アン・ハサウェイ 魔法の国のプリンセス(2004)の感想。

森の中 シンデレラ

原題、Ella Enchanted 邦題『アン・ハサウェイ 魔法の国のプリンセス』という映画の感想です。先日、記事にしたElla Enchantedという小説の映画化ですが、小説とはずいぶん違うので、別ものと考えたほうがいいです。

映画、Ella Enchanted予告編

予告編を見ると、なんだかはちゃめちゃな感じがしますが、実際そうで、ストーリーの辻つまを合わせることには、対して神経を払っていない映画です。

アン・ハサウェイ 魔法の国のプリンセス・基本情報

  • 監督:トミー・オヘイヴァー
  • 原作:ゲイル・カーソン・レヴィンの Ella Enchanted (魔法にかけられたエラ)
  • 主演:アン・ハサウェイ(エラ)、ヒュー・ダンシー(チャー、王子)、ケイリー・エルウィス( エドガー、王子の伯父)。
  • 日本では劇場公開されず、だいぶあとになってDVDで発売されたもよう。
  • 制作は、イギリス、アメリカ、アイルランドで、イギリスの役者が たくさん 出ています。王子、王子の伯父、妖精(エルフ)、継母、まま姉2人。。。よく考えるとほとんどイギリスの役者で、主役のアン・ハサウェイと妖精役のヴィヴィカ・アンジャネッタ・フォックスだけがアメリカ人といってもいいぐらいです。ナレーション(郵便配達人)は、モンティ・パイソンのメンバーだったエリック・アイドル。
  • 原作のElla Enchantedはシンデレラのアダプテーションですが、この映画はシンデレラとは言えません。
  • ロマコメ風味のファミリー/ファンタジー。

超簡単なさわり

魔法の国に住むエラ(20歳前後)は、生まれたとき、妖精ルシンダから、「服従」というギフトをもらいます。そのため、誰かに何かを命令されると、どんなにことでも従います。

幼いときエラの母が亡くなり、父が別の女性と結婚したため、まま姉2人がいます。上の姉、ハティはいじわる、すぐ上の姉、オリーブはおバカです。

ハティは、エラがなんでも言われたことに従うことを見抜き、理不尽な命令をさんざんしたあげく、親友と別れさせます。

「こんな生活はもういや」と思ったエラは、贈り物を撤回してもらいに、ルシンダがいそうなところに出かけていきます。その過程で王子、チャーと親しくなり、彼を殺そうとする、伯父エドガーの計画の道具として使われそうになるのですが…。

1本の映画としてみれば、まあ普通

原作とは関係のない1本の映画として見れば、子供を対象とした大衆むけのふつうの映画です。

歌あり、踊りあり、冒険あり、アクションあり、魔法の国の生き物あり、ロマンスあり、ドレス姿あり、多少笑えるセリフあり、という具合。

見終わったあとに、何も残りませんが、見ている間は、それなりに楽しめるでしょう。

舞台は中世の『魔法の国』ですが、現代の風物もときどき出てきます。エラとまま姉2人は、フェレル・コミュニティ・カレッジに通っていて、ハティ(上の姉)は、王子のファンクラブの会長です。

木でできたエスカレーターがあったり、黄色い、イエローカブみたいな馬車(?)もあります。

アン・ハサウェイは、明るくて素直でまっすぐという、プリンセスものにありがちな類型的な役柄ですが、嫌味がなくていいかもしれません。

ストーリーはとてもシンプルなので、何も考えたくない週末に、家族で見るのにふさわしい映画の1つだと思います。

上のまま姉、ハティを演じたルーシー・パンチは、「ジェーン・バーキン in シンデレラ」でも、まま姉(下の姉)を演じていました。この人、おもしろいのでわりと好きです。

小説のアダプテーションとしてみると疑問が残る

Ella Enchantedの小説のアダプテーションとして考えると、あまりいいとは思いません。あんなにおもしろい小説をよくもこんなにつまらない映画にできるものだと逆に関心します。

エラはただの素直な女子ではない

小説のエラは、映画のエラみたいな人間ではありません。「服従」という残酷なのろいにしばられている中で、いろいろ考えながら、奮闘しながら生きています。エラはとても知的で、クリエイティブ、しかも勇気があります。

ただの「健気で素直な女の子」ではないのです。

エラは妖精や人食い、巨人など人間じゃない生き物の生活に興味を持ち、彼らの言葉を覚え、会話しようとします(エラは語学の才能がある)。人間じゃない生き物、そしてその文化を尊重しているのです。

映画にはそういう描写はいっさいありません。映画では、巨人(ものすごく大きい)が、人間の言いなりになって、畑で働かされていますが、ありえないですよ。だって、巨人にとって、人間は虫けらぐらいのサイズなんですから。

王子はもっと深みのある人間

映画のチャー(王子)は、悪い人ではありませんが、めんどくさいことは何も考えない、典型的なお坊ちゃま育ちプリンスです。というより、この王子の性格はあまり深く掘り下げられていません(それを言ったら全員そうですが)。見た目が素敵で、剣術が得意、ぐらいしか、取り柄はない感じ。

小説のシャーはもっと、王子としての自覚があり、国のことを考えています。それにとてもやさしい人です。まだ17歳なので、人間的に未熟な面はありますが、将来立派な王になることを思わせる人柄の持ち主です。

ちなみに、王子の本名は Charmont で、愛称がChar です。Charの部分は、英語では、たいていチャーと読むので、チャーなのでしょうが、私はずっとフランス語読みをし、シャーと呼んでいます。

ロマコメ的展開ではない

さらに小説はロマンスが主体ではありません。

確かに最後に2人は結婚しますし、エラとシャーの関係は重要ですが、それは、エラという人間が成長していくプロセスにおいて、シャーとかかわっているからです。

映画は1時間半におさめなければいけないので、全くちがうアプローチ、それも大衆受けをねらったアプローチをとったのでしょうね。

なお、映画版、Ella Enchantedは、継母やまま姉こそ出てくるものの、シンデレラと似ているのはそこだけであり、その後は、シンデレラ的展開はいっさいありません。

舞踏会=王子の戴冠式はありますが、エラは、エドガーの命令により王子の刺客として出向くので、意味合いが違います。

よって、この映画は、シンデレラのリテリングではないと思います。

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