9世紀に書かれた、中国のシンデレラ、イェ・シェン(葉限 しょうげん)のあらすじの続きです。
魚の骨に祭り用のドレスを頼む
若い男女の出会いの場であるお祭りが近づいていました。若い女性はみな、美しいドレスを着て、お祭りに出ることを楽しみにしており、イェ・シェンも例外ではありません。
しかし、継母は、イェ・シェンがお祭りに行くのを禁じました。イェ・シェンが結婚相手を見つけて、自分の土地を半分やることになるのがいやだったのです。
継母とその娘が祭りに出かけたあと、イェ・シェンは魚の骨に、「ドレスをください」と頼みました。すると次の瞬間、イェ・シェンは、鳥の羽のついた豪華なガウンを身にまとっていました。足には、羽のように軽い黄金の靴をはいています。
靴を片方落としたまま逃げ帰る
イェ・シェンが祭りに行くと、皆がその美しさに驚きました。男性たちはこぞってイェ・シェンのまわりに集まって歌って踊り、女性たちは、遠くから羨望のまなざしでイェ・シェンを見ていました。
イェ・シェンのまま姉もその1人です。姉は、イェ・シェンをじーっと見ると、「お母さま、あのひと、妹にそっくりじゃない?」と言いました。2人がもっとよくイェ・シェンを見ようとしたとき、イェ・シェンも継母と姉に気づきました。
2人に見つからないために、イェ・シェンは、急いで祭りの会場から出ていき、そのと、黄金の靴の片方を落としてしまいました。
王さまが靴を手に入れる
ある商人がイェ・シェンの靴を拾い、数カ月後、トゥ・ハンという国の王さまに売りました。島を持つ大きな国の王さまです。
小さな靴に魅了された若い王さまは、その持ち主を探さずにはいられませんでした。国中の女性に靴を試させるように、家来に命令しましたが、誰の足にも合いませんでした。
王さまは、自ら、靴が落ちていたという、山へ行きました。そこは貧しい地域で、こんなところに、靴の持ち主がいるとは思えなかった王さまですが、それでも近隣の村の家すべてにあたって靴の持ち主を探しました。
執念でイェ・シェンを見つける王さま
とうとう、王さまの家来は、もう片方の靴とイェ・シェンが祭りで着ていたガウンを、イェ・シェンの部屋のたんすから見つけました。
イェ・シェンは王のもとに連れていかれました。イェ・シェンの美しさに気づいた王さまですが、このぼろをまとった村娘が自分の探し求めていた女性だとはにわかには思えませんでした。そこで、王さまは、イェ・シェンにガウンと靴を身につけるようにいいました。
イェ・シェンが靴をはくと、それは足にぴったりあい、豪華なガウンをまとったイェ・シェンは、妖精のように美しく、天使のようにほほえんでいました。
王さまはこの娘こそ、自分が探していた娘だとわかりました。
継母とその娘は、イェ・シェンにこれまでのことを許してほしいと必死に懇願したので、イェ・シェンは2人を許すことにしました。
王さまはイェ・シェンを自分の王国につれていき、2人はそこで結婚し、末永く幸せに暮らしました。
原文はこちらを参照しました⇒ https://www.slps.org/cms/lib03/MO01001157/Centricity/Domain/4081/Cinderella–Ye%20Xian–China%20ancient%20and%20modern.pdf
イェ・シェンの別の終わり方
童話や口承話によくあるように、イェ・シェンにはいくつかバージョンがあります。上に書いた話では、イェ・シェンの継母とその娘は、イェ・シェンに許されて、おとがめを受けていません。
しかし、別のバージョンでは、母と娘はずっと洞の中で暮らしていて、あるとき、どこからともなく、石がたくさん落ちてきて、その石に打たれて死んでしまいます。
また、王さまが欲を出し、イェ・シェンの持っていた骨に宝物を出すように頼むというのもあります、1年前は宝物が出てきたものの、次の年には魔法の効力がなくなっていたので、王さまが真珠と骨を一緒に埋めておいたら、津波で、骨も真珠も流されてしまいました。
シンデレラと纏足(てんそく)
シンデレラの話に出てくる靴は、とても小さく、ふつうの大人の女性の足は入りません。だから、シンデレラの靴は、纏足をしている女性の靴であった、という説があります。
纏足は、小さい足の女性のほうが魅力的である、という考えから生まれた風習だと言われますが、それ以外にもいろいろな理由があるそうです。昔は、纏足をしているのは貴族階級の証(あかし)、と言われましたが、近年の研究によれば農村の女性でも纏足をしていたそうです。
こちらの記事には、「 纏足には、織物などの仕事を手伝うために女性たちを何時間も座らせるという目的があった 」と書かれています⇒ 中国の女性はなぜ足を小さくさせられたのか。纏足(てんそく)の理由、新説が研究で明らかに | ハフポスト
纏足の習慣は、唐の末期に始まったそうなので、イェ・シェンの話よりは少しあとだと思います。しかし、イェ・シェンに出てくる王さまが、「足が小さい人は魅力的な人」と思っていたことは間違いありません。
王さまは、一度も会ったことも、話したことも、見たこともないイェ・シェンの靴を見て、持ち主の足が小さいことに、恋心を抱き、探し回ったのですから。
今でも、靴はフェティシズムの対象の1つですが、昔からそうだったのでしょう。女性でも、靴が大好きで集めまくる人もいますしね。
私にとっては靴は靴でしかありませんが。
コメント
グリムの話に似ていますね。ペローよりもグリムが伝承の原型を残しているということがよくわかりました。ペローは宮廷詩人でグリムが言語学者という性格の違いなんだろうけど、やっぱりペローはセンスいいですね。展開もスッキリしているから、一番世界に普及したのかもしれませんね。
グリムに似てますかね?
魚の骨がドレスを出してくれたのは、ハシバミの木が出してくれたのに、似てると言えば似ていますが。
魔法柄い(フェアリーゴッドマザー)、かぼちゃの馬車、ガラスの靴は、ペローの創作だそうです。
どれもビジュアル映えするので、映像作品にはこっちのほうが向いていますね。
特にガラスの靴が。ペローは天才なのかもしれません。
しかし、シンデレラ=グリム童話と思っている人が多く、ペローの名前はあまり知られてないですよね?
グリム童話のシンデレラは、残酷すぎるのがちょっとまずいですが、ハシバミの木や鳩が出てきて、映像にすると屋外のシーン(自然)が多くなり、そこはいいんじゃないかと思います。