くすねた銅貨(グリム兄弟、1857)のあらすじ。

コイン グリム童話

グリム童話から、The Stolen Farthings(ドイツ語の原題は、 Der gestohlene Heller)という童話を紹介します。

farthingは、辞書によれば、ファージング銅貨(1/4ペニーの英国通貨で最小単位、今は廃貨)。邦題は、『くすねた銅貨』です。

とても短い童話なので、あらすじというより、ほとんど本文そのままを紹介しましょう。

真っ青な子ども

父親と母親とその子どもたちが、友人のお客さんとともに、食事をしていました。

時計が12時を打ったとき、友人は、扉を開けて、雪のように真っ白の服を着た顔色の悪い子供が入ってくるのを見ました。

その子は、ただまっすぐ、部屋を横切り、隣の部屋に行き、しばらくしてから、その部屋から出てきて、来た時と同じように、何も言わず、出ていきました。

次の日も、その次の日もまったく同じことが起きました。

お客さんにしか見えない

友人は、不思議に思い、父親に聞いてみたところ、父親は、「私は見ていないよ」と答えました。しかし、「その子が誰かは検討がつく」と言います。

翌日、その子どもがまたやってきた時、友人は、指差して、父親に、「ほら、あの子だよ」と言いましたが、父親には見えません。

母親にも子どもたちにも見えません。

隣の部屋

友人は、席をたって、隣の部屋のドアを少しあけ、のぞきました。すると、その子供は、床に座って、床の間にある裂け目を必死で掘り起こしていました。

友人が覗いているのに気づいた子供は、すっと消えました。

子どもの正体

友人が、その子どもがしていたことを説明すると、母親は、「ああ、その子は、4週間前に死んだ私の子どもよ」と言います。

家族と友人が、隣の部屋の床板をはがしたら、銅貨が2枚ありました。

この銅貨は、その子供が母親からもらったものです。母親は、「貧しい人に恵んであげなさい」と言って渡していました。

一件落着

しかし、その子は、「このお金で乾パンが買える」と思い、お金を床板の間に隠しておきました。

そのため、その子は、墓場で安らかで眠ることができず、毎日、正午に家に戻って、銅貨を探していました。

両親がそのお金を貧しい人にあげたところ、子どもは2度と現れませんでした。

☆原文(英語)はこちら⇒Grimm 154: The Stolen Farthing

心残りなきように

この童話は幽霊譚です。

ドイツ語の原文は読めないので見ていませんが、英語版では、子どものことを it、または the child と受けているので、性別がわかりません。

「少年なのかな」と思っていますが、女の子かもしれません。

ドイツでも幽霊は白い服を着て、顔色が悪いようです。

この子は、貧しい人にあげるべきお金をねこばばし、床板のあいだに隠しておいたので成仏できず、毎晩、そのお金がまだあるかどうか、家に戻ってチェックしていました。

親兄弟に見えなかったのは、親には知られたくなかったからでしょう。

親が銅貨を探して、本来するべきように、貧しい人にあげたら、ようやく成仏できました。

お客さんが目撃してくれて幸いでしたね。

この話の教訓は

・親の言うことはちゃんと聞きましょう

・悪いことをすると、成仏できません

こんなところでしょうか。

短い話ですが、イメージがありありと思い浮かぶので、映像にするとおもしろそうな童話です。

床板の間なんて、お金を隠すには不思議な場所ですが、昔は、床板の間に、コインを入れることがよくあったのでしょうかね。

リンクした英語版では、銅貨で子供が買おうと思ったのは、zwieback となっており、これは、辞書によると「乾パン、ラスクの一種」です。

画像検索したら、こんなのが出てきました。

zwieback

「ビスケット」と訳している英語版もあります。

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