おぜんやご飯のしたくと金貨を生む騾馬と棍棒袋から出ろ(1812, グリム童話)のあらすじ

ロバ グリム童話

魔法のテーブルと、魔法のロバと、魔法の棍棒が出てくるグリム童話を紹介します。

原題は、Tischlein deck dich, Goldesel und Knüppel aus dem Sack、英語のタイトルは、The Wishing-Table, the Gold-Ass, and the Cudgel in the Sack。

日本語のタイトルは、Wikipediaで調べたところ、『おぜんやご飯のしたくと金貨を生む騾馬と棍棒袋から出ろ』という、日本語的に意味不明なものになっています。

句読点を入れると、多少はわかりやすくなるでしょうか?

すなわち

『おぜんや、ご飯のしたく、と、金貨を生む驢馬と、棍棒、袋から出ろ』

あまり変わりませんかね?

1行のあらすじ

家を追い出された3兄弟が、出先で修行して、途中でだまされたりしながらも、宝物を自宅に持ち帰る話

うそをつくヤギ

あるところに貧しい仕立て屋がいました。

彼は、息子3人とヤギ1匹と住んでいます。家中で一番大事にされていたのはヤギです。家族全員が飲むミルクを出していたからです。

ある日、長男が父親に言われて、ヤギを牧場につれていきました。ヤギにたっぷり葉っぱを食べさせるためです。

1日の終わり、長男がヤギに、「たっぷり、葉っぱを食べたかい?」と聞いたところ、ヤギは「ああ、食べた食べた、もう葉っぱ1枚も入らないメエ」と答えました。

ところが、長男がヤギを連れ帰ったあと、父親が、ヤギに、「葉っぱをたくさん食べたか?」と聞いたら、ヤギは、「葉っぱのないところに連れていかれたから、1枚も食べられなかったメエ」と答えたのです。

父親は怒って、長男を追い出しました。

その後、次男、次に三男が、葉っぱを食べさせにヤギを連れ出しましたが、長男のときと全く同じことが起こり、この2人も家を追い出されました。

息子たちがいなくなってので、父親がヤギを葉っぱを食べに連れ出したところ、牧場では、ヤギは「たくさん食べたメエ」と言ったのに、家に帰ったら、「葉っぱ、食べてないメエ」と答えたので、父親は、息子たちが本当のことを言っていたことに気づきました。

怒った父親はヤギの頭を丸刈りにして、家から追い出しました。

魔法のテーブル

家から出た兄弟は、それぞれ外で職人に弟子入りして、まじめにスキルを身に着けていました。

長男は家具職人となり、ある程度、腕を磨いたところで、家に帰ろうとしたら、親方が、餞別にテーブルをくれました。

見かけはさえないふつうのテーブルですが、実はこのテーブルは魔法のテーブルです。

テーブルの上にクロスを敷いて、「テーブルよ、支度ができたぞ」と言うと、ごちそうがたんまり乗った食器とナイフ、フォーク、赤ワインが入ったグラスなどが出てくるのです。

しかも、皿がからになるとおかわりまで出してくれます。

「このテーブルがあれば、父さん、僕のこと、きっと許してくれるね」

こう思って長男は、テーブルを背負って家路につきました。

テーブルを盗まれる

長男は途中で宿屋に入ります。

宿屋のご主人「泊めることはできるが、食事は出せないぞ」

長男「平気ですよ。僕のほうで用意するので、一緒に食べましょう」

そう言って、長男は魔法のテーブルにごちそうを出しました。

これを見た宿屋の主人は、「おお、なんというテーブル。こういうのが1つあるといろいろ便利だ」と思い、長男が寝ているすきに、自分のテーブルと、魔法のテーブルをすり替えました。

そんなことは知らない長男は、ふつうのテーブルを持って帰宅。

父親は喜んでくれましたが、親戚中を呼んで、テーブルにごちそうを出そうとしたら、何も出ません。長男は、宿屋のご主人にテーブルをすり替えられたことに気づきました。

金貨を出すロバ

次男は、粉挽きに弟子入りし、まじめに修行しました。ひととおりのスキルが身についたので、家に帰ろうとしたら、やはり親方が餞別をくれました。

ロバです。

ただのロバではありません。「ブリックルブリット!」と言うと、ロバのおしりから、金貨がだだだーっと落ちてくる魔法のロバです。

次男は、やはり、長男がだまされた宿屋に泊まります。

宿代としてポケットから金貨2枚を取り出し、宿の主人に渡しました。

見かけがすごく貧乏そうなのに、金貨を2枚持っていたので、欲の深い主人は、その場で宿代を値上げし、金貨をもう2枚請求します。

すると、次男は、「お金、用意するので、ちょっと待っててください。ちょっとテーブルクロスを借りますね」と言って、ロバをつないである、厩(うまや)へ行きました。

こっそりあとをつけていた主人は、次男が、ロバの足元にテーブルクロスを広げ、「ブリックルブリット!」と言ったら、金貨がばさばさロバのおしりから落ちてきたので仰天しました。

