ブランカニエベス(2012)の感想。

スペインの街並み 白雪姫

白雪姫からインスピレーションを得たという、Blancanieves(ブランカニエベス)という映画を見ました。Blancanievesは、スペイン語で、Snow White(白雪姫)という意味です。

7年前に作られた映画ですが、モノクロの無声映画で、この1点だけとっても、ほかの『白雪姫』のアダプテーションとかなり違います。

ブランカニエベス、予告編。(1分35秒)

無声映画だから、どこの国の予告編でも、セリフはないのですが(たまにセリフのテキストが画面に出ます)、フランス市場向けの予告編を紹介します。

BLANCANIEVES – Bande Annonce

基本情報

  • 脚本、監督、制作:パブロ・ベルヘル(資金集めに8年かかったそうです)
  • 制作:スペイン、フランス
  • 音楽: アルフォンゾ・デ・ヴィラロンガ  音楽が重要な役割を果たしています。
  • 主演:マリベル・ベルドゥ(まま母、エンカルナ)、 マカレナ・ガルシア (カルメン、スノーホワイト)、 ダニエル・ヒメネス・カチョ (カルメンの父、天才闘牛士)、 ソフィア・オリア(子供の頃のカルメン。小さい時の呼び名はカルメンシータ)。
  • グリム兄弟の『白雪姫』がもとになっています。
  • 舞台は1920年代のスペイン、アンダルシア地方。当時の風俗をばっちり表現しているそうです。
  • モノクロ、無声映画。ただし、音楽や効果音は全編に入っています。はじめのころは、いかにも無声映画な雰囲気ですが、だんだん現代風の映像もかいまみられるようになります。
  • この監督は、 無声映画、特にフランスの無声映画が好きで、この映画は無声映画へのオマージュとのこと。
  • 第85回アカデミー賞外国語映画賞 にスペイン代表として出品されました(しかし最終選考には残りませんでした)、ほかの国際映画祭でいろいろな賞をとっていて、評論家筋から、「傑作」というお墨付きがついている作品。

あらすじ(途中まで)

天才闘牛士のアントニオは、闘牛中に牛に襲われ大怪我をします。観客席でそれを見ていた妻(美しいフラメンコダンサー)はショックを受け、お産が始まります。2人はほぼ同じときに、病院に運ばれます。

妻はかわいい赤ん坊を生みましたが、そのまま亡くなってしまいます。アントニオのほうは、一命はとりとめたものの、手足が麻痺し、 もう 闘牛はできなくなります。

看護師、エンカルナは、アントニオが大金持ちだと聞き、後妻の座につこうと、甲斐甲斐しく彼を看護し、彼が退院するときは、妻として一緒に病院を出ます。

アントニオは、義理母に赤ん坊を見せられたものの、妻を亡くしたショックと、動けなくなってしまったショックで、赤ん坊の誕生を素直に喜ぶことができません。

赤ん坊(カルメンシータ)は、妻の母(つまりおばあさん)が引き取りました。

祖母のもとで、カルメンシータは大事に育てられていましたが、父親を恋しがっていました。聖体拝領の式の日に、父親が来てくれることを期待していましたが、贈り物は届いたものの、本人はやってきませんでした(このシーン、かわいそうです)。

その直後、祖母がなくなり、カルメンシータは父親とエンカルナのもとに引き取られます。エンカルナは、カルメンシータの髪を切り、地下の納屋みたいなところに住まわせ、下働きをさせます(父親は、車椅子にすわったまま、半分死んでいるような状態)。

「父や自分の居室のある2階には絶対あがってはいけない」とエンカルナに言われていたカルメンシータでしたが、あるとき、ペットの鶏、ぺぺが、2階に逃げていったので、追っていったところ、父親の部屋にたどりつきました。

父はカルメンシータを見て、喜んでくれました。

その日からカルメンシータはエンカルナがいないときや、部屋で絵のモデルをしてるときなどに、父親の部屋に行き、お話をしたり、闘牛の手ほどきを受けたりします。

それから数年後、カルメンシータは、美しい女性、カルメンに成長しますが、父が亡くなり(エンカルナに殺された)、自分も、エンカルナに命令された運転手に殺されそうになります。首をしめられ、池で溺れさせられます。

カルメンは死んだと思って、運転手は帰りますが、その夜、小人の1人がカルメンを水から引き上げ、人工呼吸をし、助けました。この小人は、はじめて会ったときから、一途にカルメンのことを思い続けます。

カルメンは記憶を失っており、自分の名前がわからなかったので、小人たちは、「じゃあ、スノーホワイトと呼ぼう。童話みたいにさ」と決めます。

小人は全部で6人いて、街から街へまわって闘牛とショーをみせる、旅回りの闘牛士団でした。カルメンは、ひょんなことから、闘牛の腕前を見せることになり、すごくうまかったので、小人の仲間となり、闘牛士としてだんだんスターになっていきます。

