ブレーメンの音楽隊(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

リュート グリム童話

グリム童話から、『ブレーメンの音楽隊』を紹介します。

原題は、Die Bremer Stadtmusikanten 英語のタイトルは、The Bremen Town-Musicians

有名な童話です。

内容を知らない人は、『ハーメルンの笛吹き男』とイメージがまざって、動物たちが楽しく音楽を演奏しているところを思い浮かべるかもしれません。

実際は、この童話に出てくる動物は、一般的な意味での音楽は奏でないし、ブレーメンにも住んでいません。

1行のあらすじ

年老いて役たたずになった動物4匹が、うまい具合に泥棒の家をのっとる話。

年老いたロバ

あるロバは、長年とうもろこしを入れた袋の運搬に活躍していましたが、年を取り、力がなくなったので、仕事ができなくなりました。

「荷物は運べないけど、街の楽隊で演奏ならできる」、こう思ったロバは、ミュージシャンになるためにブレーメンへ向かいます。

年老いた猟犬

途中、ロバは、猟犬がへたっているのを見ます。この猟犬も年をとりすぎて、狩りができなくなり、主人に殺されそうになったので、逃げだしてきました。

ロバ「あのさ、ぼく、ブレーメンに行くんだよ。そして、タウンミュージシャンになるんだ。きみも、そうしたら?

僕はリュートを演奏するから、きみは、ティンパニをやればいいよ」。

こう言われて、猟犬もその気になりました。

年老いた猫

街に向かう途中、ロバと猟犬は、落ち込んでいる猫に出会います。

猫は、年をとりすぎて、もう前のようにネズミを捕れないから、女主人に、溺れ死にさせられそうになって逃げ出してきたのです。

ロバは、猫にミュージシャンになることをすすめます。

ロバ「きみは夜の音楽(night-music)に詳しいから、ミュージシャンに向いてるよ」

3匹は連れ立ってブレーメンに向かいます。

年老いたオンドリ

農場を通りかかると、オンドリが鳴いていました。

このオンドリは、長年、女主人に洗濯日和を教えていたのですが、次の日曜日に来るお客さんのごちそうとして、今晩、殺されてしまう運命でした。

ロバは、オンドリに、いっしょにブレーメンに行って、音楽隊に入ることをすすめます。

ロバ「きみはとてもいい声をしているから、ミュージシャンになるべきだ」。

盗賊の家

こうして4匹は、一緒にブレーメンに向かいますが、ブレーメンは遠いので、1日では着きません。

途中、森の中で、野宿をすることにします。

それぞれ、好みの場所に寝ころがったら、高い木の上に陣取ったオンドリが遠くに家の灯りが見えることを発見しました。

野宿より、家の中で寝るほうがいいと、4匹は、その家に向かいます。

実は、この家は盗賊のアジトで、彼らは、テーブルにごちそうを並べ、楽しそうに飲み食いしていました。

初めてのコンサート?

4匹の動物たちは、盗賊を追い出すプランを話し合います。

一番背の高いロバが、窓枠によりかかり、その上に、猟犬が乗り、その上に、猫が乗り、一番上にオンドリが乗ったところで、4匹は、音楽を奏でました。

といっても、ただ一斉に大声で鳴いただけです。その後、窓を割って、家の中に押し入りました。

変な声とともに、得体のしれない何かが、突然、窓から入ってきたので、盗賊たちは、幽霊が出たと勘違いし、森の中へ逃げます。

その後、動物たちは、ごちそうを心ゆくまで食べ、おなかがいっぱいになったところで、思い思いの場所で、寝ることにしました。

ロバは庭のわらの上、猟犬はドアの影、猫はかまどの上、オンドリは屋根の上です。長旅で疲れていたので、4匹はすぐに眠りに落ちました。

さんざんな目にあう盗人

真夜中をすぎて、盗賊たちは、家の灯りがすっかり消えたことを遠くから確認しました。

「せっかくのアジトを失うのはもったいない」と思った盗賊たちは、一人に、家の様子を偵察に行かせました。

男が、ろうそくを持って、台所に入ると、赤いものが見えます。これは猫の目ですが、男は、火がついた石炭だと思って、ろうそくを近づけました。

びっくりした猫は、男に飛びかかり、唸り声を出し、思いっきりひっかきました。

男が逃げると、ドアのところにいた犬が驚いて、男の足をかみました。

庭に逃げ出すと、ロバが後ろ足で、男を思いっきり蹴りました。

さらに、物音で目をさましたオンドリが、屋根から飛んできて、「コケコッコー!」と大声で泣きます。

住まいが見つかった

必死で仲間のもとに戻った男はリーダーにこう報告しました。

「ああ、怖かった。おそろしい魔女がいて、うなって、いきなり長い爪でひっかかれた。ドアのところには、ナイフをもった男がいて、足をぶすっとやられた。

庭には、黒い化け物がいて、こん棒でおいらをたたいた。

屋根には判事がいて、『盗人をここへ連れて来い!』って大声で言うし。だから、もう必死で逃げてきたんだ」。

この事件があってから、盗賊たちは家に戻るのはあきらめました。4匹のブレーメンの音楽隊は、ここが気に入って、住み着くことにしました。

原文(英語)はこちら⇒Grimm 027: The Bremen Town Musicians

教訓

この童話から、いろいろな教訓を引き出せますが、3つだけ書いておきましょう。

協力しあうことが大事

仲間と協力しあいチームワークを発揮すると、物事をなしとげられることができることが、動物たちの行動からわかります。

森で野宿するときも、家で寝るときも、動物たちはおのれの習性にしたがって、それぞれで寝場所を確保します。これが功を奏して、盗賊の家を見つけることができたし、偵察に来た男を追っ払い、かつ、盗賊たちを永久に家から遠ざけることができました。

第2の人生の存在

年をとって、体力がなくなり、昔のように働けなくても、あきらめることはありません。

ロバの飼い主はやさしい人なのか、ロバを殺そうとはせず、「はて、このロバをどうしようか」と考えあぐねていましたが、ほかの動物はみな、主人に殺されるところでした。

しかし、最初の仕事をリタイアしたからといって、そこで人生が終わるわけではないのです。

老人には力がなくても知恵があるので、その知恵を活かすべきです。

・・・とはいえ、こんなこと、童話を読んでいる子供にはピンと来ないかもしれません。

冷静な判断が必要

盗賊たちは、動物のことを、幽霊や化け物と勘違いし、結果的に家を取られてしまいます。

もう少し、冷静に判断していたら、こんなことにはならなかったでしょう。

オンドリの鳴き声を判事の声と勘違いするなんて、日頃から、よっぽどびくびくしながら暮らしていたのでしょうか?

それとも、お酒を飲んで、判断力が鈍っていたのでしょうか?

昔は電気がないから、夜は真っ暗闇で、動物と化け物の区別がつきにくい、ということを考え合わせても、もう少し落ち着いて、状況を判断したいところです。


それにしても、なぜロバはミュージシャンになろうと思ったのか?

リュートを弾くつもりだったみたいですが。

昔、音楽隊とすれ違うか、演奏を聞いたか何かして、あこがれていたのかもしれません。

しかし、結局、ブレーメンには行かず、この家で暮らすことにしたから、特に、音楽を追求したいという強い意志があったわけでもないようです。

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