シンデレラ:イタリアのミニシリーズ(2011)の感想。

ローマ シンデレラ

シンデレラをベースにしたイタリアのテレビ映画(実写)を見たので感想を書きます。いろいろな要素を盛り込みすぎな脚本ですが、まあ楽しめる作品です(恋愛ものが苦手な人には向きません)。

イタリア制作ですが、言語は英語です。厳密に書くと、役者は英語をしゃべっているけれど、きっとイタリア人のアクセントの英語のため、大部分がアメリカンイングリッシュに吹き替えられています(最後のクレジットに、Voicesとして吹き替えた人の名前が出てきます)。

シンデレラ(2011)の予告編

予告編2分44秒。

アマゾンにあるDVDの説明はこうなっています。

総製作費10億円超の圧倒的スケールで描く、シンデレラの世界!
本作は時を超えて愛され続けてきた珠玉のラブ・ストーリー「シンデレラ」の実写映画化!イタリア国営放送局が威信をかけて製作した恋愛ドラマ!
原作童話のイメージはそのままに、戦後のイタリアを舞台に、自らの勇気と優しさで奇跡を巻き起こす新たなシンデレラの物語。

何の予備知識のないまま見たので、見終わってからこの説明を読み、「ほ~、そうだったのか」と思った次第。恋愛ドラマといえばそうですが、そこまで濃い恋愛は描かれていないです。pen的には、さらっとしてます。そもそも、ペローやグリムのシンデレラは、「珠玉のラブストーリー」ではありません。

シンデレラ(2011)基本情報

  • 監督: クリスチャン・デュゲイ
  • 主演:ヴァネッサ・ヘスラー, フラヴィオ・バレンティ, ルース・マリア・クビチェック
  • 特徴1:長い。前編90分、後編90分です。つまり3時間。
  • 特徴2:シンデレラ役の女優が美女(イタリアのトップモデル)で背が高く、ドレスアップしていないふだんのメイドの姿でも、きっちり美しい。
  • 特徴3:イタリアの美しい街並み、戦後すぐのお屋敷の中の家具調度、音楽学校でのピアノのオーディション、生き別れていた血縁との再会など、一昔前の少女漫画の要素満載。

超簡単なあらすじ(というよりさわり)

冒頭は1946年のローマ。オーロラ・デルカはピアノの演奏がうまい美少女。ピアニストだった母親は幼いときに亡くなっています。

著名な作曲家の父親が家庭教師だった女性と結婚したため、まま姉が2人できます。ほどなく、父親が心臓発作をおこし、病院で死去。

まま母は、お屋敷をホテルに改装し、オーロラをメイドとしてフルタイムで働かせます。オーロラは学校に行くことも、ピアノを学ぶこともあきらめなければなりませんでした。

父親が発作を起こした日、ひょんなことからオーロラは隣のお屋敷に住む少年と知り合います。そのお屋敷の庭にある大きな迷路で迷っていたら、その少年が助けてくれたのです。

少年は、小説家志望で、オーロラに、「幸福な王子」の本を貸します。「これ読んでみて、気に入ったら、また明日ここで会おう」。オーロラはこの少年をすっかり気に入り、本を読む前から、「もちろん気にいるわ」と心の中でいいます。

「ここ」とは、広いお庭にある噴水のはしっこです。しかし、翌日、この家族は、急に家を引き払ったらしく、オーロラは少年に会えませんでした。

以来、8年間、オーロラは、「幸福の王子」を屋根裏部屋のベッドの枕元におき、いつか、この少年と再会することを夢見ていました。

8年後、オーロラは21歳の誕生日の直前。21歳になると、父親が残してくれた信託基金を使えるので、そのお金を使って音楽学校に行きたいとオーロラは思うのですが…。

シンデレラ度

アッシュポットの記事で書いたシンデレラの4つの要素はすべて入っています。

  • 家族に虐げられている不幸な少女:オーロラ
  • 少女を助けてくれる存在:ホテルに長逗留するアメリカの大金持ちのクーパーという老婦人。一緒に働いている料理番とメイド。使い走りをしてくれる街の少年2人(オーロラはこの少年たちに自分の分の食事を分け与えています)。
  • ダンスパーティ:セバスチャン(オーロラが恋する人)が開く仮面舞踏会。
  • 靴で本人確認:オーロラは、迷路に靴を片方落とし、セバスチャンが拾う、後日、オーロラがはいていた靴だと判明。

