ヒラリー・ダフ主演の A Cinderella Story という映画の感想です。シンデレラの時代背景を現代のロサンゼルス(サン・フェルナンド・バレー)にしたアダプテーションです。私はけっこう好きです。
日本では劇場公開されず、アメリカでの公開(2004年の夏)の翌年に、DVDとVHSとして発売されました。日本語吹き替え版もあります。
シンデレラ・ストーリーの予告編
この予告編を見ると、ファンタジー、あるいはおとぎ話ふうに見えますが、実際はごくふつうの青春ラブコメディ、学園もの、ロマンティック・コメディで、魔法は出てきません。
シンデレ・ラストーリー基本情報
- 監督:マーク・ロスマン
- 脚本:リー・ダンラップ
- 主演:ヒラリー・ダフ(サム・モンゴメリー)、チャド・マイケル・マーレイ、ジェニファー・クーリッジ(フィオナ、まま母)、ダン・バード(カーター、サムの友だち)。
- ジャンルは、ファミリー映画、コメディ映画(でも、そこまで笑えません)。
- 評論家には受けが悪いのですが、制作費が1900万ドルなのに対して、興行収益は、7000万ドル(ワールドワイドで)とよく、人々に好かれている映画です。
- 上映時間:96分
あらすじ
ヒラリー・ダフ扮するサムは高校2年か3年。8年前、父親を亡くし、父が、亡くなるちょっと前に再婚したまま母、フィオナに、ずっとしいたげられています。変なまま姉2人もいます。
亡き父はダイナーを経営しており、いまは、まま母のものとなったそのダイナーで、サムは、朝、学校へ行く前も、放課後も、週末も働いています。成績のいいサムの志望校はプリンストン大学で、学費を稼いでいるのです。
サムにはオンラインで知り合った、親しい男子学生(同じ高校)がいて、メール、テキスト、チャットを使って、毎日のように連絡をとりあっています。
彼は、ハロウィンに学校で行われる仮装パーティで会おうとサムに言います。お互いハンドルネームでのやりとりで本名は知りません。
母親に仕事をたくさん押しつけられ、パーティに行けそうになかったサムですが、ほかの従業員や、親友カーターの協力を得て、サムはシンデレラの扮装でパーティに行き、目当ての男子学生と会って、楽しく会話し、ダンスをします。
王子さまの扮装をしていた彼は、フットボールチームのエースで、学園内のスター、オースティンでした。
対するサムは、学校では、「ダイナーガール」と皆にからかわれる、みそっかすのため、自分がサム・モンゴメリーだと彼に打ち明けることができず、もう彼と親しくするのはやめようと思います。
パーティで会ったシンデレラと、どうしてもまた会いたいオースティンは、学校中にちらしを貼って、シンデレラを探します。
サムのパソコンの画面を盗み見たまま姉2人(同じ高校に通っている。ということは、サムと同じ年?)は、オースティンにふられた学園一の美女(意地悪)とそのとりまきに、あること、ないこと言いふらします。
そして、フットボールチームのイベントの席で、シンデレラの正体をばらす、ものすごく悪意のこもったお芝居をするのです。
それを見たオースティンは、サムのことを誤解し、サムは涙にくれるのですが…。
シンデレラ度
シンデレラの4つの要素の検証です。4つの要素について⇒ アッシュペット:あるアメリカのシンデレラ (1990)の感想。
家族にしいたげられている少女
サム・モンゴメリー。サムはダイナーの仕事だけでなく、家では食事のしたくなど、家事もしています。
母親はプリンストン大学から届いた合格通知を捨てて、不合格を知らせる手紙をサムに見せます。
助けてくれる存在
ダイナーの従業員のロンダ、親友のカーター、ほかの従業員もサムの味方です。サムは、素直でやさしい性格なので皆に好かれています。
それなのに、学校でカーター以外の友だちがいないのは、家事や仕事で忙しく友だちづきあいする時間がないからなのでしょう。
ダンスパーティ
学校のハロウィンパーティー。サムは白いドレスに、目のまわりだけ隠れるマスクをしました。
トップの画像にあるのと似たマスクです。カバーする部分が少ないので、私なら、サムだとわかると思いますが、オースティンは気づきません。
靴による本人の確認
靴で本人を確認する場面はありません。そもそも靴は脱げません。
まま姉たちが、オースティンに、「実は私がシンデレラだったのよ」と言ったとき、オースティンは、「彼女は立ち去るときに落とし物をしたんだけど、それが何か言ってみろ」と、本人である証拠の提示を求めます。
サムはパーティから急いで帰るとき、携帯電話を落とし、オースティンが拾ったのです。
サムは、靴のストラップに携帯電話をひっかけていました。
なぜこんな不自然なことをしているのかというと、ドレスにポケットがないからでしょう。財布などは車に置いてきているようです。メル友に会えないときのために、携帯電話はどうしても持ち歩く必要があったのだと思います。
サムは、 12時までにダイナーに戻らないといけないので、パーティ会場に入ってすぐ、カーターが、11時45分にアラームが鳴るようにサムの携帯にセットします。
オンラインで芽生える恋
サムとオースティンは、リアルでも会っていますが(ダイナーのウエイトレスと客として)、基本的に、メールやメッセージのやりとりをして関係を深めていきます。
メッセージの内容から、ふたりは価値観が似ていることがよくわかり、スター生徒とみそっかす(といっても成績はオールA)という違いは関係なく、本当に相性がいいのだと納得できます。
Ella Enchanted の記事で、エラと王子の文通の話をしましたが⇒ Ella Enchanted を読んだ感想。 人間は文章のやりとりだけでも、親しくなったり、恋愛したりできるのです。
むしろ文章だけのほうが、もりあがるかもしれません。そういう恋を描いている小説や映画もありますね。
本当の自分になることが重要
メッセージのやりとりで親しくなっても、いつかは、対面しないと恋の成就はありません。会ったとき、自分が誰であるのか、すぐにサムは言わなかった(言えなかった)から、のちのちややこしいことになります。
シンデレラの話は、ステータス(身分)の物語とも言えるため、シンデレラや王子のステータスが変わったり、いつわりのステータスのまま会ったりする展開になるアダプテーションが多いです。
その場合、結局は、本当の自分にならないと、幸せになれません。
シンデレラ・ストーリーも、最後は、サムはサムとして、オースティン(ずっと父親の期待にこたえようとしてがまんしていた)はオースティンとして、自分の気持ちに正直になり、ハッピーエンドを迎えます。
「めちゃくちゃ感動する!」という映画ではありませんし、美人でいじわるな女子生徒は、いかにもステレオタイプだし、
ダイナーで働いているときから、ヒラリー・ダフは充分かわいいのになぜ他の生徒にばかにされるのだ? どうしてあんないいお父さんが、フィオナなんかと再婚したのだ? という疑問はあります(フィオナとお父さんは価値観が真逆だと思います)。
ですが、おもしろくもなんともない学園コメディが多い中、シンデレラ・ストーリーは、すがすがしい作品だと思います。
ヒラリー・ダフとチャド・マイケル・マーレイの相性もばっちりです。軽快なロックやポップスを集めたサウンドトラックもいいですよ。
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