デンマークの童話作家のハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805-1875)の本、『 子どものための童話集、 第1冊』に収録されている、『エンドウ豆の上に寝たお姫さま』のあらすじを紹介します。
原文はデンマーク語で、読めないので英訳からあらすじを書きました。ひじょうに短い童話です。
理想の妻を探し求める王子さま
昔、お姫さまと結婚したいと願っている王子さまがいました。
彼が探していたのは本物のお姫さまです。世界中を回って、いろいろなお姫さまに会ってみましたが、「この人だ!」と思える人に巡り会えません。彼は本物じゃないといやなのです。見つからないので、王子さまはいったん家に帰り、ふさぎこんでいました。
嵐の夜にお姫さまが現れる
ある嵐の晩、城の門を叩く音がしました。王さまが開けてみると、ずぶぬれの女性が立っています。髪、服、靴(ひどくかかとが減っている)までびしょぬれで、全身から雨がしたたり落ちています。
この女性は、自分はプリンセス(お姫さま)だと言いました。
女王さまは、この言葉をいぶかしく思い、本当にプリンセスかどうか確かめることにしました。
女王さまは、寝室に行き、ベッドの上にのっている寝具をひきはがし、エンドウ豆を1つだけ乗せました。それから、その上にマットレスを20枚重ね、さらにその上に羽根布団を20枚重ね、その上に、プリンセスだと名乗る女性を眠らせたのです。
よく眠れなかったお姫さま
翌朝、女王さまがプリンセスにたずねました。
「よく眠れましたこと?」
「え? いいえ、ほとんど眠れませんでしたわ。いったい全体、ベッドに何が入っているのかしら? 何かすごく硬いものが下にあって、私、あざだらけですわ。ほんとにもう、さんざんでした」。
本物のお姫さまのあかし
この言葉を聞いて、王さまも女王さまも王子さまも、この女性が本物のお姫さまだとわかりました。20枚のマットレスと20枚の羽根布団越しに、硬いエンドウ豆を感じることができるのですから。
そんなデリケートなお肌の持ち主は、ほかならぬお姫さまに決まっています。王子さまは、このお姫さまとすぐに結婚しました。とうとう本物のお姫さまを見つけたのです。
エンドウ豆は、博物館に置かれることになりました。いまでもそこにあるはずです。誰かが盗んでいない限り。
これは本当にあったお話ですよ。
原文はこちら⇒ Hans Christian Andersen : The Princess on the Pea このサイトではアンデルセンの全作品を英語かデンマーク語で読むことができます。
アンデルセンは、伝承話を収集したグリム兄弟とは違い、基本的に創作童話を書いた人です。
エンドウ豆の教訓
この話がはじめて世に出たとき、あまり評判がよくなかったそうです。文体がカジュアルで、品がないと批評されたとウィキペディアにありました。ですが、今はとても有名な童話ですね。
とてもシンプルでストレートなところが私は好きです。ひじょうにわかりやすいです。
さて、この話にはどんな教訓があるでしょうか? 話が簡潔すぎて、モラルもへちまもない、と思う人もいるかもしれません。
ですが『不思議の国のアリス』で、公爵夫人が「どんな話にも教訓はあるのよ。ただ、それを見つけることができれば」と言っているように、どんな話にも教訓はあります。
まず、正直は最良の策、という教訓が得られます。このお姫さま、「よく眠れましたか?」という質問に対して、ズケズケと本当のことを言っています。気遣いのある人だと、突然やってきた自分を泊めてくれたのだから「ええ、とてもよく眠れました」と言ってしまうかもしれません。
しかし、本物のお姫さまはわがままに育てられているでしょうから、思ったことを何でも口にしてしまうのです。
次に、マットレスの下によけいな物を入れてはいけない、という教訓もあります。ほんの一粒のエンドウ豆でも、マットレスやふとんの下に置いてしまうとゴロゴロと違和感があり、安眠が得られませんよ、という教えです。これを拡大解釈すれば、細部まで手を抜いてはいけない、というモラルを引き出すこともできます。
また、あやしいと思ったら、テストや実験をして確認してみよ、という教えもあります。王さまと女王さまも、ずぶぬれプリンセスを追い返すこともできたのですが、「ひょっとして?」と思って、ベッドを使ってテストしてみました。そして、見事、息子の嫁を見つけることができたのです。
見た目で判断しなかったのもよかったですね。
それにしても、20枚もマットレスがあるベッドにどうやってよじのぼったんでしょうかね? 昔のマットレスは、今のマットレスのように分厚くはなかったでしょうが。
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