9月の終わりに、Netflixで、Enola Holmes (エノーラ・ホームズの事件簿)という映画を見ました。
良質なファミリームービーです。特に女の子に受けるでしょう。
エノーラ・ホームズは、シャーロック・ホームズの妹という設定なので、ホームズものといえば、そう言えますが、ホームズ的なものを期待してみると、期待はずれに終わるかもしれません。
Enola Holmes・予告編
2分43秒
この予告編、よくできていて、こんなふうにお転婆でチャーミングな女の子がいろいろ冒険する、という内容です。
作品情報
監督:ハリー・ブラッドピア
脚本:ジャック・ソーン
出演:ミリー・ボビー・ブラウン(エノーラ)、ヘンリー・カヴィル(シャーロック)、サム・クラフリン(マイクロフト)、ヘレナ・ボナム・カーター(エノーラ、シャーロック、マイクロフトの母)、ルイ・パートリッジ(テュークスベリー、貴族)
役者の演技はみなよかったです。
原作:『消えた公爵家の子息』(エノーラ・ホームズの事件簿シリーズ)/ナンシー・スプリンガー ☆イギリスのジュビナイル小説。
その他:もともと劇場公開用に制作されたが、新型コロナウィルスのため、公開されず、Netflixが配信権を獲得、2020年9月23日に全世界にNetflixのオリジナル映画として公開された(ウィキ情報)。
・・・だから配役が豪華なんでしょうね。
制作はアメリカですが、舞台はイギリスで、主要な役はイギリスの役者が演じています。
あらすじ(ネタバレなし)
1884年生まれのエノーラは、早くに父親をなくし、幼少期をイギリス郊外の屋敷で、母親と2人で過ごしました(お手伝いさんはいる)。彼女には年の離れた兄2人(マイクロフト/官僚とシャーロック/私立探偵)がいますが、兄たちは、早々に家を出ています。
母親は、この時代の人としては、ラディカルで、エノーラを学校にやらず、家庭教師もつけず、すべてホームスクーリング。格闘技や、爆発物を使った実験、スポーツなどを含むかなり独自のカリキュラムです。
この屋敷は蔵書が充実しており、子供にはむずかしい本もどんどん読ませました。
その結果、エノーラはこの時代の一般的な娘とは、ずいぶん違った娘に成長します。
一言で書くと、ひじょうに今日的(21世紀的)です。
エノーラと母は仲良しでしたが、エノーラの16歳の誕生日、突然、母親が失踪します。
困ったエノーラは、兄2人に連絡して家に帰ってきてもらいました。
上の兄、マイクロフトは、野生児に成長したエノーラを寄宿学校に入れて、「まともな女性」にすることにします。
寄宿学校に行きたくないエノーラは、単身、母を探しに、シャーロックが少年のころ着ていた服を着て(変装)、こっそり家を出ます。
ロンドン行きの列車の中で、エノーラは、テュークスベリーという、同じ年頃の少年(貴族)と知り合いました。
テュークスベリーも、家出をしてきており、彼は、何者かに命を狙われています。
母親探しをするつもりのエノーラでしたが、先にテュークスベリーの事件を解決することにします。
・・・ 以下はネタバレを含むので、まだ映画を見ていない人は、読まないほうがいいです・・・
シンプルなストーリー
登場人物は少なく、ストーリーも複雑でないので、気軽に楽しめます。
この点、Frozen 2で頭が疲れた私の心を癒やしてくれました。
まあ、よっくよく考えれば、解決してない問題がいくつかありますが、テュークスベリーの事件は解決するし、母親とも、最後に会うことができます。
母親は、ある信念があり、その信念を貫くために、家を出たのであり、べつにエノーラが嫌いとかそういうことではありませんでした。
実は、この母親の行動、私にはよくわかりません。しかし、物語的には、そこはそんなに深く考えなくてもいいところなのでしょう。
元気いっぱいのエノーラ
この映画の一番の魅力は、主役のエノーラです。
彼女は格闘技が得意で、何があっても負けない、不屈の精神をもつ女の子。一方、かわいいところもあります。というか、見た目はかわいいですよね。
いきなりお母さんがいなくなったら、引きこもるところですが、行動力のあるエノーラは単身、ロンドンに向かいます。
このエノーラ、柔術などをマスターしているため、「アクション映画ですか?」と思うほど、アクションシーンがたくさんあります。
これはちょっと意外でした。
視聴者は、果敢に前に進んでいくエノーラを応援したくなることでしょう。
