シンデレラ(2021、実写版):アマゾンのミュージカル映画の感想。

お城 シンデレラ

久しぶりにシンデレラが原作の映画を見ました。2021年の作品なので、シンデレラものとしてはもっとも新しいものだと思います。

タイトルは何のひねりもない Cynderella です。

すごくおもしろいというわけではありませんが、シンデレラや童話が好きな人は、そこそこ楽しめる作品です。私も途中で寝ることなく、一応、最後まで見ました。以下、ネタバレも含む感想です。

Cynderella 予告編(2分52秒)

シンデレラ(2021)・作品情報

監督・脚本:ケイ・キャノン
原作:シャルル・ペローのシンデレラ
制作:アメリカ・イギリス
配給:アマゾン・スタジオ(私はアマゾン・カナダで見ました)
主演:カミラ・カベロ(シンデレラ)、イディナ・メンゼル(継母)、ニコラス・ガリツィン(王子)、ビリー・ポーター(ゴッドペアレント)
特徴:ミュージカル仕立て、中途半端に現代風にアレンジしてある。王子様に妹がいる。

あらすじ:(2/3ほど)。

シンデレラなので、あらすじを書くまでもありませんが、以下のように展開します(エピソードの順番は一致していない可能性あり)。

エラは、継母とまま姉2人にしいたげられながら、地下室でネズミ3匹とさなぎ(これが後に蝶⇒ゴッドマザーとなる)と暮らしています。

灰にまみれている(とナレーションで言う)ので、シンデレラと呼ばれることもあるエラの夢は、ファッションデザイナーになること。自室(地下室)には、自作のデザイン画がびっしり貼ってあり、エラは日夜、ドレスの制作に励んでいます。

一方、この国のお城に、王子さまがいて、彼は両親から結婚をせっつかれていますが、その気になりません。そこで、王様は、嫁選びの舞踏会を開くことにします。あるとき、王様一家が、お城の窓から国民に挨拶していたら(何らかの催しもの)、よく見えないからと、エラは、王様の彫像に登りました。彫像に座っているエラを見て、王子は一目惚れします。

エラに会いたい一心で、王子は町民に扮して街にお出かけ。市場で、自作のドレスを売ろうとしていたエラと出会い、彼女からドレスを買います。自分が王子だとは言いません。

王子は、エラに舞踏会に来るよう強く言います。実は、エラは舞踏会には興味がなかったのですが、「舞踏会では世界中の人に会えるから、デザイナーになれるきっかけ作りができる」と、王子は参加をうながします。

舞踏会の日が来ました。自作のドレスで出かけようとしたエラに、継母は、「あんたは行かなくてもいい」と言って彼女のドレスに黒いインクをかけます(予告編参照)。エラががっかりしていると、元さなぎの蝶が、さらにゴッドマザーに変身して、魔法でエラにドレスや馬車を用意します。このドレスは、エラのデザイン画がベースになっています。

人間になったねずみとエラは、無事城に行き、まず、タチアナという女王(?)に、ドレスを認められ、翌日広場で、他のデザイン画を見せる約束を取り付けます。次にエラは、王子さまと会って、ダンスなどをしているうちに懇意になります(恋に落ちたらしい)。

王子さまは、その夜いきなりエラにプロポーズしますが、エラは、「結婚すると、デザイナーというキャリアをあきらめることになる」、と言ってプロポーズを断ります。しかし、やっぱり好きなのか、王子と抱き合ったりします。そうこうするうちに12時の鐘がなり始めたのでエラは大急ぎで城を出ます。

馬車まで走っていくとき、追いかけてくる家臣を追っ払うために、エラはガラスの靴の片方を投げつけます(なんて乱暴な)。

見どころ:歌と踊り

ミュージカルなので、歌や踊りがいっぱい出てきて、楽しいです。エラ役の人は、歌手で、演技はこの映画が初めてとのこと。初めてのわりにはなかなかいいです(うまいとは言いません)。でも、歌は上手です。

継母役の人は、「アナと雪の女王」のエルサの声と歌を担当している人なので、こちらもとても上手です。王子さま役の人も歌は上手です。もう少し、いい感じのオリジナルの曲や踊りがあったら、尚よかったと思います。

残念なポイント

私は英語版を字幕なしで見たので、肝心のセリフを聞き落としているかもしれません。しかし、それを考え合わせても、話の筋が中途半端です。

シンデレラらしくない

シンデレラストーリーの魅力は、貧乏でしいたげられている幸薄いシンデレラが、魔法によって舞踏会で燦然と輝き、いきなり、プリンセス(後のクイーン)になってしまうことです。しかし、この映画のエラは、そんなにしいたげられているようには見えません。

