森の中の三人のこびと(グリム兄弟、1812)のあらすじ。

いちご グリム童話

グリム童話から、『森の中の三人のこびと」という話を紹介します。ドイツ語のタイトルは、Die drei Männlein im Walde 英語は、The three little men in the wood.

いじわるな継母、その連れ子のいじわるな姉、美しくて善良な父親の連れ子、善良な人間にはやさしくする小人、と童話によく出てくるパターンがぎゅっと詰まっている話です。

1行のあらすじ

美しくて善良な連れ子をいじめまくった継母と、その連れ子の姉があわれな最期を迎える話。

やもめ同士の結婚

夫を失くし、娘が1人いる女性が、やはり、やもめで、娘がいる男性に、自分と結婚しないかと持ちかけます。

女「結婚したら、あなたの娘は、ミルクで顔を洗わせ、ワインを飲ませますわ。自分の娘は水で洗わせ、水を飲ませますけど」

男は、どうしていいかわからず、穴のあいたブーツを使って決めることにしました。ブーツに水をいっぱい入れて、屋根裏に吊るし、水がもれなかったら結婚することにしたのです。

水がうまく穴をひっぱって、もれなかったので、男と女は結婚しました。

連れ子にいじわるをする継母

結婚した初日、継母は男の娘(女から見た連れ子、A子とします)を、ミルクで洗わせ、ワインを飲ませ、自分の娘(B子と呼びます。ぶすだからB子です)には水をあてがいましたが、2日目は、両方の娘に水をあてがい、3日目は、A子が水、B子がミルクとワインになり、それ以後、ずっとこのままでした。

継母はA子が嫌いで、毎日、A子をいじめました。A子が、自分の娘と違って美しくやさしいのも気に入りません。B子のほうは、みにくくて、うんざりするような性格でしたから。

紙のドレスと固いパン

極寒の冬のある日、継母は、紙でドレスを作り、A子にこれを着て、森を行き、かごにいっぱいイチゴをつんでくるよう言いました。

A子「ええ?? 冬にはイチゴはなりませんわ。地面は凍っているし、雪でおおわれています。それに、紙のドレスって? そんなものを着たら、私はこごえてしまいます」。

継母「私にさからうつもり? さっさと行きな。かごにいっぱいイチゴをつむまでは、帰ってこないで。ほら、このパンを持っていきな。きょうのご飯だ。(心の声:おまえが飢えて凍えて死んでしまえば、もうお前に会わなくてすむわね)」。

継母は、古くて固いパンをA子に手渡しました。

小人の家

A子は紙のドレスを着て、かごを持ち、外に出ました。あたりは、すっかり雪におおわれています。森に来ると、小さな家を見つけました。中から、小人がこっちを見ています。A子は、挨拶をし、静かにドアをノックしました。

小人たちはA子を招きいれると、A子は、火のそばに座って体をあたため、パンを食べ始めました。

小人たち「そのパン、ちょっと僕たちにもわけてくれない?」

A子「喜んで」

A子は、パンを半分、小人たちに手渡しました。

小人「冬なのに、森で、そんな薄い服を着て、あんた、何してるの?」

A子は、イチゴをつまないと家に帰れないことを話しました。

パンを食べ終えたA子に小人は、ほうきを渡し、裏口のところにある雪を掃いて、と頼みます。

A子は言われたとおりに、裏口へ行き、雪を掃き始めました。その間、小人3人は、会議をしました。

「あんなに礼儀正しくて、やさしくて、パンまでくれた娘に、どんなお礼をすべきだろうか?」

小人1「僕は、日に日にあの娘がきれいになるようにする」

小人2「僕は、あの娘が、話すたびに、口から金のかけらが出るようにする」

小人3「僕は、あの々が王様と結婚できるようにする」。

イチゴが見つかる

小人の会議のことなど何も知らず、A子がせっせと雪を掃いていると、あら不思議。熟したイチゴがいくつもあります。雪の中から生えてきたみたいにして。A子はイチゴをかごいっぱいにつみ、小人たちに礼を言って、帰路につきました。

家に戻って、挨拶すると、A子の口から金のかけらがこぼれました。A子は、たいしてい気にせず、その日、森であったことを継母に話しました。しゃべるたびに、口から金のかけらがこぼれ、部屋の中が金だらけになりました。

