シェルブールの雨傘:ジャック・ドゥミ監督(1964)の感想。

雨傘 その他の映画のレビュー

ジャック・ドゥミ監督の長編映画、3作目のシェルブールの雨傘(原題:Les Parapluies de Cherbourg)を見ました。今回見たのは、2013年にデジタルリマスターされたバージョンです。

シェルブールの雨傘、予告編(2分)

THE UMBRELLAS OF CHERBOURG – Official Trailer – 50th Anniversary

基本情報

  • 脚本、監督:ジャック・ドゥミ
  • 音楽:ミシェル・ルグラン
  • 主演:カトリーヌ・ドゥヌーブ(ジュヌヴィエーヴ)、ニーノ・カステルヌオーヴォ (ギイ)、アンヌ・ヴェルノン(ジュヌヴィエーヴの母、傘屋の女主人)、ミレーユ・ペレー(ギイのおばさん、一緒に住んでいる)、マルク・ミシェル(ロラン・カサール 金持ちの宝石商)
  • 第17回カンヌ国際映画祭、グランプリ(パルムドール)受賞作品
  • 当時二十歳で、まだメジャーな女優ではなかったカトリーヌ・ドヌーヴの出世作
  • ミュージカルだけど、踊ったりはしない。すべてのセリフが歌という実験的な作品。歌はプロの歌手が吹き替えています。
  • ドゥミ監督の作品の中では、たぶん日本で一番有名な映画
  • 前の2つはモノクロでしたが、この映画は目も覚めるようなカラフルさ。上映時間は91分。
  • ローラ』の続編ともいえます(後述)

あらすじ:結末を書くので、まだ見ていない人は読まないように。

本編は3つのパートに分かれていて、画面に何年の何月か表示されます。

Première partie : Le départ(旅立ち)

1957年11月。シェルブールの傘屋の娘、17歳のジュヌヴィエーヴは、自動車修理工の20歳のギイと熱愛中。2人は結婚するつもりで、将来はガソリンスタンドを持とう、子供の名前は、女の子ならフランソワーズにしようね、などと話しあっています。

一緒に芝居を観て、そのあと踊りに行ったりしますが、とにかく、これでもか、というほどのラブラブ状態。

一方、ジュヌヴィエーヴの母親は、傘屋の経営が思わしくなく、お金に困り、娘と一緒に宝石屋に行き、パールのネックレスを買い取ってもらおうとします。

宝石屋には冷たく断られますが、たまたまそこにいた、宝石商のカサールが、買い取ってくれることになります。

そんなある日、ギイに、アルジェリア戦争に2年間行けという召集令状が届き、ギイは旅立ちます。

別れる前、ジュヌヴィエーヴは「あなたがいないと私は生きていけない。あなた、ほかの人を好きになるんじゃないかしら。私のこと忘れないで、私、いつまでもあなたを待ってる」と言います。もちろん、ギイもジュヌヴィエーヴに永久(とわ)の愛を誓って列車に乗ります。

Deuxième partie : L’absence(不在)

ギイが発ってから、2ヶ月。ジュヌヴィエーヴは妊娠したことを知ります。ギイからは便りが届かず、ジュヌヴィエーヴはだんだん不安になります。

母親は、「ギイは、おまえのことなんて忘れた」といいます。

ようやくギイから頼りが届きます。彼は妊娠を喜び、男の子だったらフランソワという名前にしようと書いていました。

1月、公現祭のお祝いの食事に、母親は宝石商のカサールを招きます。ガレット・デ・ロワを食べたあと、ジュヌヴィエーヴは気分が悪いと退出。そのあと、カサールは、「初めて見たときからジュヌヴィエーヴが好きでした」と母親を通じて、彼女に求婚します。

「決めるのはお嬢さんですから、私は何も無理強いするつもりはありません」とカサールは、あくまで誠実で紳士的ですが、母親は娘にプレッシャーをかけます(もともと、しがない自動車修理工のギイを気に入っていなかった様子)。

出張から戻ったカサールに、ジュヌヴィエーヴはおなかが大きな姿で会います(それまで妊娠は隠していました)、「2人の子供として育てましょう」とカサールが言うので、ジュヌヴィエーヴは彼と結婚することにします。

結婚式はいつだったか忘れましたが、1958年の春のこと。つまり、ギイが戦争に行ってから半年後です。たった、半年ですよ(penの心の叫び)。

Troisième partie : Le retour(生還)

1959年3月、予定より早くギイが戻ってきます。足を怪我したから除隊になったのです。ジュヌヴィエーヴが別の男性と結婚し、街を出たことを知り、大きなショックを受けたギイの生活は荒れ、職場もくびになります。

酒場で知り合った女性(娼婦でしょうね)のところからギイが家に戻ったら、おばさんが死んだことをマドレーヌ(ギイの幼ななじみで、ずっと伯母さんの看病をしていた)に知らされます。

ギイは、おばさんの遺産を使ってガソリンスタンドを始めることにし、マドレーヌと結婚します。

4年後の1963年のクリスマス、雪がふりしきる中、ジュヌヴィエーヴが娘(名前はフランソワーズ)を乗せた車の給油をしようと、ガソリンスタンドにやってきます。

思わぬ再会に驚いた2人ですが、ほんの二言、三言、言葉を交わすだけで、ジュヌヴィエーヴは去ります。ギイは、買い物から戻ってきた妻と息子(名前はフランソワ)を笑顔で迎えます。

いつのまにか成功していたロラン

『ローラ』の最後では失恋し、傷心のままナントの街を出たロランが3年ほどで仕事に成功し、金持ちの宝石商となって登場します。

ロランは、頭は悪くないけど、なまけものふうだったのに、失恋が彼に大きなエネルギーを与えたのでしょうか?