家事をするシーンは、私が覚えている限り、継母と姉に紅茶とお菓子を出すのと、洗濯もののかごを持って、画面を横切るぐらいです。舞踏会のシーンや、王子とのからみをのぞけば、彼女はたいてい、地下室でデザイン画を描いたり、ドレスを作ったり、市場でドレスを売り込んだり、布を買ったりしています。(時代は中世だと思いますが、ミシンを使っています)

こき使われていたら、ドレスをデザインしたり作ったりする余裕はないはずです。シャルル・ペローのシンデレラは、家事で心身ともに疲れて、かまどの前で眠りこみますが、エラには立派なベッドがあります。

しかも、普段着(女中ルック)のシンデレラと舞踏会でドレスを着たシンデレラにあまり差が見られません。舞踏会に着ていく白いドレス、そんなに素敵に見えないのは私だけでしょうか?

ロマンスも今ひとつ

この映画は子供向けなのか、ロマンス色もうすいです。エラと王子は、最後には結婚する約束をしますが、そんなに好きあっているようには見えません。どうしても一緒になりたいという切迫感が感じられないのです。まあ、原作のシンデレラには、ロマンスなんてありませんから、これは別になくてもいいのかもしれません。

しかし、映画の中では、王子もエラも一応、愛しているとか、なんとか口では言っていますし、キスシーンもあります。脚本にそう書いてあるから、そう言ったり、抱き合ったりしている印象です。

シンデレラと言えば、昔、ディズニーの考え出した True love(真実の愛)が有名で、その後の映画ではよく出てきますが、この映画には、真実の愛はありません。真実の愛はないのに、あるふりをしているのが鼻につきます。

筋に説得力がない

エラは、デザイナーになる夢をあきらめたくないから、結婚はできない、と王子のプロポーズを断ります。でも、別に王子と結婚したって服のデザインはできますよね? この映画では、ゴッドマザー(魔法使い)は、元蝶のジェンダーフリーのファビュラスゴッドマザーです。

彼はゲイです。生まれつきの性別なんて問題にしない現代の理想を描いた世界の話なのに、なぜ、エラは、王子と結婚するとドレスのデザインができないのでしょうか? ロイヤルファミリーだからでしょうか?

王子はエラに断られて、一度は恋をあきらめようとしますが、結局、最後は、王位を妹に譲って、自分はエラと一緒に旅に出ることにします。ファッションデザイナーになるのに、旅に出ないといけない理由は、エラに専属デザイナーの仕事を依頼したタチアナという女王が、世界を旅するからです。なぜ、タチアナが世界を旅するのかも謎。この人は、どこかの女王だと思いますが、外交官も兼ねているのでしょうか?

タチアナは舞踏会に来ていたので、一応、王子のお妃候補の一人だと思いましたが、違うんですかね。

タチアナが旅をできるなら、エラだって、王子と結婚したあと、世界を旅するデザイナーになることだってできるはずです。なぜ、王子は、王位を妹に譲る必要があるのか?

妹といえば、この人は、政治に興味があるようですが、カリスマ性がないので、国の統率はできなさそうです。しかし、王様もべつに政治はしていなさそうなので、いいのかもしれません。きっと、資源がいっぱいあり、敵国も攻めてこない立地にある王国なのでしょう。

深く追求しなければ楽しい

このように、話に説得力がありませんが、そういうことを考えなければ楽しく鑑賞できます。

全体的にチープな印象がありますが。王子の服装もあまり王子らしくないです。1度だけ王子っぽい服を着ていましたが、あとは、現代人のような感じ。

王子は、よく、遊び友達と親友だという家臣と一緒に出てきます。この家臣だけ、時代ものっぽい服装ですが、遊び友達は現代の不良みたいで、気品など何1つありません。

現代ふうにしたあまり、時代劇や歴史劇の品格が失われてしまったのでしょう。いや、もともと、そんなものは求めていなかったのかもしれません。

シンデレラの実写なら、ディズニーのほうがよほどよかったです。

シンデレラ(ディズニーの実写版)2015の感想

シンデレラと王子のロマンスを描いたものでは、Ever Afterが好きです。

エバー・アフター:シンデレラの物語(1997)の感想

映画ではありませんが、ドイツのテレビムービーもシンデレラと王子の間に愛が感じられました。このドラマの原作は、グリム童話のシンデレラです。

シンデレラ / アシェンプテル (1989)の感想

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