親指小僧(シャルル・ペロー)のあらすじ

暗い森 その他の物語

シャルル・ペローの『童話集』より、Le Petit Poucet のあらすじを紹介します。邦題は、親指太郎、または親指小僧です。

ごく簡単なあらすじ

長いあらすじを読みたくない人のために、短いあらすじを書いておきますと、

生まれたときは親指ほどの大きさだった少年が、機転をきかせて、自分とその兄弟の命を救い、かつ財産を手に入れて家に帰る話です。

小柄で病弱の末っ子

昔あるところに木こりとその妻がいました。2人には7人の男の子がいて長男は10歳、末っ子は7歳です。末っ子は病弱でほとんど口をききませんでした。だまっているのは知恵のある証拠ですが、皆、彼をばかだと思っていました。

この子は大変小さく、生まれたときは親指ほどのサイズでした。だから皆に、親指小僧と言われ、からかわれていました。

両親は子供をかわいがっていましたが、貧乏すぎて食い詰めて、子供を森に捨てることにしました。飢えて死ぬ姿を見たくなかったからです。しかし、親指小僧は両親がこの話をするのを聞いていました。

森に捨てられる子どもたち

翌朝、両親は子どもたちが森で木を集めているとき、こっそり姿を消します。しかし、このときは、子どもたちは無事に家に帰ることができました。というのも、親指小僧が朝方、川辺で白い小石をポケットに詰め込み、森に来る時、1つずつ落として帰り道がわかるようにしていたからです。

子どもたちが戻ったとき、両親はお金をもらったところだったので、喜びました。しかし、ほどなくして、また食い詰めて、子どもたちを森に捨てることにしました。

このときも、親指小僧は両親の話を聞いていました。しかし、ドアにロックがかかっていて、川辺に行くことができなかったため、親指小僧は、パンのかけらを落としながら森へ行きました。

前回と同じように、森で両親は姿を消し、親指小僧はパンのかけらを目印に兄たちを引率して帰ろうとしましたが、なんと小鳥がパンくずを食べてしまい、道がわかりません。

人食い鬼の家に行き着く

男の子たちは迷子になり、あたりは暗くなり風が吹き始めました。そのうち雨も降り出し、みな、すべってころんで泥だらけ。親指小僧が、木にのぼって、あたりを見回すと、遠くのほうにろうそくの灯りが見えます。

子どもたちが灯りをたよりに歩いていくと、一軒の家にたどりつきました。

戸をたたくと、女の人がでてきました。「森の中で迷いました。どうか、泊めてください」、親指小僧は言いました。「まあ、かわいそうに。でもここは人食い鬼の家ですよ」。

「狼に食べられるより、おじさんに食べられるほうがましかも。それに、おばさんが頼んでくれたら無事でいられるかもしれない」。 そう 親指小僧が言うので、鬼の妻は男の子たちを泊めることにしました。

人食い鬼に見つかる

子供たちを火にあたらせていると、人食い鬼が帰ってきたので、妻は子どもたち急いでベッドの下に隠しました。妻は鬼に、晩ごはん(血のしたたっている羊の肉)を供します。人食い鬼は、新しい肉の匂いに気づきました。

妻はごまかそうとしましたが、鬼はベッドの下の男の子たちをあっさり見つけ、引っ張りだして包丁で切って食べようとします。

「きょうの晩ごはんはたっぷりあるから、明日食べればいいじゃない」と妻は必死で鬼を説得し、それもそうだと思った鬼は、子どもたちにたんとごはんをあげて太らせるように言うと、お酒を飲み始めました。

人食い鬼の7人の娘

人食い鬼には7人の娘がいて、そろって同じベッドで寝ていました。みな、金のかんむりをしています。男の子たちの夕食がすむと、妻は、娘と同じ部屋に連れていき、同じようなベッドに寝かせました。

親指小僧は、人食い鬼の気が変わって、夜のうちに来るかもしれないと思い、娘たちのかぶっているかんむりと、自分たちのかぶっている帽子( bonnets 、ナイトキャップ?)を取り替えました。こうすれば、人食い鬼が娘たちと自分たちを間違えると思ったのです。