3人でガレット・デ・ロワを食べるシーンです(2分半)

The dinner scene from "Parapluies de Cherbourg" (1964)

『ローラ』でも、ロランは、セシル(少女のほう)の誕生日に呼ばれ、セシル、母親、ロランの3人でケーキを食べていました。彼は年上の女性に好かれるのですね。

失恋や仕事が彼を人間的に成長させたのか、この映画ではお金があるだけでなく、人柄もいい包容力のある男性として登場します。

「昔ローラという女性を愛していました」と母親に告白するシーンがあり、そのとき、誰もいない パッサージュ・ポムレの印象的な映像が映し出されます。

自分で決めなかったジュヌヴィエーヴ

この映画は、真実の愛が成就しないさまを描いたメロドラマで、成就しなかった理由は、戦争にある、とよく言われます。

それもあるでしょう。ですが、恋人がいなくなって、たった半年でほかの男性と結婚を決めてしまうなんて、ジュヌヴィエーヴはなんと現実的(打算的)なのでしょうか?

ギイは子供の誕生を待っていたというのに。

ジュヌヴィエーヴが結婚したのは、母親のプレッシャーもあったと思います。カサールは、出張先からまめに絵葉書を送ってくるのに、ギイは全然手紙をよこしません。

そのことを、母親は、「手紙なんてどこにいても書ける」「心変わりだ」「もともとそんなに好きじゃなかったんだ」といいますが、ギイはバカンスに行っているのではなく、戦場に行っているのです。

手紙を書きたくても書けない状況だってあると、考えることはできなかったのでしょうか? 実際、彼は負傷します。

この母親は、人間的にあまり成熟しておらず、「お金がない。困った」といいながら、いつもきれいな服を着て優雅に過ごしています。

はじめは、 自分の宝石を売ることなんて夢にも思わず、娘に説得されて売りに行くのです。

母親は、「父親のいない子供を生むのは世間体が悪い」「女の幸せは、お金持ちでステータスのある男と結婚すること」と思い込んでおり、娘がそういう道を行くことを強く望んでいるのです。

ジュヌヴィエーヴはまだ17歳で、自分というものが確立していなかったから、結局、周囲の大人(母親とカサール)の言うことに、影響されてしまったのでしょう。

ずっと母と2人だけで住んでいて、母の言うことにはさからえなかったのかもしれません。

他人の影響を受けて決断したジュヌヴィエーヴには、いくらお金や宝石があっても、もう以前のような、心から笑えるときは来ないかもしれません。

他にも見どころはたくさん

カトリーヌ・ドヌーヴは驚くほどきれいですし、場面場面で、セットや衣装の色も、計算されています。ミシェル・ルグランの音楽も美しく、見どころ、聞きどころのたくさんある映画です。

ドヌーブの衣装も、傘屋の店内もとてもかわいいです。情報量が多いので、時期を変えて、何度か見ると、さらに楽しめるでしょう。

歌はすべてミドルテンポなので、フランス語はとても聞き取りやすいです。

全部歌なので、最初は違和感がありますが、すぐに、物語の世界に引き込まれます。歌にすると、たいてい、なんでも楽しくなってしまうものですが、最後の出会いの場面では、ちゃんと悲しくなるので、ドゥミ監督は、うまく演出しているのでしょうね。

テーマソングの訳詞を別ブログに書いています⇒映画『シェルブールの雨傘』のテーマの訳詞 | フランス語の扉を開こう~ペンギンと

コメント

  1. masausa より:

    最近むかしのモノクロ作品をカラーにするの流行っていますね。モノクロ作品はモノクロの方が絶対美しいと思っていましたが、この作品はとってもいいですね。マカロンみたいですごい可愛い!そしてやっぱり歌もいいですね。
    半年で他の男性と結婚を決めるのは確かに唖然。だけどお金と契約して安心したい親心もわかるわ。

    • pen より:

      シェルブールの雨傘は最初からカラー映画です。ドゥミ監督は、カラフルな映像で知られる映像作家です。
      この映画、全編がすごいカラフルですよ。昔は、かわいいと思いましたが(まあ、いまもかわいいとは思いますが)、こんな部屋では安眠できないとも思います。
      映画のできはとてもいいので、機会があったらごらんください。ふつうの映画に比べたら、フランス語、聞き取りやすいですよ。

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