小夜啼鳥/さよなきどり/ナイチンゲール (アンデルセン、1843)のあらすじ。

ナイチンゲール アンデルセン童話

アンデルセンの創作童話から、小夜啼鳥(さよなきどり、ナイチンゲール)のあらすじを紹介します。

デンマーク語のタイトルは、 Nattergalen 英語のタイトルは、The Nightingaleです。

簡単な要約

忙しい人向け1行サマリー:中国の皇帝が、贈り物でもらった作り物のナイチンゲールに心を奪われ、本物のナイチンゲールを追放するが、使いすぎて細工物はこわれ、自分も病気になったとき、本物が帰ってきて、以前のように美しい声で鳴いてくれるようになる話。

とても美しい声の持ち主、ナイチンゲール

昔、中国に、めずらしいものや美しいものならなんでも持っている皇帝がいました。大きな庭には森があり、そこには世にも美しい声で鳴くナイチンゲールがいます。

世界中から人々がやってきて、この鳥の鳴き声を聞き、ほめたたえ、うわさにしたり、本に書いたりしました。

あるとき、皇帝は、日本の天皇から贈られた本に、「皇帝の国にはいろいろすばらしいものがあるが、最良のものはナイチンゲールである」、と書いてあるのを見ます。

自分の庭にいるのに、自分はその姿を見たことがないので、皇帝は、家臣に、探して連れてきて鳴かせるよう命じました。

ナイチンゲールを探しまくる家来

命じられた家臣もほかの家来も、そんな鳥のことは知りませんでした。この鳥は外国では有名なのに、自分の国では無名だったのです。

家来たちは、周囲の人に聞きまくって、その鳥を知っているという、貧しい台所の女中(少女)に行き着きます。

「ナイチンゲール? 彼のことならよく知ってます。毎晩、病気のおっかさんに、残りものを持っていってから森で休んでいると、その鳥の声が聞こえるんです。その声が、美しくて涙が出ます」。

ナイチンゲールが見つかる

家臣は、女中にほうびを約束し、朝廷の半分の家来を連れて、ナイチンゲールのいる森まで案内させました。

「ナイチンゲールさん、皇帝さまがあなたの歌を聞きたいそうです」。

「喜んで」。灰色の小さな鳥が、そう答え、美しい歌声を聞かせました。

「もう1回、皇帝さまに歌いますか?」 ナイチンゲールは一行の中に皇帝がいると思っていたのです。

「ナイチンゲール殿、今夜、皇帝の前で歌をご披露願いたい」。家臣が言いました。

「私の歌は、森の中で聞くのが一番なのですが」。 そう ナイチンゲールは言いましたが、喜んで皇帝のもとに向かいました。

ナイチンゲールを鳥かごにいれる皇帝

その晩、皇帝がナイチンゲールを迎える部屋は念入りに掃除され、飾り付けられ、朝廷中の人間が正装して、集まりました。

ナイチンゲールは、黄金の枝の上にとまり、美しい歌をひろうしました。

あまりにやさしく美しい歌声なので、皇帝は涙ぐみました。とても感動した皇帝は、 お礼として、 自分の黄金の履物をナイチンゲールの首にくくりつけようとしましたが、鳥は断りました。

「ありがとうございます。皇帝さまの涙だけで充分でございます。これ以上のものはなにもございません」。

ナイチンゲールは鳥かごを与えられ朝廷に住むことになりました。日に2回と夜1回、散歩を許され、そのさいは、12人の従僕が、ナイチンゲールの足に結びつけたリボンを1本ずつしっかり持っていたので、楽しいお出かけとは言えませんでした。

街はナイチンゲールのうわさで持ち切りでした。

皇帝、贈り物をもらう

ある日、皇帝は、「ナイチンゲール」と書かれた大きな箱を受け取りました。開けてみると、作り物のナイチンゲールが入っています。

それは本物とそっくりでしたが、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤが埋め込まれていて、ねじをまくと、金と銀の尾をふりながら、本物のナイチンゲールが歌う歌の1つを歌います。

