人物の気持ちをセリフで説明する部分が多いため、フランス映画によくある「これ、いったいどういうこと? いったい、何が言いたいの?」ということはまったくありません。

全員がゆっくりしゃべるのは、子供が見ることを意識しているからでしょうか? なんとなく、教育映画っぽい雰囲気もあります。

音楽もなかなかよかったです。また、時間をおいて見直す予定です。

☆別ブログに、予告編のフランス語のトランスクリプションと和訳を紹介しています⇒ ディリリとパリの時間旅行:予告編のフランス語。

DVDは2020年1月22日発売。現在予約受け付け中。

コメント

  1. masausa より:

    ほんと、フランス語講座みたいな発音ですね。うっとり♡ 映像も実写との合成みたいだけど、すべてデジタル制作と言われてもそうかと思える雰囲気はありますね。デジタルの特性を面白く表現していると思う。遠近感の不自然な対比や無機質なラインが活かされていますね。これは私に取っては必見だわ!いい作品を紹介していただき、ありがとうございます。

    • pen より:

      人物は3D rendering(意味わからないけど)で、背景の建物は写真(いまもある建物と美術館にある物を撮影)から作ったのと、3Dで再現したもの(エッフェル塔とか)があると説明してあったけど、私にはよくわからず。いずれにしても、すべてデジタルってことなんだと思います。だって、いくらパリに古い物が残っているといっても、ベルエポックといまじゃ、多少は変わってると思うし。

      この映画、いま、日本で公開中じゃないですかね? 今週末か来週に、フランス語のブログのほうで、予告編のスクリプトのトランスクリプションと和訳を紹介する予定です。

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