一方、夫の死後、新しい家を建て、セレブとして雑誌の取材を受けたエンカルナは、自分の記事(小さい)がのっている雑誌に、カルメンのことが大々的に書かれているのを見て、彼女が生きていることを知り、嫉妬と怒りの炎が燃え上がります。

セリフがないってありがたい

この映画、セリフも字幕もないので、映像にどっぷりつかることができます。以前、字幕なし多観(字幕を表示させずに学んでいる言語の映画を見ること)の話を書きましたが、

字幕を表示させていると、それを読むのに気がそがれて、画面に集中できません。

フランス映画を見ているときは、英語の字幕がでていて(たいてい消せないし、消すと内容がわからない^^;)、これはもっとも疲れるパターンです。

耳はフランス語を聞くことにチューニングし、目では英語を読み、必死に理解しようとして、どちらも中途半端に終わります。なので、一番いいのは、字幕は表示させないことだと思います。

しかし、セリフがないのは、さらにいいです。

映像がとても美しい

モノクロなので、黒と白だけですが、黒と白といっても、いろいろなニュアンスがあり、きれいで、おもしろいシーンがたくさんあります。

もともと映画は、光と影の芸術と言われますが、CGやら特撮やらあれこれ使わなくても、黒と白だけのほうが、ずっと情感のある豊かな表現ができると思いました。

まあ、監督やカメラマン、映像編集者の腕やセンスにかかっているのですが。

カルメンシータの 聖体拝領の式のドレスはおばあさんが縫ってくれました。おばあさんが死んだのは、なんと、この日(踊っているとき死んでしまった)です。

誰かの手が、彼女のまっしろな晴れ着を水おけから引き上げると、いきなり真っ黒の喪服になりますが、とても印象的なシーンです。

話はわかりやすい

予告編を見ると、芸術映画ふうで小難しい映画なのかなと思うかもしれませんが、白雪姫なのでとても話はわかりやすく、エンターテイメントになっています。

とはいえ、ハッピーエンドではありません。カルメンシータは、生まれたときに実質、両親を失い、父親と再会できたと思ったら、また失い、殺されそうになって、記憶を失い、小人たちと仲良く、興行に出て、花火を見て、喜んだのもつかのま、クライマックスで、りんごをかじって死んでしまいます。

しかも、ここで終わりではないのです。ここでは書きませんが、もっとひどい運命が待っています。

「おとぎ話でよかった」と思うぐらいの悲惨な運命です。闘牛士として輝くときがあったのが、せめてもの救いです。

まま母は、魔女ではなく、ふつうの人ですが、その分、かなりの悪女です。この映画では、「世界で一番美しいのは誰?」というのは、出てこないので、まま母のゴールは、あくまで、お金と名声を得て、みなにちやほやされることのようです。

それだけのために、ここまでいろいろやりますかね? 

白雪姫は、ショートカットでボーイッシュなので、宝塚で舞台にしても、おもしろいかもしれない、と思いました。この結末は宝塚向きではないかもしれませんが。

アマゾンで、レンタルもできます(プライムビデオ)。日本のアマゾンにはサントラのCDは、売ってないようですが、音楽もとってもよかったです。オーケストラ音楽が主体で、ときどきフラメンコの音楽が入ります。

コメント

  1. masausa より:

    美しいですね!!!写真もだけどモノクロ作品は魅力的だと思います。
    無声というところもですが、その分音楽が効果的になっていると思う。
    モノを作る時に制限はあった方がいい仕上がりになりやすいという面があるのよね。
    というか、作品制作は常に自由で作家は自分なりの制限を設けて作品を作るモンなんだけど
    その制限のひき方にセンスが出るのよね。
    女性闘牛士のスノーホワイト美しさ極まってとても素敵!

    • pen より:

      作品作りだけでなく、日常生活も制限があったほうがやりやすいですね。
      なんでもOKだと、かえって困ってしまうし、Aをとったあとで、BやCをとらなかったことを後悔しがちだと思います。
      この映画、話もまあまあおもしろかったです。音楽もよかったけど、個人的には、もう少し完全に音がない場面があってもよかったと思いました。

      この白雪姫、文字を読むことも書くこともできないんです(それがわかるシーンがある)。なんか、かわいそうです。

      父親とまま母に引き取られたあとは、ずっと女中をしていたから学校へ行ってないのはわかるけど、おばあさんと住んでいたとき、勉強しなかったのかな?

      当時の子供ってそんなもんだったのでしょうか。

      きれいに生まれついて、闘牛もうまいけど、いろいろと気の毒な人です。

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