シンデレラのりテリングである、児童向けの小説、Ella Enchantedを読みました。タイトルを直訳すると、「魔法にかかったエラ」となりますが、読者も魔法にかかって、読みだしたら止まらないほど、おもしろい本です。
Ella Enchanntedはこんな話
Ella(エラ)は主人公の名前(ニックネーム)です。
エラは、 キリア(Kyrria)という国に住んでいますが、この国は、人間だけでなく、妖精や小人、巨人、人食い鬼、話をする鳥、その他、いろいろと変わった生き物がいます。
エラは生まれたとき、ルシンダという妖精から、「従順でいること obedience 」という贈り物をもらったため、人から何か命令されたら、自分の意志とは関係なく従います。
ルシンダがエラに会ったとき、ちっとも泣き止まなかったので、「いうことをきく子になれば、この子は幸せになれる」とルシンダは思ったのです。しかし、これは贈り物というより呪いです。
誰かに、「ひと晩中、片足でけんけんしていろ」とか、「わんこそばを500杯食べろ」と命令されたら、エラの体力が続くかぎり、そうしてしまうのですから。「勝負に負けろ」「一番大事なものを差し出せ」「お金をくれ」など、どんな理不尽な命令でも、エラは従います。
命令に従わないと、頭痛がしたり、息苦しくなったりします。
子供の頃は母親(レデイ・エレノア)と古くからいる料理人のマンディ(この人も妖精)が、エラを守ってきましたが、15歳になる頃、母親が亡くなって、エラの環境が大きく変わります。
自分の好きなようにできない人生なんてまっぴら、とエラは、魔法を取り消してもらうために、ルシンダを巨人のコミュニティに探しに行くなど、呪をとくために、さまざまな努力をします。
自分の人生を生きるために、決してあきらめなかった1人の女の子の話、それが Ella Enchantedです。
とても楽しくて、いいところがいっぱいある小説ですが、以下に私がこの本で好きなところを3つだけ書きます。
主人公エラのキャラクター
エラは、「従順でいる」という呪いがかかっているから、人に命令されたら、その通りのことをします。しかし、かえってそのことが、エラを強い人間にしていきます。
命令されても、実行するのをできるだけ引き延ばそうとしたり、その命令の穴をついて、なんとか自分の意志を貫こうとしたりしているうちに、不屈の精神が養われていくのです。
もともとエラは、とても頭がよく、機転もきく女の子です。
勇気もあるし、優しさも備えています。行動力もあります。父親に送り込まれた花嫁学校で、ハティ(後にまま姉になる人)に、「親友と縁を切れ」と命令されたとき、そんなことはしたくないエラは、学校から逃げ出します。
エラと王子シャーの関係
最後にエラはシャーという王子と結ばれます。しかし、その前に、エラと王子が、ちょっとした顔見知りから、次第に関係を深めていくさまが描写されていて、楽しめます。
王子はやさしくて、賢く、誠実でとてもいい性格(欠点もありますが)。自分を笑わせてくれるエラを気に入ります。
王子は隣国に1年間滞在するため、全く会えないときがあります。このとき、2人は文通をしていて、この手紙のやりとりがほほえましいです。
手紙を交換しているうちに、2人はどんどんお互いを好きになっていき、とうとう王子は愛を酷薄する手紙を送ります。エラは王子とは結婚できないと思います。なぜなら、誰かに「王子を殺せ」と命令されたら、自分は従うしかないからです。
王子を好きだからこそ、危険なめにあわせるわけにはいかない。国をあやうくするわけにはいかない。エラは、自分は金持ちと結婚したとうその手紙(それも相当感じの悪い手紙)を王子に送り、いっぺんに嫌われます。
納得できる展開
シンデレラの童話や映画を見ると、「なぜシンデレラは、継母やまま姉の言いなりになって、いつまでも灰にまみれて家事をしているのか?」と多くの人は不思議に思うでしょう。
ペローの童話では、「やさしい性格だから」ということになっていますが、やさしくたって、「嫌だ」ということはできます。
この物語には、「命令に従うという呪いにかかっていたから」という納得できる說明があります。
また、王子とエラは、舞踏会で1回会っただけで、結婚するのではなく、それまでに、しっかり関係を深めているので、2人の結婚は当然の成り行きだと腑に落ちます。
ほかにも、父親が娘に無関心な理由、まま母がエラをいじめる理由など、童話では、どうしてこうなんだろう? と思うポイントが、いくつも納得のいく形で說明されています。
あまりに巧みに、シンデレラの要素が組み込まれているので、最後にならないとシンデレラのりテリングだと気づかない人もいるかもしれません。
くすくす笑える箇所もたくさんあり、最後はハッピーエンドで、すっきり、笑顔になります。
子供が読めば、エラはすばらしいロールモデルとなるでしょう。おすすめの1冊です
Ella Enchanted 基本情報
- 作者:Gail Carson Levine(ゲール・カーソン・レヴィン)
- 出版:1997年
- ニューベリー賞受賞作(ニューベリー賞はアメリカの有名な児童文学賞)
- 映画『Ella Enchanted』邦題(アン・ハサウェイ 魔法の国のプリンセス)の原作。しかし、小説と原作は、ほとんど別ものです。
- 子供向けなので英語は難しくないし、230ページ足らずと短いし、何よりおもしろいので多読にも向いています。
- 『さよなら、「いい子」の魔法』『魔法にかけられたエラ』というタイトルで翻訳版があります。『魔法に~」のほうはキンドル版があるので、読んでみました。言葉尻など、違和感があるところもあるものの(単に自分のイメージと違うだけです)、読みやすい翻訳です。
この作家の小説ははじめて読みましたが、とてもおもしろかったので、ほかの作品も読んでみます。Ella Enchantedも繰り返し読む予定(私は気にいると同じ小説を何度も読みます)。
★映画の感想を書きました。
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