Confessions of an ugly stepsister を読んだ感想。

チューリップ シンデレラ

Confessions of an ugly stepsister 直訳:『1人の醜い継姉妹(まましまい)の告白』をKindleで読みました。 シャルル・ペローのシンデレラの物語をベースにした小説です。

基本情報

  • 著者: Gregory Maguire (グレゴリー・マグワイヤ)
  • 言語:英語
  • ページ数 384ページ、109,185ワード
  • 1999年11月1日出版
  • シンデレラの裏話的歴史小説(児童小説ではなく一般向け)

あらすじ

Confessions of an ugly stepsister coverの表紙

時は17世紀、少女アイリスは、父が亡くなった後、母のマーガレッタと姉のルース(口をきかない自閉症っぽい、からだの大きな少女)とともに、イギリスからオランダに渡る。ここには母の祖父の家があるので、世話になるつもりだった。

アイリスは全然きれいではなかったが、賢くてやさしい子で、横暴な母に従い、姉の面倒もよくみている。

しかし祖父は亡くなっており、お金のない母は、家事労働と引き換えに、マスターと呼ばれる画家の家に3人でやっかいになる。アイリスは、絵を描くことに興味をもち、さらにマスターの弟子のキャスパーに恋心を抱く。

ほどなくして、金持ちの商人がマスターのところに、娘の肖像画の注文にやってくる。商人は、アイリスが英語を話せることがわかると、自分の娘の相手をさせるために、アイリスに家にくるように言う。

アイリスだけでなく、母とルースも、商人のところで世話になることになった。ここには、アイリスより少し年下のクララというとてつもない美少女がいた。

しばらくしてクララの母が亡くなり、マーガレッタが商人の後妻におさまったので、アイリスとルースは、美少女クララと姉妹になる。

金持ちと結婚した母は、家事をやらなくなり、買い物などのぜいたくをするようになった。代わりに、クララが台所で働くようになる。なぜなら、彼女は外に出ることがきらいな引きこもり体質で、まま母のいない台所が一番安心できるからだった。

商人は、チューリップの球根の投機をしていたが、価格が暴落してすごい貧乏になり、ショックで健康を害し、寝付く。マーガレッタは、お金を得るため、クララを金を持っている男と結婚させようとする。クララはおどろくほどの美女に成長しており、彼女と結婚したい男は何人もいた。

そんな頃、フランスから、 マリー・ド・メディシスが街にやってきて、名付け子の王子の嫁探しのために舞踏会を開く。

マーガレッタは、娘を王子と結婚させるため、借金をして、ドレスをあつらえ、3人で舞踏会へ行く。

クララは舞踏会にも王子にもまったく興味はなかった。しかし、 母に嫌いな男と結婚させられそうになっているのを気の毒に思ったアイリスは、キャスパーに頼み、ドレスを用意して、母に内緒でクララを舞踏会に送り込む。クララなら絶対王子の心を射止めるはずだと思ったからだ。

美は神様の贈り物かそれとも呪いか?

この小説の主人公はアイリスで、彼女の視点で物語がすすみます。シンデレラはクララですが、彼女は決してやさしいいい子ではありません。

絶世の美女ではありますが、甘やかされて育ち、他人の気持ちなどあまり介さないタイプです(成長するにつれてましにはなります)。自分は changeling だと信じる神経症的な子で、家から出ようとしません。

changeling とは、妖精が子供をさらって、代わりに残した醜い子(馬鹿な子)、取り替え子、と辞書にあります。

3歳ぐらいのとき、誘拐されたことがあり、それがきっかけか、実母が生きていたときは、部屋に幽閉されていたし、実母が死んだあとも、自分から部屋に閉じこもっていました。

クララは幼いときから、その美しさのせいで人に注目され、まるで見せもののように利用されてきました。父は、仕事で人を呼ぶとき、クララにお茶を淹れさせたり、そばに仕えさせたりします。きれいな我が子を自慢するというよりも(そういう気持ちもあったでしょうが)、彼女の美しさを利用して、商談を成立させるためです。

