ハメルンの笛吹き男:ジャック・ドゥミ監督(1972)の感想。

ハメルンの笛吹き男の像 グリム童話

ジャック・ドゥミ監督の童話シリーズ、第2弾、The Pied Piper (邦題:ハメルンの笛吹き男)を見ました。

ハメルンの笛吹き男:紹介動画(4分)

予告編が見つからなかったので、この映画をフランス語で紹介している映像を貼ります。

Présentation Le Joueur de Flûte (The Pied Piper Jacques Demy 1972)

基本情報

  • 監督:ジャック・ドゥミ
  • プロデュース:デヴィッド・パットナム、Sanford Lieberson
  • 制作:アメリカ、イギリス、西ドイツ
  • 脚本: Andrew Birkin 、ジャック・ドゥミ、 Mark Peploe
  • 原作:グリム兄弟の『ハーメルンの笛吹き男
  • 音楽:ドノヴァン
  • 言語:英語、90分。ミュージカルではありません。
  • ロケーション:ドイツ。室内はロンドンのスタジオ。
  • 主演:ジャック・ワイルド(ガヴィン、足の悪い絵描き志望の少年)、ジョン・ハート(フランツ、領主の息子、自分勝手。政治的野心あり)、ドナルド・プレザンス(領主、大聖堂を建設中)、マイケル・ホーダーン(ミリウス、ユダヤ人の錬金術師、医者、科学者)。ドノヴァン(パイドパイパー)。イギリスの名優を使っていて豪華な配役です。

あらすじ

1349年、黒死病が大流行した年の夏のこと。ある旅芸人の一座(家族)が、ドイツのハメルンにやってくる。途中から旅芸人たちと行動をともにしている巡礼者と吟遊詩人も一緒だ。

フランツの結婚相手は市長の娘リサ。リサはまだほんの子供に見える(11~12歳)。フランツはひそかにリサの母と関係を持っていて、この結婚は100%、持参金目当てである。

フランツの父も、大聖堂を建設するのにお金が必要なので、持参金をあてにしている。

この街には、アーケミストのミリウスとその弟子のガヴィン(足が悪くいつも杖をついている)もいて、ガヴィンは昔からリサのことが好きだった。

結婚式の前日、リサの家の庭で、ガヴィンとリサが話をしていたらネズミが数匹出てくる。 ガヴィンが 1匹つかまえて、 ミリウスに見せると、ネズミの発生は黒死病の前ぶれだと言う。

結婚式のお祝いで、ウエディングケーキからネズミがぞろぞろ出てきたのをきっかけに街なかにネズミがあふれ、人々はパニックになる。

ミリウスのところに、フランツがやってきて、ニセのお金を作れと命令する。フランツは自分の計画のために見せかけのお金がほしいのだ。ミリウスは、フランツの言うことを無視して、黒死病の予防薬の研究をしたので、牢屋(ダンジョン)に入れられてしまう。

増え続けるネズミ対策に頭を悩ませた市長は、「1000ギルドくれたら、ネズミを1匹残らず、取り除く」というパイドパイパーに仕事を依頼する。パイドパイパーは、笛を吹いて、ネズミたちを川におびきよせ、溺れ死にさせた。しかし、市長はお金を払わない。

大部分はオリジナルのストーリー

ドノヴァン扮するパイドパイパーが、笛の音色でねずみを連れ去ったのに、市長がお金を払わなかったから、今度は子どもたちを笛で街から連れ去るという、パイドパイパーの伝承の部分はちゃんとあります。しかし、そこまでフィーチャーされておらず、ほとんど、オリジナルの話になっています。

赤い服を着ている人たちが聖職者で、グリーンと黒のしまの服を着ているのが支配者グループ、街から出ていく子どもたちは皆、白い服(寝間着)というように、色分けされています。

聖職者の赤いローブも、支配者のしまの服もかなり変わったデザインで、特に帽子がへんてこりんで、笑えます。子供たちの白い服は、純粋さの象徴でしょう。

パイドパイパーは、通常、カラフルな服(pied は、まだらの、多色のという意味) を着ていますが、この映画のドノヴァンは、ベージュの地味な服です。

なんとなく、乞食のようにも見えます。というより、乞食なんでしょうか? ヒッピーという設定かもしれません。本人は自分を minstrel (吟遊詩人)と言っていましたが。

この街の大人たちはみな、お金と権力がほしい自分のことしか考えない人間です。旅芸人一家はよそ者なので、こうしたかけひきとは無縁ですが。

ユダヤ人のミリウスは、人々を助けたいと思っている学者で、いい人なのに、迫害されます。黒死病が流行っているのも、彼のせいにされて、弁護人のいない一方的な裁判で火あぶりの刑を宣告されます。

ひどい話ですが、こういうこと、中世ではふつうにあったんでしょうね。

ドノヴァンの音楽

ドノヴァンは1964年にデビューして、わりとすぐにワールドワイドに名前を知られるようになったスコットランド出身のフォーク・ロックのシンガーです。

全盛期は60年代後半。彼のサイケデリックでポップかつヒッピー風の雰囲気がこの映画に70年代ふうの味わいをもたらしています。

ドゥミ監督の前作、『ロバと王女』でも、60年代風のシーンがありましたが、この映画でも、ドノヴァンは中世の吟遊詩人という設定でありながら、サイケデリックな柄のギターを持って歌うシーンがあります。

彼の音楽が1つの見どころ、聞きどころです。

ジャック・ワイルド

ジャック・ワイルドは、16歳のとき、『オリバー(1968)』という映画に出て注目をあびましたが、日本では何といっても、『小さな恋のメロディー(1970)』での、マーク・レスターの友達役(貧乏で、悪ガキ)が有名でしょう。

『小さな恋のメロディー』のプロデューサーはデヴィッド・パットナムなので、それが縁でこの映画に配役されたのかもしれません。

『ハメルンの笛吹き男』は 『小さな恋のメロディー』 の2年後の制作で、彼は21歳ぐらいですが、童顔で小柄だから10代半ばに見えます。ずっとびっこをひく役をうまく演じています。

若すぎる容姿のせいで、その後はなかなか役にめぐまれず、映画にはあまり出演していません。この映画は主役の一人として活躍するジャック・ワイルドを見られる貴重な作品です。

彼は、2006年に53歳でがんのために亡くなりました。

映画の最初のクレジットで、ジャック・ワイルド、ジョン・ハート、ドナルド・プレザンス、3人の名前が並んで出てきます。つまり、この映画は、誰か一人が主役というわけではなく、ある意味、群像劇なのでしょう。

そのせいか焦点がぼけていて、ジャック・ワイルドか、ドノヴァンか、ジョン・ハートでもいいですが、誰かを全面的にフィーチャーする脚本のほうがよかったと思います。

それでも、ネズミや子どもたちを連れ出すシーンなど印象的な場面もいくつかあるし、ここまで無視されなくてもいい映画だと思います。

なぜ、ジャック・ドゥミ監督の映画は、『シェルブールの雨傘』と『ロシュフォールの恋人たち』以外は、ろくにDVDにならなかったんでしょうか。

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