かしこいモリー(1890 スコットランドの民話)のあらすじ。

暗い森 その他の物語

スコットランドが舞台の伝承話である、Molly Whuppieを紹介します。日本では、『かしこいモリー』というタイトルで絵本が出ています。

ほかにも、モリー・ウェッピー、モリー・フーピイ、モリー・ワッピーなどのタイトルで翻訳があるようです。

Whuppie の読み方は、フゥァッピー(Wを発音しない) か ウワッピー(Wを発音する)だと思いますが、私は、モリー・ワッピーと呼んでいます。

1行のあらすじ

3人姉妹の末っ子である、かしこいモリーが、3度も巨人を出し抜き、王様の息子と結婚する話。

巨人の家に行ってしまった3姉妹

昔、子沢山の貧乏人夫婦がいて、食い詰めたため、一番下の3人の娘を森に捨てました。

3人は、歩いて歩いて、夜になって1軒の家を見つけます。おなかがすいていた3人は、その家のドアをたたいて食べものを請いました。

しかし、ドアにでてきた女の人は、「できないわ。だって、私の夫は巨人だから、あんたたち、殺されちゃうわよ」と言って断ります。

しかし、娘たちはおなかがぺこぺこだったので、「食べたら、すぐに出ていく」と約束して、家に入れてもらいました。

巨人が帰ってくる

娘たちが暖炉の前でミルクとパンの食事をとっていると、巨人が帰ってきました。

「くん、くん、人間の匂いがするぞ」

妻が、かわいそうな子どもたちに食事をさせているt説明しました。すると、巨人は、「泊まっていけばいい」と言います。

実は、巨人には貧乏人の娘たちと同じ年頃の娘がやはり3人いたので、娘たちは、巨人の娘たちと同じベッドに寝ることになりました。

巨人の家で泊まることになったが

さて、貧乏な3人娘の一番末っ子はモリー・ワッピーという名で、とても賢い子でした。

モリーは、皆が寝る前、巨人が、自分と自分の姉たちの首にわらのなわを巻き、自身の娘たちには、金の鎖を巻いたのを見逃しませんでした。

モリーは寝たふりをして起きていて、みなが寝静まったあと、自分たち姉妹の首のなわと巨人の娘のチェーンを取り替えました。

真夜中になると、棍棒をもった巨人がやってきて、暗闇の中、首まわりをさわってチェックし、自分の娘をベッドから出して床に並べ、棍棒でガンガンたたいて殺してしまいました。

モリーは、「逃げなくては!」と思い、姉たちを起こして、巨人の家から一目散に逃げました。

お城の前にたどりつく

朝まで、止まらず走り続けたら、あるお城の前にきました。モリーは、中に入って、その夜起きたことを王様に話しました。

王様「ふーむ、モリー、おまえはとてもかしこい娘だ。もし、巨人がベッドの後ろにかけている剣を取ってきたら、おまえの一番上の姉を私の長男の嫁にしてやるが、どうだな、やってみるか?」

モリー「やってみるわ」

モリーはまた巨人の家にもどって、ベッドの下にもぐって巨人の帰りを待ちました。ほどなくして、巨人が帰ってきて、夕食をたらふく食べて、ベッドに入りました。

モリー、巨人の剣を盗む(ファースト・ミッション)

巨人が完全に寝てしまい、いびきをかき始めると、モリーは、ベッドの下から出て、巨人の身体の上に手をのばして、向こうにある剣を取りました。剣を手元に引き寄せようとしたその瞬間、ちょっと音がしたので、巨人が目をさましました。

モリーは剣をもって、ドアまでまっしぐら。巨人も追いかけてきます。モリーはどんどん走って逃げましたが、巨人の足は早い(巨人だから、大股)。もう少しで追いつかれそう、というタイミングで、モリーは、「髪の毛1本の橋」にさしかかり、橋を渡りました。

巨人は、この橋を渡ることができません。

巨人「くっそー! モリー・ワッピー、もう俺んちに絶対来るなよ!」

モリーが王様に剣を渡し、一番上の姉は王様の長男と結婚しました。

セカンド・ミッション(財布を盗む)

