グリム童話から、とても有名な『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじを紹介します。子供たちに人気のある話ですが、原作を読んだことがない人も多いかもしれません。
超簡単な要約
時間のない人のために、先に要約を書いておきます。
まずしい木こりの子供、ヘンゼルとグレーテルが、口減らしのために親に森に捨てられる。2人は森の中をさまよっているうちに、パンでできた家を見つける。喜んで食べていたら、そこは魔女の家だった。2人は魔女につかまり食べられそうになるが、機転をきかしたグレーテルが魔女を殺し、最後には家に帰ることができる。
貧乏すぎる木こり一家
大きな森のそばに、まずしい木こりと妻、子ども2人が住んでいました。子供の名前はヘンゼル(男子)とグレーテル(女子)。妻は子どもたちにとってはまま母です。ふだんでもこの木こり一家は貧乏ですが、大きな飢饉(ききん)が起きたため、食べ物が底をつきます。
ある晩、妻は夫に、子どもたちを森に捨てることを提案します。夫は嫌だと言ったけれど、妻は、「子供を捨てなきゃ、4人とも餓死よ。あなたは棺桶用の板をかんなで削るぐらいしかできなくなるわよ」と言います。結局、妻に説得された夫は翌日子供を捨てる決意をします。
親の話を聞いていた子どもたち
親が自分たちを捨てる相談をしているのをヘンゼルとグレーテルは聞いていました。おなかがすきすぎて眠れなかったからです。グレーテルが、涙を流すと、ヘンゼルは「心配ないよ。僕がなんとかするから」と言いました。
翌朝、まだ暗いうちからヘンゼルは起き出して、家の外に落ちている白い小石をポケットにいっぱい詰め込みました。
陽がのぼり、4人で森に行くとき、ヘンゼルは道しるべになるよう、小石を落としながら進みました。
森に到着すると父親は火をたき、母は、「父さんと私は、森の奥に、木を切りにいくから、おまえたちは火にあたって休んでいなさい。仕事が終わったら迎えに来るからね」と言って、父と行ってしまいました。
火にあたっているうちに、2人は眠ってしまい、目をさましたら夜はとっぷりと暮れていました。
自力で家に帰る2人
グレーテルはびっくりして泣き始めましたが、ヘンゼルは「大丈夫。月が出るのを待つんだ」と言いました。月が出ると、ヘンゼルは妹の手を取り、満月の光があたっている白い石を頼りに、無事に家に帰りました。
母は、「いつまでも寝ているから、おまえたち、帰りたくないのかと思ったわ」と言いましたが、父は、とても喜んでくれました。
一家は、また、すぐに食べ物がなくなり、父と母はまたしても子供を捨てる計画を話し、子供たちはそれを聞いていました。
森に行く朝、ヘンゼルは前回と同じように石を拾いに行こうとしたら、扉に鍵がかかっていたので、朝食のパンをポケットに詰め込みました。道みちパンのかけらを落として、道しるべにする計画です。
前と同じように父は火をおこし、母と一緒に森の奥へ入っていき、戻ってきませんでした。ヘンゼルは、前と同じようにして家に帰るつもりでしたが、鳥がパンくずを食べてしまったので道がわかりません。
パンの家を見つける2人
2人はおなかがすいてふらふらになりながら、家に戻ろうと、森の中をさまよい歩きました。3日目のお昼、2人は美しくさえずる白い鳥に出会い、その鳥が飛んでいった先に、小さな家を見つけました。
その家はパンでできていて、屋根はケーキ、窓は透明な砂糖でした。2人は大喜びで家を食べ始めました。どんどん食べていると、突然、ドアが開き、杖をついた老婆が出てきました。
老婆は、2人に家に入るようにすすめ、牛乳、パンケーキ、りんごとナッツをごちそうしました。おなかいっぱいになった2人は、老婆が用意したベッドに横になると、天国にいるような気持ちで眠りました。
実は、この老婆は魔女で、2人をおびきよせるためにパンの家を作り、つかまえて食べる計画だったのです。魔女の目は赤く、あまりよく見えませんでしたが、代わりにとても鼻がききました。
ヘンゼルを太らせようとする魔女
翌朝、魔女はヘンゼルを小さな家畜用の小屋に入れ、鍵をかけました。それからグレーテルを叩き起こして言いました。
「水をくんでこい、それからおまえの兄さんにおいしいものを作ってやるんだ。あいつがじゅうぶん太ったら、私が食べるのさ、ひひひ」