まさに、本当にそうなりました。真夜中になると人食い鬼は先に仕事をすませておこうと、大きな包丁を持って部屋にやってきました。男の子たちのベッドのほうにやってきて頭をさわるとかんむりがあるので、こっちは娘だと思い、もう1つのベッドへ行き、自分の娘7人の首をかき切ったのです。

その後、人食い鬼は眠りにつきました。親指小僧は兄たちを起こして、一緒に逃げました。

ミスに気づく人食い鬼

翌朝、人食い鬼は、間違えて娘を殺してしまったことに気づき、七里の長靴( bottes de sept lieuës )をはいて、男の子たちをつかまえにいきました。この長靴は、長距離を一気にまたげる特殊な靴です。

もうあと少しで家につくところで、 子どもたちは、 人食い鬼がやってくるのを見ました。親指小僧は、中ががらんどうの岩に兄を押し込み、自分もそこに隠れました。

歩きまわって疲れた人食い鬼は、一休みしようと子どもたちの隠れている岩の上に座って居眠りをはじめました。七里の長靴をはいて歩くととても疲れるのです。

長靴を奪う親指小僧

親指小僧は、このすきに兄たちを逃がすと、人食い鬼の長靴をそっと脱がせてはきました。この靴は魔法がかかっているため、はく人の足のサイズにジャストフィットします。

それから、親指小僧は、人食い鬼の妻のところに行き、「人食い鬼が、どろうぼうたちに、金貨と銀貨を渡さなきゃおまえを殺すと脅迫されてます。僕に家からお金を取ってくるように頼みました。ほら、その証拠に僕は彼の長靴をはいています」と言って、妻から、人食い鬼の財産をそっくりせしめました。

さて、この結末はちょっと違うんじゃないか、という人もいます。親指小僧は人食い鬼の財産を取っていないというのです。親指小僧は長靴をはいて、お城にいき、王様に、今日中に軍隊の様子を見てきてあげると申し出たという説があります。

この王様は遠くに送り込んだ軍隊の様子を知りたかったのです。親指小僧は、軍隊の様子を知らせたお礼にたっぷりお金をもらいました。彼はほかにもお使いをしてお金を作り、その後、家に帰りました。

親指小僧が、父と兄に、よい地位を買ってあげたので、みな宮廷で立派につとめました。

教訓

子どもたちがみな美しく、健康で体格がよかったら、どんなにたくさんいても困りません。ところが、中の1人が、病弱で口をきかないと、みな、その子をばかにしてからかったり、いじめたりします。

しかし、ときにはその小さな男の子が、家族中に幸福をもたらしてくれるのです。

原文はこちら⇒ Histoires ou Contes du temps passé (1697)/Le Petit Poucet – Wikisource

山椒は小粒でもぴりりと辛い

日本にも『一休さん』というのがいますが、小柄な人間は、意外と賢いのだよ、役に立つのだよ、というのがこの話のメッセージだと思います。わたくしも、とても小柄なので、わりと好きな話です。

親指小僧の絵本やアニメーションを見ると、手のひらにのるサイズに描かれていることがありますが、原文では、生まれたときは親指サイズだと書いてあるだけです( il estoit fort petit, et, quand il vint au monde il n’estoit guere plus gros que le pouce)。

7歳になるまでに多少は成長していると思います。親指サイズだと、い小石を拾ったり、パンをポケットに入れたり、かんむりと帽子を取り替えることなんてできません。

それでも、兄弟の中では一番小柄だったのでしょう。

やはり、人食い鬼の妻をだますのではなく、王様のお使いをして、お金を貯めたというエンディングのほうが望ましいですね。

なお、『青ひげ』でも、最後に、命拾いした奥さんが、親指小僧と同じように、お兄さんたちに、地位を買ってあげていますが、ルイ14世のころは、お金で買うことができる官職がありました。

宮廷での仕事を買ってあげた、としめるところはいかにもシャルル・ペローらしいです。

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