王様は、モリーのかしこさをほめつつ、2度めのミッションを提案しました。

今度は、巨人の枕の下にある財布を盗んでこいと言うのです。ほうびは2番めの姉と王様の次男の結婚です。

モリーは、「やってみるわ」と言い、巨人の家に舞い戻り、前回と同様、ピンチにあいながらも、なんとか財布を盗むことができたので、2番めの姉と王様の次男は結婚しました。

巨人が寝ているすきに財布を盗み、巨人が起きてしまい、追いかけられるも、 「髪の毛1本の橋」 を渡って逃げ切るのは、前回と全く同じです。

サード・ミッション(指輪を盗む)

王様は、なんと3度目のミッションをモリーに言い渡しました。今度は、巨人の指輪を盗んでこいと言うのです。ほうびは、モリー自身と王様の三男の結婚です。

「やってみるわ」。モリーは、またそう言って、巨人の家に舞い戻って、前と同じように巨人が寝ているすきに指輪を取りました。

しかし、指輪を取ったその瞬間、巨人が目をさまし、モリーの腕をつかんだのです。

モリー、自分の罰を自分で考える

巨人「今度こそつかまえたぞ、モリー・ワッピー。もし、おまえが私にしたような悪さを、私がおまえにしたとしたら、おまえは私をどうするね?」

モリー「布の袋に、あんたと猫と犬、それに針と糸と大ばさみを入れて、壁にひっかけて、それから森に行って、一番太い木の棒を取ってきて、家に戻り、その棒で布の袋をガンガンたたくわ。あんたが死ぬまでね」。

巨人はそのとおりにすることにし、モリーをその他のものといっしょに袋に入れて、壁にひっかけ、森に棒を探しに出かけました。

巨人の妻をたぶらかす

袋の中でモリーは、「ああ、私が見ているものをあなたが見れたらいいのに!」と叫びました。

巨人の妻「え、何、何が見えるのモリー?」

モリー 「ああ、私が見ているものをあなたが見れたらいいのに!」

何を見ているのか知りたい妻が、自分も袋に入りたいと頼むので、モリーは、はさみで袋を切り、針と糸をもって外に出ると、巨人の妻を袋に押し込み、切ったところを、縫って閉じました。

何も見えないので、巨人の妻は、「外に出して」と頼みましたが、モリーは、そのままドアの後ろに隠れてしまいました。

そこへ、ものすごくおおきな木を持った巨人が戻ってきて、布の袋をがんがん叩きました。

妻は、泣きながら、「やめて、あんた、私よ、私よ」と叫びましたが、犬が激しく吠え、猫もみゃーみゃー言うので、巨人は、それが妻の声だとわかりませんでした。

ミッション完了

巨人は、モリーがドアの陰から出て、走って家を出ていくのに気づき、前と同じように追いかけましたが、またしても、 「髪の毛1本の橋」 のところで、逃げられます。

こうしてモリーは、指輪を王様に渡し、王様の三男と結婚し、以後、巨人を見ることはありませんでした。

参考にした原文⇒English Fairy Tales: Molly Whuppie

非情のライセンスをもつモリー

この話の教訓は、きっと、「かしこさ、機転、勇気があれば、女の子でも幸せになれるんだよ、がんばれ!」だと思います。

けれども、モリーのしていること、ひどすぎませんか?

童話に出てくる巨人や大男はたいてい人食いで、人間の子供を食べますが、だからといって、彼のものを盗んでいいのでしょうか?

もっとひどいのは、巨人に自分の娘3人と妻を殺させてしまうところです。

巨人は、モリーと姉たちを殺そうとしたから、自業自得だったとしても、巨人の妻が気の毒です。

巨人の妻は、おなかをすかせたモリーと姉2人を家に入れ、ミルクとパンをくれたというのに。

モリーはかしこいから、自分の手で人殺しはせず、巨人に家族を殺させてしまう。そこに非情を感じます。

相手が巨人なら何をしてもいい、というのが、童話の世界の決まりごとなのかもしれません。

この童話の絵本、レビューがとてもいいのですが、このあたりのこと、どうやって決着をつけているのでしょうか?

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この話は、『ジャックと豆の木』で有名な、イギリスの民俗学者、ジェセフ・ジェイコブスの編纂した英国の民話集に入っています。

『ジャックと豆の木』のあらすじ

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