Enolaという名前は、Alone(1人ぼっち)という単語のアナグラムです。
当時のイギリスはまだ貴族社会・男性社会だから、女性は1人では生きられません。
そんな時代に、「1人でも生きられる人になりなさい」、という願いをこめて、お母さんが、Enolaという名前をつけたのだろう、と想像しています。
元気で、男勝りで、チャーミングな女の子、というのはある意味、類型的ですが、エノーラは嫌味がないところがよいです。
景色、衣装、音楽
イギリスの田園の風景がとてもきれいです。
話の傾向は違いますが、景色だけ見ていると、ジェイン・オースティンの映画を思わせます。
エノーラの衣装も見どころです。
家にいるときは、コットンの素朴なドレスを着ていますが、ロンドンでは、兄たちに見つからないように、あえて淑女の格好をします。
つまりコルセットをつけるのですが、この姿で格闘するのがすごいです。足さばき、大変だと思います。
ロンドンの街の様子、室内の家具調度も、お金をかけているようで、時代考証が正しいかどうかは知りませんが、見ていておもしろいです。
オーケストラの音楽も気に入りました。音楽の担当は、ダニエル・ペンバートンです。
エノーラとテュークスベリー
エノーラとテュークスベリーは性格も身分も違いますが、「家に居場所がないし、やりたいことがあるから、家出した」、という共通点があります。
2人の間で、ロマンスめいたものが芽生えるのはありがちなストーリーですが、2人のシーンはさしてないのに、反発しながらも、仲良くなっていくプロセスに説得力があります。
エノーラは、「テュークスベリーとかかわるのは嫌だけど、彼はどうしようもないバカだし、無力だから、守ってあげなければいけない」と思って、彼の事件の捜査を始めます。
しかし、テュークスベリーは、完全なバカではありません。彼は彼でエノーラを助けるシーンがあります。
彼を完全なバカにしなかったシナリオはよかったと思います。
テュークスベリー役の俳優は、若い頃のアラン・ドロンを善良にした雰囲気で、「自分の息子がこんなにハンサムなお母さんの気持ちってどんなだろう」と思いました。
謎解きを期待してはいけない
先にも書いたように、謎解きものや、緻密な推理を期待して見るとがっかりします。
エノーラは、どちらかというと体育会系で、一応推理もしますが、それは、アルファベットを使ったタイルで、文字を並べ替えることや、花言葉からの類推などです。
ティークスベリー(無類の植物好き)の行き先がわかったのも、本に押し花がはさんであったからです。
この映画にはやたらと、アナグラムが出てきます。
母親(アナグラムや暗号好き)からの返信が欲しくて、エノーラは、新聞に、暗号の広告を出しますがこれもアナグラムです(たぶん)。
実際、これは当時の人がよくやったことだそうです。恋人にあてて、暗号の恋文を新聞広告に出すことがふつうに行われていた、と Netflixの宣伝動画で知りました。
私は暗号のようにめんどくさいものについて考えることが苦手なので、このへんは、あまり真剣に見ていませんでしたが、そんなにすごい推理だったとは思いません。
都合よくわかってしまう感じです。
しかも、この映画に出てくるシャーロックはハンサムで妙にセクシーです。
私はシャーロック・ホームズの大ファンというわけではなく、本もたいして読んでいませんが、シャーロックって人嫌いの変人ですよね?
変人シャーロックが、ばりばり推理するところを期待してはいけません。
これは、妹の映画ですから。
この映画には、「貴族しか参政権がなかった、特に女性は政治から遠いところにいた、だけど、そういう時代が変わりつつある」という時代背景があります。
しかし、その時代背景を知らなくても、ふつうに楽しめます。
推理ものでもないし、歴史ものでもない、ただ、エノーラが元気に活躍する話で終わっているところに、物足りなさを感じる人はいるかもしれません。
☆原作
日本のアマゾンでは、なぜか今、250円だったので購入しました^^;。サンプルはずいぶん前にDLしていて、その分は読みましたが、原作では、エノーラは14歳です。テュークスベリーは子供で、当然2人のロマンスはありません。ロマンスは、映画独自の展開ですね。
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