首には、「日本の天皇のナイチンゲールは、中国の皇帝のナイチンゲールに比べると、粗末なものでございます」と書かれたリボンが結ばれていました。

皇帝は本物の鳥と、細工物の鳥をデュエットさせてみましたが、うまくいきません。本物の鳥は、思いつくまま歌うのに、細工物のほうは、いつも同じ歌しか歌わないからです。

人気をさらうイミテーションの鳥

細工物の鳥だけに歌わせてみると、本物と同じくらい美しくさえずります。しかも、こちらは見た目がきらきらしているし、330回連続で歌わせても、疲れることなく歌います。

宮廷の人々が細工物の鳥にかまけているあいだに、本物のナイチンゲールは森に帰ってしまいました。

家来たちは、恩知らずな鳥だと、ナイチンゲールの悪口を言いました。音楽の専門家は、作り物のほうがすぐれていると言います。

本物は、いつ何を歌うかわからない。けれど、細工物は、いつも予定通りに歌を歌うのであたりはずれがない、と言うのです。専門家の提案で、細工物の鳥によるコンサートが行われ、人々はお茶を飲みながら、楽しみました。

ただ、本物の鳥の鳴き声を知っている猟師は、「確かに美しいし、ほとんど本物みたいだが、何かが足りない。それが何かはわからないが」と言いました。

細工物のナイチンゲールがこわれる

本物のナイチンゲールは、国から追放されました。細工物の鳥は、本物の鳥の後釜として、王さまのベッドのとなりのクッションに置かれ、高い位を授けられました。

1年後、中国の人は、この鳥の歌う歌をすっかり覚えてしまい、いっしょに歌いました。しかし、ある夜、この鳥が歌っているとき、中でギギギっという音がして歌が止まってしまいます。王さまはびっくりしてベッドから飛び起きました。

中を調べた時計職人は、使いすぎで歯車が減ってしまったが、歯車を取り替えると、もとのように美しい声では歌えなくなる、と言いました。

今後は年に1回だけ歌わせることになりました。

皇帝、病気になる

5年がたち、皇帝が病気になり、国中が悲しんでいました。助かる見込みがないので、新しい皇帝が選ばれました。

青ざめた顔で皇帝は床についていました。皆、皇帝は死んだものだと思いましたが、実はまだ生きていました。

月明かりが、立派なベッドに横たわる死んだような皇帝と作り物の鳥を照らしています。息苦しくなった皇帝が目をあけると、自分の胸の上に、『死』が乗っていました。『死』は皇帝の服を着て、冠をかぶり、黄金の剣と皇帝の絹の旗を持っています。

カーテンの折り目の間には、これまで皇帝がやった行いが、良いことも悪いことも、そのときの皇帝の顔となって戻ってきていました。

「覚えてるだろ?」「覚えてるだろ?」顔たちは、そう皇帝にささやきました。

「いやだ、何も覚えておらんぞ! 音楽、音楽を聞かせてくれ。私の黄金の鳥よ、歌っておくれ。おまえに金とすばらしいプレゼントをやったではないか。お前の首に黄金の履物をかけてやったではないか。お願いだから歌っておくれ」。

しかし、細工物の鳥はしーんとしています。ねじを巻く者が誰もいないからです。『死』が皇帝の顔をうつろな目でじっと見ます。あたりは死のように静かです。

戻ってきたナイチンゲール

突然、窓から、歌が聞こえてきました。小枝の上で、本物のナイチンゲールが歌っています。鳥は、病気の皇帝のことを耳にして、なぐさめと希望の歌を歌いに来たのです。

ナイチンゲールが歌うにつれて、王さまの顔色はだんだんよくなり、血の気が戻ってきました。死神まで、鳥の歌を聞き入り、「続けて、ナイチンゲールよ、続けてくれ」と言います。

「剣と旗と冠を皇帝さまに返していただけるなら」。

歌を聞きたかった死神は、王さまの持ち物を返しました。ナイチンゲールは歌い続けました。静かな墓地のことを歌いました。

白いばらや、ニワトコの花がかぐわしい香りを放ち、草木はみずみずしい緑になり、まだ生きていた人々は涙を流す墓地のことを。

死神は、自分の庭に帰りたくなり、窓から出ていきました。

「ありがとう、ありがとう。国から追放した私のところに、また戻ってきて歌ってくれるなんて。おまえは、私を死から救ってくれた。いったいどうやって、礼をつかわそうか?」

