おやゆびこぞう(グリム兄弟 1819)のあらすじ。

雌牛 グリム童話

グリム童話から、『おやゆびこぞう』を紹介します。

英語のタイトルは、Tom Thumb または、Thumbling オリジナルのドイツ語のタイトルは、Daumsdick

『おやゆびこぞう』とひらがなにしたのは、ウィキペディアがひらがな書きだったからで、本によっては、親指小僧、親指トム、おやゆび小僧 というタイトルになっています。

グリム童話には、親指小僧が出てくる話が2つ収録されていますが、今回紹介するのは、KHM 37のほうです。

この記事のあらすじでは、親指小僧を「トム」と呼ぶことにします。

一文の要約

親指ほどしかない小さな少年が、親の家から離れ、いろいろ冒険したのち、また親元に戻る話

親指トムの誕生

まずしい木こりがある晩、妻に言いました。

「子供がいないのは寂しいことだな。ほかの家はにぎやかなのに」

「本当にそうですね。1人でもいいから子供がいれば。たとえその子がすごく小さくても、私たちはとても幸せなのに」

すると本当に、夫婦は妻の言ったとおりの子供を授かりました。

五体満足で健康だけど、背丈が親指ぐらいの子供です。

両親はこの子をとても愛して、可愛がりました。

たっぷり食事をさせたけど、背丈はまったく伸びません。しかし、この子は、輝く瞳をもつ賢い子に育ちました。

お父さんのお手伝い

あるとき、父が森に木を切りにいくとき、「誰か、荷車を持ってきてくれると助かるんだがな」とひとりごちました。

これを聞いていたトムは「僕が持っていく」と言います。

「馬にカートをくくりつけ、馬の耳元にぼくを置いてくれれば、ちゃんと荷車を持っていく」というのです。

母が言われたとおりにしたら、トムは、馬に、ほら右へ行け、次は左だ、と指示をし、本当に父のところに荷車を持っていきました。

2人組に売られるトム

この様子を見ていた男性2人組は、最初、すごくびっくりしましたが、トムを見世物にすれば大金を稼げると思います。

そこで、父親にトムを売ってくれと頼みました。

「とんでもない」

トムをかわいがっている父親は断りました。しかし、「高いお金で買う」という2人組を見て、トムは、父親に耳打ちしました。

「僕を売ってください。大丈夫、ちゃんと帰ってきますから」

こうして、トムは、2人組に売られました。

野ネズミの穴へ

トムは、1人組の1人の帽子の上に乗って、進んでいました。

トム「トイレに行きたいんだけど」

男「そこで用を足しな。なーに、ときどき鳥のふんが降ってくるから、俺は慣れてるさ」

トム「そんな無作法なこと、僕はしないよ。おろしてよ!」

トムがしつこいので、男はトムを地面におろしました。するとトムはすきを見て脱走。

野ネズミの穴に入り込み逃げてしまいました。

牧師の家へ

夜になったので、トムは歩き回るのは危険だと思い、寝る場所を探しました。

幸い、ちょうどいいサイズのカタツムリの殻を見つけ、中に入って寝ようとしたとき、2人の泥棒が通りかかりました。

彼らは、金持ちの牧師から金と銀を盗む方策を相談しています。すかさずトムは

「いい案がある。僕が手伝うよ!」と名乗り出ます。

自分が牧師の部屋にしのびこみ、ほしいものは何でも取ってくるとトムが言うので、泥棒たちは、トムを連れて牧師の家に向かいました。

納屋へ

牧師の家に来ると、トムはさっそく忍びこみますが、やたらと大きな声で、「ねえ、ここにあるの、みんなほしいの?」と叫びます。

泥棒たちが、「静かにしないと人が起きる」とたしなめても、トムはますます大きな声で、「何を取ればいいの? 全部ほしいの?」と叫ぶので、メイドが目を覚まし、様子を見に来ました。

