巻毛のリケ(シャルル・ペロー)のあらすじ

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シャルル・ペローの童話集(1697)から、『巻毛のリケ』(Riquet à la houppe)のあらすじを紹介します。houppeは、鳥のあたまの上につきでている扇状の羽毛の束(冠羽)のことなので、『とさか頭のリケ』と呼ばれることもあります。

巻毛のリケとすると、巻毛がふさふさしているように思えるから、とさか頭のほうがいいかもしれません。

世にも醜い王子さま

ある国の女王が、男の子を生みましたが、ものすごく不細工な顔で、からだつきも不格好でした。周囲の人が、「この子、人間っぽくなるのかしら」と心配するほどの醜さです。

女王が打ちひしがれていると、仙女が言いました。

「ご安心なさい。この子は、とても賢いから、皆に好かれますよ。それにね、いま、私贈り物をしました。この子は、自分が愛した人を、自分と同じくらい知恵のある人にできます」。

仙女がいったとおり、この子はすぐに話をするようになり、その話がおもしろいので、皆に好かれました。

この子は、頭にひとにぎりの巻毛があったので、皆に、「巻毛のリケ」と呼ばれました。リケというのは、その家の名前です。

世にも美しいおひめさま

リケが生まれて7~8年たったころ、隣の国の女王が2人の女の子を生みました。姉は、まるで太陽の光のように美しい子供でした。王女さまはそれはもう大喜び。

リケが生まれたとき居合わせた仙女がこの場にもいて、王女の興奮を少し静めようと、「この子は、知恵が足りないですわ。美しいのと同じくらいバカですよ」と言いました。

これを聞いて女王は悲しみましたが、その後、もっと悲しいことがありました。つぎに生まれた女の子が、ものすごいブスだったのです。このときも、仙女が居合わせ、こうなぐさめました。

「悲しむことはありません。この子は醜いけれど、その醜さを帳消しにしてしまうほどの知恵を授かりますよ」。

王女は、「それならば、長女にも知恵をちょっとわけてくれませんか?」と頼みました。仙女は、「そちらはいくらも美しくできますが、賢さは無理ですわ。そのかわり、ご自身の好きな方を自分と同じように美しくできる力をさずけましょう」と言いました。

人に好かれるのは妹のほう

2人の女の子は、成長するにつれ、それぞれの特徴がどんどん目立つようになりました。姉は美しいけれどもバカ、妹はブスだけれども利口です。

姉は日がたつにつれどんどんバカになっていき、人に何か聞かれてもまともに答えられません。答えたとしても、バカみたいな答えです。それに、とても不器用で、水を飲もうとすれば半分はこぼすありさま。母親にしょっちゅう叱られていました。

妹の不器量も磨きがかかっていきましたが、人気があるのは楽しい話をする妹のほうです。

最初はみな、美しい姉のほうに行くのですが、しばらくすると、例外なく、妹のほうに行ってしまいます。

姉はバカでしたが、その事実がよくわかっており、自分の知恵のなさを嘆き悲しみ、いっそ死んでしまいたいと思うほどでした。

醜い王子と美しいおひめさまの出会い

ある日、美しいおひめさまが、森の中で悲しんでいると、立派な服を着ているけれど、すごく醜い小男がやってきました。リケです。

リケは世間で評判になっている美しいおひめさまの絵を見て、好きになってしまい、実物に会いたいとお城から出てきたのです。

「王女さま、あなたは、とても美しいのに、なせぞんなに悲しそうなのですか? これまで出会った人の中で一番お美しいのに。美しささえあれば、もう何もいらないぐらいではないですか」

