ディズニーの長編アニメーション映画、Sleeping Beauty (邦題:眠れる森の美女)を見ました。想像していたよりよかったです。
Sleeping Beauty 予告編(1分26秒)
基本情報
- 公開:1959年1月26日
- 原作:シャルル・ペロー『眠れる森の美女』
- 上映時間:76分
- ワイドスクリーン(横長のスクリーン)
- 音楽はチャイコフスキーの『眠れる森の美女』をベースにしたもの
- 6年かけて、600万ドル投じて作られた(興行収益は5160万ドル)。お金をかけすぎて、その後のディズニーの財政を圧迫した作品とも言われる。
- 生前のウォルト・ディズニーがかかわった童話のアニメ化最後の作品。
- 300人のアニメーターを起用し、セル画の数は100万枚にのぼった。
あらすじ
時は14世紀、ある王国に女の赤ちゃんが生まれ、オーロラと名付けられる。3人の仙女(よい妖精)が呼ばれ、赤ん坊に贈り物をする。美しさと歌声を贈られたところで、お祝いに呼ばれなかった魔女、マレフィセントがあらわれ、呼ばれなかった腹いせに、オーロラにとんでもない呪いをかける。
「16歳の誕生日の日没までに、糸車(spindle)で指をつついて死んでしまう」という呪いだ。3人めの仙女は、「死ぬ代わりに眠って、真に愛している人(true love)のキスでめざめる」とマレフィセントの呪いをトーンダウンした。
王様は、国中の糸車を燃やす。3人の仙女は、オーロラの安全のために、自分たちが森の奥の小屋でオーロラを育てると言う。王様と女王は、仙女にオーロラを託すことにした(それなら糸車を燃やす必要なんてなかったのに←penの心の声)。
それから16年、きょうはオーロラの誕生日。あと少しで呪いから自由になれる(オーロラはそんなことは知らない)。3人の仙女たちは、オーロラにベリーを摘んでこいと言って、家から追い出し、誕生日パーティの計画と準備に熱中する。
歌いながら森でベリーを摘んでいたオーロラは、その歌声に惹かれてやってきた王子フィリップと出会う。一方、マレフィセントは、なんとしても日没までにオーロラを探し出そうとする。
品のあるアニメーション
シンデレラ、白雪姫と見てきましたが、これまで見たディズニーアニメの中では、この作品の絵柄と音楽が一番好きです。まず絵ですが、全体的に抑えた色調なのが私の好みですし、背景や建物は、上質の絵本がそのままアニメになったようでとてもきれいです。なんだかスタイリッシュに見えます。
ワイドスクリーンを利用して、王子とオーロラが踊るシーンは圧巻です。
予告編はせわしない印象を与えますが、本編はゆっくりとした展開で、いまの子供が見ると、退屈かもしれません。しかし、私にはちょうどいいスピードで、とてもリラックスできます。
オーロラの顔は16歳にしてはふけていると思うし、特にかわいいとも思いませんが、彼女の出番はそんなになく、見せ場が多いのは、3人の仙女、王子フィリップ、そしてマレフィセントです。
オーロラはただの飾り物とまでは言いませんが、森で歌って踊るシーン以外では、仙女に連れられ城に行き、その後は、マレフィセント(緑色の玉となってオーロラをおべきよせる)によって、眠らされるぐらいで、これが実写なら、演じがいのない役どころです。
原作と大きく違うところ
ペロー版のスリーピング・ビューティは、最後に人食い鬼の話がありますが、ここはもちろんありません。さらに、オーロラが16歳になるまで、3人の仙女が育てるのは、ディズニーのアレンジです。
原作では、仙女が登場するのは、冒頭だけですが、この3人(フローラ、フォーナ、メリーウエザー)は、最初から最後まで出てきて、物語の展開に重要な役割を果たします。それぞれの、性格の違いも描きわけられています。
最初は、「変なおばさんたち」と思っていましたが、見ているうちに、だんだん親しみを感じられるようになりました。ネズミがうるさく話すより、好感が持てます。
この3人は、よい仙女ですが、ちょっと詰めが甘く、フローラとメリーウエザーがけんかしたせいで、マレフィセントにオーロラの居所がばれてしまいます。3人は、自分たちのしでかしたミスを自分たちで尻拭いすることになります。
悪役として、大きくフィーチャーされているマレフィセントは、なかなかエレガントな魔女で、怒ったときとの落差が激しいのも、楽しめるポイントです。
マレフィセントは、最後はドラゴンとなって、王子と戦います。この場面が、2007年の映画、『魔法にかけられ`て』で使われているのだと、この映画を見てわかりました。
フィリップ王子は、マレフィセントに捕えられ地下牢に入れられますが、3人の仙女の協力を得て、マレフィセントと戦いながら、オーロラの元に向かいます。この場面はかなり長く、映画の一つの見どころです。王子は、気さくで強くていい人です。
話はシンプルで保守的
ストーリーはシンプルで、ひねりもなにもありません。悪者と良い者がはっきりしている勧善懲悪型ストーリー。
おひめさまはあくまで美しく、夢の中で出てきた王子さまとの結婚にあこがれ、王子さまは、おひめさまを助けるために、悪と戦います。
オーロラは自分の運命を切り開くための行動は何もしておらず、この点では、シンデレラや白雪姫のほうがもう少しがんばっています。
古い価値観に貫かれたおとぎ話そのものの世界ですが、こういう単純な構図が、この映画の品のよさに、一役買っているような気がします。
こねくりまわした童話のアダプテーションを見すぎて、頭が疲れたときに見ると、一服の清涼剤となるでしょう。
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