その日から、魔女は、ヘンゼルにはごちそうを食べさせ、グレーテルにはザリガニの甲羅(こうら)をあてがいました。
毎朝、魔女は、ヘンゼルに指を出させ、太ったかどうかチェックしました。ヘンゼルは、そのへんにあった小さな骨を差し出したので、目がよく見えない魔女は、それをヘンゼルの指だと思い、なぜ太らないのか不思議に思っていました。
こうして、ヘンゼルは4週間ほど、時間を稼ぎました。が、しびれを切らした魔女は、グレーテルに、「水をくんできてお湯をわかしな。あいつが太っていようがやせていようがもうどうでもいい。明日、殺して煮て食べることにしたから」と言いました。
グレーテルは泣きだしました。
「神さま、どうぞ、私たちをお助けください。ああ、いっそ、森で動物に食われてしまえばよかった。そしたら、2人一緒に死ねたのに」
魔女を殺すグレーテル
翌朝、グレーテルは早く起きて、やかんに水を入れ、火をおこしました。
魔女は、「まず、パンを焼くんだ。生地はこねてあるし、パンを焼くかまどに火も入れてあるから」と言い、グレーテルをかまどの方に突き飛ばしました。
「かまどのなかにちょっと入って、充分、あたたまったか、チェックしな」。
魔女はグレーテルをかまどで焼いて、食べるつもりでした。グレーテルは、魔女の考えていることに気づき、「やり方がわからないわ。どうやってかまどに入るの?」と魔女に聞きました。
「馬鹿だね、お前は。入り口は広いから、そこにちょっと這い込むだけだ」そう言うと、魔女は実際にかまどに少し頭を突っ込みました。
すかさず、グレーテルは後ろからどんと魔女をついて、かまどに押し入れると、鉄の扉をしめました。魔女は、すごい声を出してもだえ、焼け死にました。
無事に家に戻る2人
グレーテルは一目散に兄のいる小屋に走っていき、扉を開け、こう言いました。
「ヘンゼル、もう大丈夫。魔女は死んじゃったから」。
2人は抱き合って喜びました。それから、2人は魔女の家の中に入り、真珠や宝石の入っている箱をたくさん見つけました。2人は、ポケットやエプロンに宝石を詰めると、家に戻るため、歩き始めました。
数時間歩くと、大きな川に出ました。橋がありませんでしたが、白いアヒルに1人ずつ乗って無事に渡ることができました。
もう少し歩くと、見慣れた場所に出て、とうとう、家にたどりつき、父が大喜びで出迎えてくれました。父は子供を森に捨てた日から、いっときたりとも、幸せな時はなかったのです。まま母は死んでいませんでした。
ヘンゼルとグレーテルは持ってきた宝石を部屋にばらまきました。こうして、すべての心配事はなくなり、3人は、幸せに暮らしました。
原文(英語)はこちらを参照しました⇒ Grimm 015: Hansel and Gretel
古くからある物語
この話はグリム兄弟が、カッセルで、近所に住んでいたヴィルト家の姉妹から聞いたものです。弟のウィルヘルムは、1825年に、姉妹の1人、ヘンリエッタと結婚しています。
前半、小石やパンくずを道しるべにするところは、ペローの親指小僧とそっくりなことからもわかるように、
古くから伝わっている話で、14世紀にあったヨーロッパの大飢饉を反映しているのではないか、とも言われています。
お菓子の家はパンの家
絵本やアニメを見ると、魔女の家は、全部はお菓子でできていて、クリスマスに食べる、ヘクセンハウス(ジンジャーブレッドを土台にしたお菓子の家)みたいですが、原作ではパンでできた家で、屋根はケーキ、窓が砂糖の家です。
ヘンゼルは屋根をせっせと食べ、グレーテルは窓担当です。昔は甘いものが貴重だったので、子どもたちにとっては夢の家だったでしょう。
私は想像しただけで、胸焼けしそうになりますが。
教訓
この童話は、赤ずきんのように、ひとつの強烈な教訓や、強いメッセージ性がある話ではありません。
ある意味、どうとでも解釈できます。
今の子どもたちには、「お菓子ばかり食べ過ぎると、まずいことが起きる」という教えることができるでしょう。
大人には、「うますぎる話には気をつけろ」と言えます。
ほかにも、
- 他人を簡単に信用してはいけない
- 兄弟姉妹が力を合わせれば問題を解決できる
- 最後まであきらめるな
- 知恵をしぼり、機転を利かせるべし
こんな教訓もあるでしょう。
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