これに気づいた泥棒たちは、大急ぎで逃げ出し、トムはとっさに納屋に隠れました。

誰もいないので、メイドは、気のせいだと思いまたベッドにもどりました。

牛の胃袋の中へ

トムは納屋の干し草の中で眠って、翌日、家にもどることにしました。

ところが、夜明けにメイドが牛にえさをやりにきました。

トムが寝ている干し草をつかんで、牛に食べさせたのです。

目をさましたら、トムは牛のおなかの中にいました。

しかも、どんどん干し草が落ちてきます。

「もうエサはいらないよ! もういらないよ!」こうトムは叫びました。

牛の中から声がするのにびっくりしたメイドは、牧師のところへ走ります。

「牧師さま、すぐに来てください。牛がしゃべっているんです」

オオカミの胃袋の中へ

「何をたわけたことを」と牧師は言いましたが、牛のそばに確かめに行くと、確かに、「もうエサはいらない。もうエサはいらない!」と牛がしゃべっています。

これは悪霊のしわざだと思った牧師は、牛を殺すよう命じました。かくして牛は殺され、トムのいた胃袋は、そのへんに捨てられました。

トムがそこから出ようとしていた矢先、おなかをすかせたオオカミが通りがかり、胃袋ごとトムを食べました。

オオカミと交渉する

トムはおなかの中から、オオカミに話しかけました。

トム「オオカミくん、僕、ごちそうがいっぱいあるところ知っているよ」

オオカミ「え、それってどこ?」

オオカミは、自分の中に何かがいることはまったく気にせず、強い興味を示します。

こうしてトムは、オオカミを自分の家までうまく誘導しました。

オオカミは、下水管(流し)から、トムの家の台所に入り込み、そこにあったごちそうをおなかいっぱい食べました。

ところが、食べすぎておなかがふくれてしまい、帰ろうと思っても、下水管を通ることができません。

トムが、オオカミのお腹の中であばれて物音を立てたので、両親が起きてきました。

無事、親元に戻るトム

オオカミを見てびっくりした両親はそれぞれ斧とカマを持ち、オオカミを殺そうとします。

「父さん、僕だよ。僕、オオカミのおなかの中にいるよ!」

おなかの中からトムが叫びました。それを聞いた父は大喜び。すぐに、オオカミの頭に斧で一撃を加えました。

オオカミはあっさり死んでしまい、その後、両親は、オオカミのおなかを切って、無事トムを助け出しました。

トムが、これまでどんなふうにして家に戻ってきたか説明すると、両親は、「二度とおまえを売りはしない」と言って、トムをしっかり抱きしめました。

参考にした英文⇒Tom Thumb

教訓:自分の強みを活かしましょう

以前、シャルル・ペローの『親指小僧』を紹介しています。

親指小僧(シャルル・ペロー)のあらすじ

ペローの親指小僧に比べて、グリムの親指小僧の話はそんなにおもしろくありません。

もちろん、創作童話であるアンデルセンの親指姫と比べても、見劣りします。

親指姫(アンデルセン、1835)のあらすじ。

まあ、民間伝承の話を忠実に書けば、そこまでドラマチックな話にはならないのでしょう。

ペローの親指小僧はとてもかしこい子供でしたが、グリムの親指小僧は馬鹿ではないけれど、知恵の冴えみたいなものはあまり見せません。

彼の武器は、「やたらと大きな声」です。

牛の胃袋の中で叫ぶと、牛の周囲にいる人に聞こえるし、オオカミの胃袋の中で叫ぶと、そばにいた両親に聞こえるのです。

牧師の家に忍び込んだときも、すごく大きな声で叫び、別の部屋に寝ていた召使いを起こしています。

背丈が親指しかないことを考えると、人間スピーカーと呼びたいほど、大きな声です。

小さな身体と大きな声。

自分がもつ特徴を最大限に利用すれば、たとえ、誰かに売られても、なんとか家に帰ってこれるよ、目的を達成できるよ、というのがこの話の教訓と言えましょう。

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