「もうお礼ならいただいています。はじめて、皇帝さまに歌ったとき、涙を流してくださったでしょう。歌い手にとって、どんな宝石よりもすばらしいものをいただいたのです。さあ、もう寝てください。そして元気になってください。私が歌っているあいだに」。

皇帝、元気になる

鳥の声を聞きながら、皇帝はぐっすり眠り、朝にはすっかり元気になっていました。皇帝は死んだと思っていたので、家来は誰一人戻ってきていませんでしたが、ナイチンゲールはまだ歌い続けていました。

皇帝:ずっとここに、いつも私といっしょにいておくれ。歌いたいときだけ歌ってくれればいいから。細工物の鳥はもうこわすから。

鳥:いいえ、できるだけあなたのおそばにいるようにしますが、ここに住むわけにはいきません。自由に来させてください。

私は、国中の人々の歌を歌います。ハッピーな人や、悲しんでいる人、いいこと、悪いこと、すべて歌に歌います。朝廷から遠いいろいろな場所を飛んで、いろいろなことを見て、それを歌います。

1つだけ約束をしてくれたら、ここに来て歌いますよ。

皇帝:なんだってきくぞ。

鳥:1つだけです。何でも皇帝さまにお話しする小さな鳥のことを、誰にも言わないでください。そうすれば、なにもかも、もっとよくなります。

こう言うと鳥は飛び去りました。

皇帝の死体を処理するつもりで、家来がやってきたとき、皇帝は、「おはよう」と言いました。

原文(英語)はこちら⇒ Hans Christian Andersen : The Nightingale

本物か作りものか?

私のあらすじだけだとおもしろさがあまり伝わらないでしょうが、この童話、原文はすごくおもしろくて、わりと好きな話です。

いろいろな寓意やメッセージを読み取れる話ですが、大きなテーマは「本物VSイミテーション」となるでしょう。

本物のナイチンゲールのように鳴ける細工物を作るのは不可能だと思いますが、この話に出てくる細工物は、宝石がついていて、きれいだったから、それもあって、人々は喜んだのでしょうね。

細工物は本物と違って意志を持たないので、ねじをまけば、同じ歌を何百回でも歌います。まあ、言ってみればお人形さんのようなものです。

この話にでてくるナイチンゲールは、かなり自分を持っているので、朝廷暮らしにはなじみませんでした。

ですが、そういう意志や思いがあるからこそ、この鳥は、最後に皇帝のところに来て、歌声をきかせます。

何でも自分の思い通りになる作り物は、下手をすると持ち主がだめにしてしまいますが、本物は、その意志を尊重してやれば、すばらしいものを長く与えてくれるのです。

話の背景

シノワズリ

この童話は当時、ヨーロッパで流行していたシノワズリ(中国趣味)を意識して書かれたものです。ただ、舞台をヨーロッパにしたほうがしっくり来る話だと思います。ナイチンゲールはヨーロッパの鳥なので、あらすじも「うぐいす」としたほうが、よかったかもしれない、と今になって思います。

ですが、うぐいすは緑色だから、ナイチンゲールにしておきました。

スエーデンのナイチンゲール、ジェニー・リンド

この話は、アンデルセンが片思いしていたジェニー・リンド(1820-1887)というスエーデンのオペラ歌手との関係からヒントを得た話だとひろく言われています。

ジェニー・リンド( Jenny Lind )(1862)

ジェニー・リンドは、1840年にコペンハーゲンに来て、アンデルセンと知り合ったのです。アンデルセンは彼女と結婚したかったらしいのですが、リンドのほうは、「いいお友達でいましょう」と言ってやんわり断りました。

その後リンドは、有名になります。1848~1849年は、リンドは、作曲家のショパンに恋をしていて、結核で寝込んでいたショパンのために歌を歌いました。

ショパンは、彼女の歌声を聞いていた時、「気分がよくなった」と手紙に書いています。リンドは、メンデルスゾーンともとても親しかったそうです。

芸術家に愛されるタイプだったのでしょう。

さて、私は、よく、アンデルセンは足や靴にこだわっていると書いていますが、『小夜啼鳥』でも、それがうかがわれます。美しい歌を歌った鳥に、皇帝はお礼として履物を与えようとしています。

これはもしかしたら、本物の履物ではないのかもしれません。鳥の首にかけようとしていますから。中国の履物は室内履きみたいで軽いでしょうが、鳥の首にかけるのは無理があると思います。

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