「わたしのように美しくてもバカでいるより、あなたのように、醜くても利口なほうがずっといいことですわ」

「王女さま、ご自分が利口でないとわかっているのは利口な証拠ですよ。知恵があればあるほど、知恵が足りないと思うものです」

「???」

「王女さま、僕は自分の好きな人に、知恵をあげることができるのです。僕と結婚してくださるのなら、知恵をさしあげますが」

「?!」

「1年間待ちますから、考えておいてくれませんか?」

王女は心底、利口になりたかったので、1年後にリケと結婚すると約束しました。そのとたん、人が変わったように、うまく話ができるようになりました。知恵がついたのです。

美しく賢いおひめさま

自分の城にもどったおひめさまは、これまでとはうって変わって、話し上手になり、物分りのいい気の利いた人間に変身していました。

妹をのぞいては、みな、大喜びです。

おひめさまの変身のうわさをきいて、たくさんの男性が結婚の申し込みをしにやってきました。その中に金持ちの国の王子で、賢く、素敵な人がいて、おひめさまは、心ひかれました。

しかし賢くなっていたおひめさまは少し考えたほうがよかろうと、森の中へ入っていきました。

リケに会った森です。ふと気づくと、大勢の人たちが、大々的に宴会の準備をしています。

「いったい何ごとですの?」とおひめさまが聞いたところ、「巻毛のリケさまのパーティの準備です。明日婚礼がありますので」という返事がかえってきました

おひめさまは、明日がリケと結婚する約束の日だと思い出しました。そこへ着飾ったリケがやってきました。

リケとの対話

「おひめさま、僕はあなたに知恵をあげました。だから、約束どおりここに来てくれたのですね」

「実は…そうではないのです。私はバカだったときも、あなたとすぐに結婚する決心はつきませんでしたが、賢くなった今となっては、ますます結婚する気になれません。

私と結婚したかったのなら、あなたは私を賢い女にするべきではありませんでした」。

「ぼくは醜男(ぶおとこ)ですが、それ以外に気に入らない点がありますか? 僕の生まれや態度、人柄や頭の程度なんかもお嫌いなんですか?」

「いいえ、容姿以外はいいところばかりで、好きですわ」

「それならば、あなたは僕を幸せにできます。なぜなら、あなたは自分の好きな人を美しくすることができますからね」

リケは、仙女の贈り物のことをおひめさまに說明しました。

「それが本当なら、私は、あなたが世界で一番美しい、感じのよい王子さまになってほしいと望みますわ」

そのとたん、巻毛のリケは、おひめさまが見た誰よりも、美しくて感じのいい人になりました。

ハッピーエンド

ある人たちによれば、リケが素敵になったのは、仙女の魔法のせいではなく、おひめさまの愛情のせいだそうです。

リケが1年間しんぼう強く待ったこと、慎み深いこと、頭がよくて人柄がいいこと。おひめさまが、こうした利点をよく考えた結果、不細工なのが、素敵に見えてしまったのだといいます。

いずれにしろ、おひめさまは王さまの承諾を得て、約束通り翌日リケと結婚式をあげました。

教訓

この話は本当のことです。好きな人のものはみな美しく見え、好きな人は利口に見えます。

■もうひとつの教訓

生まれつきの美しさや、いきいきした顔色など、人工的には作れない自然にそなわった美しさは、愛情が見出した、人には見えない、たったひとつの魅力ほどは、人の心を動かさないものです。

原文はこちら⇒ Riquet à la houppe par Charles Perrault, histoire jeunesse classique en ligne – Short Édition

結局、美をたたえているのでは?

おとぎ話の中の王子さまとおひめさまは、みな、美男美女で、おおむね人柄もよく、幸せになると描かれています。

リケは、そんな中で、めずらしく醜男ですが、もし、仙女の魔法で、美男に変身してしまったのなら、いつものワンパターンの王子さまになってしまいます。

ここは、王女さまの愛情が、彼を美しく見せたとしておきたいですね。

それにしても、とても賢いはずのリケが、自分の后にもっとも美しいおひめさまを選ぶなんて、いくら、仙女の魔法で相手を賢くできるという切り札があったとしても、やはり、美は最強なんだと思わされます。

教訓で、「愛の心が見つけた利点には、美はかないませんよ」と書いてあっても、説得力がありません。

幸い、世の中の大半の人たちは、圧倒的な美しさを持たないため、美男美女が結婚しても、自分には関係のない人ごとで、それこそおとぎ話のようであり、心が痛むことはないですね。

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