それを見ていた、継母のB子は、自分も、森にイチゴを探しにいきたいと思います。

母は、こんな寒い日に外に出たら凍えてしまうよ、と娘を森にやりたがりませんでしたが、B子が、ゆずらないので、結局、森に行かせることにしました。

母は、B子に、毛皮のコートを作ってやり、弁当には、バターを塗ったパンとケーキを持たせました。

実子B子の問題行動

B子は、まっすぐ小人の家に向かい、挨拶もなく、家に入り込み、かまどのそばで、パンとケーキを食べ始めました。

小人たち「僕たちにも、ちょっとくれない?」

B子「私の分にしても足りないぐらいなのよ。あんたたちにあげるわけないでしょ」。

B子がパンを食べ終わると、小人はほうきを渡し、裏口の前を掃くよう頼みました。

B子「自分たちで掃けばいいでしょ。私、あんたたちの召使いじゃないわ」。

小人が自分に何もくれないので、B子は、家に帰りました。

小人たちはまた会議をしました。議題は、「あんなに無礼で、心がねじまがって、嫉妬深く、人に何もシェアしない娘に何をあげるべきか?」です。

小人の会議

小人1「日に日に、醜くなるようにしてやる」

小人2「話すたびに口からヒキガエルが出るようにしよう」

小人3「不幸な死を迎えるようにしてやる」

帰り際、B子は、イチゴを探しましたが、なかったので、むっとしながら、家に戻りました。帰宅して、森で起きたことを話そうと口をあけたら、ヒキガエルがびよーんと出てきたので、みな、B子を避けました。

継母は以前にもまして、A子を憎く思いました。A子が日に日にきれいになっていくのも気に入りません。

毛糸を洗いに川へ

継母は、毛糸をやかんでゆでてから、A子の肩にかけ、斧を渡します。今回の仕事は、凍りついた川に行き、斧で氷を割って、川の水で、毛糸を洗うことです。

A子がこの命令に従って、川へ行き、斧で、氷を割っていると、王様を乗せた立派な場所が通りかかりました。この後のことは、想像つくでしょう。王様は、美しいA子が気に入り、城に連れ帰り、2人は結婚をし、1年後に、A子はかわいい男児を生みました。

しつこい継母

A子が幸せに暮らしてくと聞いた母は、くやしくて仕方がありません。娘、B子を連れて、城に行き、王様がいないすきをついて、娘と一緒に、寝ていたA子を窓から、下を流れていた川に放り投げました。

その後、B子が、A子のふりをして、ベッドに寝ました。王様がもどってきたとき、母は、A子は病気だから、しゃべると口からヒキガエルが出るだの、なんだの言って、うまくごまかしました。

アヒルになったA子

しかし、A子は死にませんでした。お城まわりの溝に、アヒルとして出現し、「王様、何をしておいでですか? 起きてますか、寝てますか? お客様(継母とB子のこと)は、何をしていますか? 赤ちゃんは何をしていますか」としゃべりました。

台所の下働きの少年が、「お客さんは寝ています」と答えると、アヒルは、女王の姿に戻って、自分の部屋に行き、赤ん坊にふとんをかけると、戻ってきてまたアヒルになりました。

これを二晩繰り返したA子は、3日めの晩に、少年にこう頼みました。

王様へのお願い

「王様のところに行って、敷居のところで、剣を3回、私の上で振るよう、言ってください」。

王様が言われたとおりにしたら、妻が目の前に立っています。王様は大喜び。王様は赤ん坊が洗礼を受ける次の日曜まで、后(A子)を別の部屋に隠しておくことにしました。

継母とB子のあわれな最後

洗礼が終わると、王様は、「人をベッドから引きずり出して、川に投げる人間には何がふさわしいか?」と継母に尋ねました。「そんなろくでもない人間は釘がいっぱいささっている樽に入れて、山から川に転がり落とすのがいいでしょう」。

こう、継母が答えると、王様は、「自分で自分の刑罰を言ったな」と言い、釘がささった樽に、継母をB子を一緒に入れ、蓋をし、山から川に向かって、転がしたので、樽は川に落ちました。

原文(英語)⇒Grimm 013: The Three Little Men in the Woods

教訓:人を憎むのもほどほどに。

この童話の教訓は、グリム童話によくある

・善良な者、親切な者、働き者は報われる

・邪悪な者、ケチな者、なまけ者は悪行の報いを受ける

だから、善良でいなさい、というものです。

もう1つ、「他人のことはほっといて、自分の生活にフォーカスしなさい」「他人に干渉するな、いらぬおせっかいをするな」というメッセージもありますね。

この童話は、A子が王様と結婚したところで一応、話が終わっています。しかし、どこまでもA子を憎む、継母の執念深さが話をここで終わらせませんでした。

A子が結婚した段階で、継母が「まあ、しかたないか」とあきらめ、そのままA子のことはほっといて、自分の人生をよくすることに意識を向ければ、樽の中に詰め込まれて、川に落ちることはなかったのです。

しかし、継母は、放置できず、城に行って、A子を窓から放り投げます。A子は、小人の魔法がかかっていたのか、川に落とされても死なず、アヒルとなって蘇りました。

再婚以来、ずっとA子を憎んで、意地悪をしてきたこの母親は、ある意味、A子にコントロールされる人生を送ったのです。誰かを強く憎むことは、結局その相手に、自分を支配させることになるので、ほどほどにしておいたほうがいいです。

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