シャルル・ペロー版の La Belle au Bois Dormant(眠れる森の美女)のあらすじの続きです。
ジュールも隠す
料理人長は何も言わず、オロールのときと同じように、人食い王妃をだまそうと思いました。そのときジュールは3つでした。料理人長は、ジュールを妻のところへ連れていき、オーロールと一緒に隠しました。
代わりに、柔らかい子ヤギの肉を出したところ、人食い王妃はとてもおいしいと言いました。
今度は若い王妃を食べたい
ある晩、人食い王妃は、料理人長にまたリクエストしました。
「若い王妃も、子どもたちのと同じソースで食べたいわ」。
料理人長は、もう人食い女をだませないと観念しました。眠っていた100年を別に考えても、若い王妃はもう二十歳をすぎていました。肌は白かったのですが、少し固かったのです。王妃さまと同じくらいの固さの動物は、家畜小屋にいません。
料理人長は包丁を持って王妃の部屋へ向かいました。
王妃の反応
料理人長が、王妃に母親の王妃から受けた命令を伝えると、王妃は、首をさしのべてこう言いました。
「命令されたとおりにしてください。どうぞ、おつとめをはたしてください。私もかわいい子どもたちが行ってしまったところに行きとうございます」。
王妃は、子どもたちは死んだと思っていたのです。この言葉に感動した料理人長は、自分が子どもたちを隠していたことを告白し、人食い鬼に子鹿を食べさせることにしました。
王妃を子どもたちのところに連れていくと、王妃は子どもたちを抱きしめ、みな、涙にくれました。
人食いに嘘がばれる
鹿の肉を出したところ、人食いは王妃の肉だと思い、おいしそうに食べました。人食いは息子(王さま)が帰ったら、3人とも、おおかみに食われてしまったと言うつもりでした。
ある晩、人食い女が庭や家畜小屋のあたりを「新しい肉はないものか」と鼻をくんくんさせながら歩いていたら、ジュールの泣き声、彼を叱る王妃の声、そしてオロールの声が聞こえました。
だまされたと知り、怒り狂った人食い王妃は、翌朝、庭のまんなかに、大きなおけを持ってこさせました。中には、ひきがえる、毒へび、そのたのへびが、うようよ入っています。
人食いは、王妃、2人の子供、料理人長、その妻、その召使いを、このおけに投げ込むつもりです。「全員、手をしばってつれて来なさい!」と役人に命令しました。役人たちが、王妃たちをおけの中に投げ込もうとしていたその時・・・
王さまが帰ってきた
予想外に早く、王さまが馬に乗って、中庭に入って来ました。おそろしい光景を見て、王さまは、皆に、何ごとかおたずねになりましたが、誰も本当のことを言えませんでした。
そのとき、人食い女は怒りに狂いながら、自分からおけの中にとびこみました。そして、あっという間に、へびたちにかみ殺されてしまったのです。
母親のしたことなので、王は怒るわけにもいきませんでした。しかし、美しい妻と子どもたちと暮らすうちに、王の気持ちはだんだんなごんでいきました。
教訓(moralité)
金持ちで、二枚目で、勇気があり、やさしい人なんて、長く待たないと現れないでしょう。しかし、100年も静かに眠ったまま待つなんて、そんな娘がいまどきどこにいるでしょうか?
このお話は、こんなことも伝えようとしているようです。本当に愛し合っているのなら、時間がかかっても幸せになれるのです。待つことで失うものはありません。
ところが、いまの若い女性は、みな、早く結婚したがっています。だから、わたしは、この教訓を、わざわざみなに伝える気持ちも勇気もありません。
原文はこちらを参照しました⇒ La belle au bois dormant : Charles Perrault (version intégrale) — Site Web de l’ONL
運命の相手
ペローの教訓を読むと、眠れる森の美女は、自分が愛する人を、100年間、ずっと静かに眠って待っていたらしい、ということになります。本物の相手が出現するまで、辛抱強く待っていろ、あせって結婚するな、というのが教訓なのでしょう。
童話に出てくるお姫さまと王子さまは、わりと簡単に一目惚れする印象がありますが、運命で結ばれることが決まっていた相手だからこそ、見た瞬間、それがわかるのですね。
こう考えると、おとぎ話はロマンチックですね。たとえ人食いが出てきたとしても、彼らは、真実の愛の強さや素晴らしさを強調する役割をになっているだけです。
シンデレラの話もそうですが、人間が「自分にぴったりあった本物の相手がこの世にいる」という夢を捨てない限り、おとぎ話は読みつがれていくでしょう。
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