クララの肖像画を描かせたのも同じ理由からです。

クララは人前に出ることも、人にじろじろ見られることも大嫌いなのです。だから、マーガレッタが台所仕事を放棄したとき、自分から台所にこもって、目立たないようにみすぼらしい服を着て、灰にまみれて暮らすことを選びます。

自分で自分のことを、私はアッシュガール、シンダーガール、シンデレラよ、と言うのです。

シンデレラが自分から灰まみれになった、というのはおもしろい着想だと思います。

気の毒なアイリス

アイリスはやさしい子なので、クララをいじめたりはしません。クララの態度のほうがよっぽど横柄です。しかし、クララは人を従えていばりたいという女王さまタイプでははありません。

とにかく、外に出るのはいやで、家に閉じこもっていたいだけなのです。誰にもかまってほしくありません。アイリスは、そういうちょっと変わった性格のクララと、何ひとつまともにできないルースと、残酷なことばかりいう母親に囲まれて、暮らしています。

こんなクセのある人たちの間で、よく正気を保っていられるものです。

アイリスの心のよりどころは、絵に対する興味とキャスパーとの交流です。マスターも、ものすごくクセがありますが、アイリスに絵を描いてみないかとすすめるのは彼です。

ただ、アイリスとて、100パーセント善良ではなく、どす黒いことを考えます。なぜなら、クララがあまりにも美しすぎて、どうしても自分の不器量さと比べてしまうからです。

一番の悪人は母親

小説の最初のほうでは、マーガレッタは子供を飢えさせないために、がんばる、よい母親のように見えるのですが、話が進むにつれて、マーガレットの身勝手さが浮き彫りになります。

この人は、とにかく口が悪くて、ルースは、うすのろの牛のような子、アイリスはあまりにも不器量でどうしようもない子だと言います。ほかにもひどいことをのたまいます。

実の娘が可愛くないのでしょうか?

クララの美しさは認めていますが、「きれいなことなんて何の役にもたたない」と言います。しかしそう言うわりには、クララを利用して、お金を得ようとします。

アイリスがキャスパーと相思相愛になりそうで喜んでいるのに、絵描きなんかと結婚させたくないマーガレッタは、キャスパーはゲイだとアイリスに嘘を言います。

ネタバレになるので書きませんが、もっとひどい悪事もします。

クララも自分のことしか考えていませんが、彼女の行動は人を巻き込むことはありません。しかし、マーガレッタの自分本位な行動は、周囲の人をどこまでも巻き込みます。

マーガレッタは、ペロー版やほかのシンデレラに出てくるまま母より、ずっとたちが悪いです。

着想はおもしろいけど

シンデレラの話を異母姉妹の視点から描き、しかも、ここまで変人のシンデレラを登場させるアイデアはとてもおもしろいと思います。

ですが、この小説は、展開がスローで、なかなか話が進みません。最初のほうは、あまりに退屈で、挫折しそうになりました。アイリス、ルース、クララが姉妹になってからは、おもしろくなっていきましたが。

全体的に文芸的というか、描写が細かく、こった言い回しが多いし、宗教的な話もあります。

この小説に魔法は出てきませんが、changelingやimp(鬼の子、小さな悪魔)の話がよく出てきて、仙女が出てきてもおかしくない雰囲気があります。

登場人物を好きになれず、共感しにくいという問題もあります(キャスパーはいい人ですが、出番が少ないです)。

クララとマーガレッタは、時代が今なら、絶対にセラピーが必要なレベルのメンタルですし、ルースだって、ただのおバカではないとあとでわかるので、「いったい何を考えているのだ、おまえは?」と問いただしたいです。

エピローグでは、登場人物のその後が簡単に語られますが、盲目になったり、早死したりと暗いです。

読後感は、決して、明るいものではありません。でも、まあ読んでよかったとは思います。

童話のリテリングや歴史小説好きにはおすすめです。

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