「このロバ、持っていると重宝するかも?」

宿の主人は、次男が寝ているすきに、自分のロバと魔法のロバをすり替えます。

何も知らない次男は、家に帰り、父や親戚全員を金持ちにするため、みんなを呼んで、ロバに「ブリックルブリット!」と言いました。

しかし、何も起きません。父も親戚も貧乏のままでした。

魔法の棍棒

三男はろくろ師の修行をしていました。実は、彼は、3人息子の中で、もっとも仕事の覚えが悪く、わりと長々と修行していました。

兄たちが手紙で、「家は相変わらず貧乏だ。世の中ろくなことがない。だってね…こんなことがあったんだよね」と、宿の主人にテーブルやロバを取られたことを知らせてきました。

ようやく1人前になって、家に戻るとき、親方は、三男に、袋をくれました。中には棍棒が入っています。

いかにも変なプレゼントです。

三男「棍棒が入っていると、重いだけじゃないっすか?」

親方「いやいや、この棍棒は、魔法の棍棒なのだ。棍棒、袋から出ろ、と言うと、袋から出て、悪者を徹底的に叩いてくれるんだよ」。

テーブルとロバを取り返す

テーブルとロバを取り返しに、三男は、兄たちが泊まった宿屋に行きます。

彼は、宿主に、これまで見たすばらしいものの話をしました。「ごちそうが出るテーブル、金貨を出すロバ、でもね、何といってもこれが一番すごいんだ」。

こう言って、三男は、棍棒の入った袋を見せました。

宿主は、この袋もお宝なのだと思い、三男が眠っているすきに、似たような袋とすり変えることにし、夜になると部屋にやってきました。

三男は、袋を枕にしてぐっすり眠っていましたが、もちろん寝たふりをしていただけです。

宿主が袋をひっぱった瞬間、三男はがばっと起きて、「棍棒、袋から出ろ」と叫ぶと、棍棒は、宿主をがんがん叩きはじめました。

宿主「ひへ~~~助けてくれ~~~!!」

三男「ならば、兄たちから奪ったテーブルとロバを返せ!」

こうして、三男は、テーブルとロバを取り返すと、家に帰り、父親と兄たち、親戚は、ごちそうを食べ、金貨を得ることができたのです。

ヤギはどうなった?

さて、頭を丸刈りにされたヤギはどうなったのでしょう?

ヤギは、狐がいないすきに、狐の穴にしのびこんでいました。夜になって戻ってきた狐は、ヤギの目だけを見て、化け物だと思って逃げ出します。

友達のクマにチェックを頼んだところ、クマもヤギを化け物だと誤解します。

しかし、「それなら、私が見てきましょう」と言ってやってきた小さな蜂に、ヤギは、さんざん刺され、狐の穴から逃げ出しました。

いまだにヤギの行方はしれません。

原文(英語)⇒ Grimm 036: Table-Be-Set, Gold-Donkey, and Cudgel-out-of-the-Sack

ヤギを信じる父親の心理って?

なぜ、ヤギがあんな嘘を言ったのか不思議ですが、もともと虚言癖があったのかもしれません。

不思議なのは、息子の言うことより、ヤギを信じる父親です。

息子がいても、生活の足しにならないが、ヤギはミルクを出すから、嘘を言う、言わないは関係なく、父親の中では、ヤギは大事な存在だったのでしょうか?

それなら、自分に嘘をついたとき、あそこまで怒るのも変です。

ヤギを追い出すとミルクがなくなるのに。

理由はなんであれ、父親はヤギを信じてしまったのですが、結果的にこれが幸いとなり、息子たちは手に職をつけ、魔法のアイテムまでゲットしました。

そういう意味では、ヤギはありがたい存在だったのかもしれません。

ヤギの姿をしているけれど、その正体は、童話に出てくる小人なのかもしれない、と思います。

職能を身につけた結果、宝物を得られるのは、いかにも勤労を善とするグリム童話らしい話です。働かざるもの食うべからずの世界ですね。

■ヤギが出てくるほかの話

ロバの皮(シャルル・ペロー)のあらすじ

『ブリックルブリット!』っていかにも、金貨が出てきそうなまじないの言葉ですね。私も、困ったときは、『ブリックルブリット!』と言ってみます。

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