オーロラのいったん落ちたステータスが最後にそれ以上になるところ(ホテルのオーナーになる)もシンデレラ要素の1つです。

オーロラが自分で縫ったドレスをまま姉が破るというディズニー・アニメにあったエピソードも出てきます。

魔法は出てこないので、その点は、より現実的な話になっています。

靴に関するひねり

このドラマでおもしろいのは、靴の持ち主がオーロラだとわかった段階では、セバスチャンとハッピーエンドにならないところです。逆にセバスチャンはオーロラに裏切れたと感じ、去っていきます(まま母が、話を勝手に作って彼に伝えます。このまま母、相当の悪です)。

実は、セバスチャンは、 マルトーネ氏という人から、テレビを発売する権利(だと思う)を自分と父親の会社にまわしてもらうよう交渉しており、取引の成就のために、 マルトーネ氏の娘のティナと結婚してもいいとすら思っています。

しかし、クーパーさんも、同じように、 マルトーネ氏と交渉しており、セバスチャンと、オーロラのゴッドマザー的存在のクーパーさんは商売敵なのです。

オーロラのせつない気持ちにほろっとする

後編の最初(舞踏会)あたりで、私はだれて、「ああ、なんかつまんない映画だな」と思いました。

しかし、舞踏会のあと、セバスチャンが、舞踏会で会った美女(オーロラですが)に夢中で、オーロラ(ホテルのメイドとして、セバスチャンとは顔見知り)が、自分がその美女だったとなかなか言いだせないあたりから、オーロラのせつない気持ちが伝わってきて、ちょっとおもしろくなりました。

オーロラはセバスチャンといい感じになりますが、セバスチャンの頭には、舞踏会の美女がいるため、オーロラとはあくまでよい友だちでいようとします。

そんなときに、まま母が、事実を歪曲した情報をセバスチャンに伝えたため、彼は、裏切られた(だまされた)と思って、 マルトーネ氏の娘と結婚することを決めるのです。

王子さま側が、シンデレラに裏切られたと思い込み、いったん別れるのは、エバー・アフターと同じプロットです。

小ネタ

クーパーさんは、映画関係者に顔がきき(もと女優だったらしい)、オーロラの舞踏会用のドレスと靴を撮影所で調達します。ここは、チネチッタというローマに古くからある撮影所で、イタリア映画全盛期に、数々の名画が撮影されたところです。

その他、イタリアに詳しい人なら、名所を見つけられるかもしれません。そういえば、オーロラはいつもベスパに乗って配達や買い物をしていて、セバスチャンとベスパでドライブ(?)するという『ローマの休日』みたいなシーンもあります。

それと、オーロラの部屋である屋根裏部屋ですが、すすけた部屋ではなく、明るくてとてもかわいい部屋で、率直に言って、私が現在住んでいる部屋より数倍素敵です。

そんな小ネタも楽しめる映画です。シナリオもうちょっと整理して、せめて2時間ぐらいにしてほしかったところですが、長いぶん、本筋とは関係ないものがいろいろ出てきて、楽しめるのかもしれません。

アマゾンでは、今のところ、プライムビデオの見放題でも見られます。レビューが意外にいいので驚きました。

なお、主演のヴァネッサ・ヘスラーは父親がドイツ系アメリカ人、母親がイタリア人で、子供のとき、アメリカに住んでいたことがあり、アメリカ英語をふつうに話せるそうです。よって、オーロラの吹替えは本人がしていると思われます(Voicesのところに、オーロラの声をあてた人の名前がなかったことより推測)。

★オーロラとセバスチャンを結びつける小説、『幸福な王子』のあらすじを書きました。

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