ロジャース&ハマースタインのシンデレラ(1965)の感想。

秋のお城 ペロー童話

ロジャース&ハマースタイン2世によるテレビミュージカル、『シンデレラ』の1965年版を見ました。ロジャースとハマースタインというのは、1940年代~50年代に、有名なブロードウエイのミュージカル作品を手がけた作曲家と作詞家(脚本)のコンビです。ロジャースさんが作曲家で、ハマースタイン2世さんが作詞家です。代表作はサウンド・オブ・ミュージック。

R&E版のシンデレラはテレビミュージカル

2人による『シンデレラ』はまずテレビミュージカルとして制作されました。ペロー版の『シンデレラ』を原作としています。

  • 1957年版:ジュリー・アンドリュース主演で、大勢の人が見た作品。
  • 1965年版:57年版のリメイク、レスリー・アン・ウォーレン主演
  • 1997年版:57年版のリメイク、ブランディ主演。
  • 後にブロードウエイでも上演される。

今回取り上げるのは、1965年版、昭和40年の作品です。

原作に忠実でオーソドックスなシンデレラ

冒頭、王子がいきなりシンデレラの家にやってきて、水をもらうところなど、多少原作と違うところはありますが、ほぼ原作に忠実です。

原作に忠実なので、ディズニーアニメのように、しゃべるネズミや、そのネズミを追いかける猫は出てこないし(馬車の馬に変わるネズミは出てきますが)、舞踏会に行く前に、継母たちが、シンデレラのドレスを引き裂くこともしないし、ガラスの靴が割れることもありません。

こちらは冒頭の2分間。のどが乾いた王子さまが、たまたま水をもらいにいった家でシンデレラが留守番をしています。シンデレラがなかなか出てこないのは、継母から、「家から出るな」と言われているからです。この段階では、シンデレラは相手が王子だとは気づいていません。

シンプルなセットが時代を感じさせる

テレビ局のスタジオにセットを組み立てて撮影しているので、舞台劇のような雰囲気です。このセット、よくいえばシンプル、悪くいえばチャチなのは、たぶん時代のせいでしょう。

このセットを見て、私が思い出したのは、ドラマ『タイム・トラベラー』です。子供のとき、毎週楽しみに見ていた、NHKの少年ドラマシリーズ第1作、『タイムトラベラー』(1970)の最終回を、ずーっとずーっとあとになってYouTubeで見ました。

最終回の最後で、主人公の芳山和子が、近所を歩いているのですが、そのセットがあまりにちゃちで、「え~、こんなふうだったんだ」とびっくりしました。

なぜなら、私の脳内では、もっとリアルな今のドラマみたいなセット(あるいはフィルム撮影の映画に出てくるような街角)としてインプットされていましたから。

シンデレラはもともと古い話なので、古臭い雰囲気があっても何ら問題ありません。

penの思う見どころ:衣装

このドラマの一番の見どころは、歌と歌唱と踊りだと人は言うでしょう。ミュージカルですからね。しかし、私は、衣装がかわいいと思いました。全体的に中世の雰囲気です。

シンデレラが舞踏会に行く時のドレスは、ベージュっぽい白のシンプルなドレスで、これまで見たシンデレラのドレス(そんなにたいした数は見ておりませんが)では一番好きです。

こちらはシンデレラが魔法で美しいドレス姿に変身するシーンです(3分ほど)。

地味なドレスだと思う人もいるかもしれません。フェアリー・ゴッドマザーの衣装のほうが可愛いと思う人もいるでしょう。しかし、ピュアなシンデレラには白いドレスがぴったりです。これなら、このまま結婚式にも流用できるので経済的です。原作に忠実なので、ガラスの靴は魔法では出さず、フェアリーが別にプレゼントしています。

ほかの人のドレスもカラフルでかわいいです。こちらはお城で踊っているシーン(1分ほど)。帽子がこっています。

見どころその2:シンデレラ役の レスリー・アン・ウォーレン

シンデレラを演じている レスリー・アン・ウォーレンは、当時、まだ18歳か19歳ぐらいで、ほかの役者さんに比べると、明らかに1人だけずいぶん若いです。この方は、目が大きくて、首が細長く、全体的にスレンダーで、なんとなくオードリー・ヘップバーンに雰囲気が似ています。

ディズニーアニメのシンデレラより、わたしの持つシンデレラのイメージに近いです。ちょっと化粧が濃いのが気になりますが、舞台用の化粧なのでしょうね。

この方は声もかわいいです。歌はほかの人に比べると、やや経験不足かな、と思うところもありますが、たぶんほかの人がうますぎるのでしょう。ちなみに、このミュージカル、全員、生で歌っています。

シンデレラ以外の人は、見た目ではなく歌や芝居がうまい人をキャスティングしたのか、わりと年齢高めです。

特に、2人のまま姉は、かなりふけていて、母親と3人でいるところを見ると、誰が母親なのだろう、と一瞬迷います。まま姉の一人は、やたらまばたきをするくせがあり、もう一人は膝が鳴るという不思議なくせがあり、笑いを取っています。

継母はしっかり意地悪ですが、姉たちは、吉本あたりで姉妹で漫才をしても成功しそうなキャラクターなので、そんなに意地悪には見えません。

もちろん歌もよいです

ミュージカルなので、皆が歌を歌いながら感情表現をしていますが、いい歌がたくさんあります。

私が好きなのは、シンデレラが歌う In my little corner という歌です(3分54秒)。

シンデレラのコーナーとはかまどのそばです。ここにすわっていると、私は気持ちが落ちつくし、誰にも、だまされることなく、好きなものになれるのよ、という歌です。

冒頭をちょっと訳します。
I’m as mild and as meek as a mouse
When I hear a command I obey
But I know of a spot in my house
Where no one can stand in my way
In my own little corner
In my own little chair
I can be whatever I want to be
On the wing of my fancy
I can fly anywhere
And the world will open its arms to me

私はハツカネズミのようにおとなしくて従順
命令されたら、従うわ
でも、家の中で
誰にもじゃまされない場所があるの
私の小さな場所
私の小さな椅子
なりたいものになんでもなれる
想像の翼をはためかせ
どこにでも飛んでいける
すると、世界がその腕を私に広げるの

夢見るシンデレラの気持ちがよく表れている歌です。ほかにも、いい曲がたくさんありますし、王子さまはとても歌がうまいです、私はディズニー・アニメの曲より、こちらの楽曲のほうが好きでした。まあ、好みの問題でしょうね。

いまの若者が見たら展開がスローだと思うかもしれませんが、 落ち着いた、格調高い仕上がりなので、シンデレラ入門としておすすめの作品です。

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